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チューリッヒのコネクティビティ

GQ JAPAN 7/21(木) 21:40配信

クルマは他の交通と共存できないのだろうか。パーク(駐車)&ライド(鉄道や自転車)が当たり前の欧州に見習うことも多そうだ。クルマと社会の交差点にある「クルマ文化」にストップかゴーの判定を下す好評連載。今回のテーマは、スイス・チューリッヒでのクルマと鉄道のいいかんじの共存関係について。

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スイスの中でもドイツ国境に近いチューリッヒは、いま建築好きから注目されている。コンクリート・コクストラクティビズムとも呼ばれる直線を大胆に組み合わせた建物の数かずが、古い建物と共存しているさまは、この街を歩く楽しみのひとつになっている。

僕がこのあいだ感心したのは、コンクリートによる街づくりが人間を排除していないことだ。コンクリートだからというわけではないのだけれど、たとえばチューリッヒ名物ともいえる網の目のように張り巡らされたトラム(路面電車)の駅。道路とほとんど面一だ。歩道も日本みたいに高くなくて、結果、高齢者や車椅子などの歩行困難者にも使い勝手がとてもいいようだ。

チューリッヒの当局は当初地下鉄網を考えたそうだ。しかしある計算によると、地下鉄の採算分岐点は人口50万人だそうで、約40万人のチューリッヒでは、地下を掘るなどのインフラへの投資を運賃で償却していくのが難しいのだとか。個人所有のクルマの台数は課税などで抑制しつつ、代替交通手段としてトラムや自転車による移動が推奨されているのだ。僕も乗ってみたけれど、ツーリストに便利な一日乗車券もすぐカードで買えるし、乗りやすい。トラムは街の景色が眺められるので、鉄道よりも楽しい。

トラムで僕が観に行ったのはチューリッヒ中央駅だ。じつは駅好きなのだ。チューリッヒ中央駅(現地ではhauptbahnhofの頭文字をとってHBと呼ばれている)のよさは、クルマも走ればひとも、歩く路面と同じところにある。ホームは道路の延長線上だ。そのため駅は道路に沿って作られている。トラムの駅からすぐ列車に乗れるし、クルマで脇に乗りつけてキス&ライドをして眼の前の列車に飛び乗るひともいる。

僕はこの駅に感心した。

チューリッヒの中央駅は、欧州の他の国ぐにからの列車から出入りする重要なハブである。欧州で列車に乗ったことがあるひとはご存知のように、駅には改札がない。車内の検察のみだ。すっと入っていける。

驚くのは、自転車でやってきて、駅の構内をそのまま走り、列車に自転車ともども乗り込むひともしょっちゅう見かけたことだ。たとえばドイツやフランスに行ったら、そのまま自転車で走ることだって出来る。こういうことが本当の意味での環境保全につながるんだろうなあと僕は感心した。

列車というのは特別なものではない。他の交通と出来るだけ自然なかたちで接点をもてば、移動のためのコネクティビティが高くなる。チューリッヒ中央駅はその好個の例である。チューリッヒ中央駅といえば、東京なら東京駅に相当するわけだ。人口規模が違うから東京駅でいきなり同じことり実行できないだろうけれど、おおいに参考にしてほしいと思う。

クルマや自転車のための駐車場、駐輪場を用意して、パーク&ライドの利便性を上げてもらえば喜ぶひとは多いだろう。現状はめんどうくさかったり高かったりする。日本のターミナル駅はどこも巨大だけれど、他の交通との共存を軸に設計すればチューリッヒ駅のように使い勝手だって上がるはずだ。

路線をどんどん延長させることや、駅中に商業施設を誘致するばかりでなく、ちがう目線での駅のありかたを検討してもいいかもしれないと僕は思う。列車と社会の有機的な共存関係のうえに、僕たちの住みやすい街は築かれるのではないだろうか。そんな交通の未来に“GO”を。

文:小川フミオ

最終更新:7/21(木) 21:40

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