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北朝鮮市民の模範的生活、“演出”だったと暴かれる

JBpress 7/20(水) 6:10配信

 ロシア人の映画監督が、北朝鮮の対外宣伝工作の実態を暴いたドキュメンタリー映画を作り、米国のニューヨーク近代美術館(MoMA)主催の国際映画コンクールに出品した。だが、主催者側の一方的な自粛により参加を拒まれていたことが判明した。

「太陽の下」のワンシーン。ジンミさんの家族

 この映画は、北朝鮮の8歳の少女とその家族の北朝鮮政権への忠誠ぶりを描きながら、同時にその言動がすべて北朝鮮当局による強制である実態を暴いている。

 映画は米国、韓国、日本の一部で公開され、北朝鮮国内での外国メディアの取材活動がいかに政治操作されているかという実情をさらけ出すこととなった。

■ カメラが暴く「演出」の実態

 ロシアの著名な監督ヴィタリー・マンスキー氏が作った「太陽の下」(Under the Sun)は、約100分のドキュメンタリー映画である。撮影はすべて北朝鮮内部で行われ、“模範的市民”とされるリーさん一家の生活が映し出されていく。特にカメラが追いかけるのは、一人娘の8歳のジンミさんの言動だ。

 ジンミさんの父は繊維の模範工場の技師、母は豆乳製造の模範工場の労働者で、一家は平壌市内の高級マンションに暮らしている。

 マンスキー監督は映画の制作にあたり、すべて北朝鮮政府の意向や指示に従うという約束で、2014年に撮影を始めた。だが、政府から紹介されたリーさん一家の「設定」に次第に疑問を覚え、その言動はすべて「やらせ」であると確信するにいたった。つまり、撮影スタッフに常に同行していた北朝鮮政府の工作員が、撮影の前にリーさん一家にこと細かに指示を出していたのだ。

 そこでマンスキー監督はひそかにカメラを回し、政府工作員がリーさん一家や他の市民に動きやセリフを指示する様子も撮影していく。

 映画では、かわいい容貌のジンミさんが当局から特別に選ばれて、北朝鮮の共産主義青年団に入団を認められたという「シナリオ」に基づき、マンションでの家族との食事やピアノの練習、学校での友だちとの交流など、ジンミさんの日常生活を追う。

 だが、すべて本番撮影の前に、工作員が、ジンミさんをはじめとする子供たちに「いっぱいに笑って」「金正恩元帥への恩義を大きな声で叫べ」などと指示していた。また、ジンミさんの共産主義青年団への入団が決まると、彼女の両親の同僚がそれぞれの職場でお祝いをする。その際の「祝辞」などもすべて事前に工作員が振り付けを指示していた。カメラはそれらの様子をとらえている。

 また、ジンミさんの父親は実は政府メディアの記者であり、母親も工場で働く労働者ではなく官僚であることが、映画の中で明らかになる。

 最後にカメラは、ジンミさんが北朝鮮の建国の祖とされる金日成主席の誕生日の「太陽節」の祝賀行事に備えて、金一族礼賛の歌や詩を朗読する光景を追う。そのジンミさんの言動も、もちろんすべて工作員が命令を下している。

 ところが、ジンミさんは緊張から言葉を発せなくなる。すると工作員はジンミさんにさらに圧力をかけ、「好きな言葉を考えなさい」「好きな詩を思い出して口にしなさい」と迫る。ジンミさんはしばらく沈黙した後、大粒の涙を流しながら、「敬愛する金正恩元帥様の教えに従い、忠実に国に尽くすように育ちます」という言葉を、苦しそうに発するのだった。

■ 北朝鮮関係筋からの圧力に屈した美術館

 マンスキー監督はこういう内容の暴露映画を北朝鮮当局には知らせずに製作し、2015年秋、ロシア国内の一部で公開した。

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最終更新:7/21(木) 22:25

JBpress

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