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仲裁裁判所の裁定に反撃する中国の「情報戦」の中身

JBpress 7/21(木) 6:15配信

 オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が、南シナ海におけるフィリピンと中国の領有権に関する紛争に対して、フィリピン側の申し立てを支持した。

「中国の立場を多数の国が支持している」ことを主張する人民日報英語版に掲載された資料

 中国による「南シナ海の『九段線』内部は歴史的に見て中国の主権的領域である」という主張は、認めることができないとして退けられた。

 また、九段線の考え方をもとにして南沙諸島のいくつかの環礁の低潮高地(満潮時には海面下に水没し、干潮時には海面上に陸地として姿を現す土地)を埋め立てて建設が進められている人工島に関しても、「人工島周辺海域は中国の領海とはなり得ない」と仲裁裁判所は判断した。根拠となったのは、国連海洋法条約にある「本土から12海里以上離れた海域にある低潮高地の周辺は領海とは認められない」という規定である。

 もっとも、国連海洋法条約には「海洋の境界画定に関する紛争に関しては、紛争当事国は解決手続きを受け入れないことを宣言することができる」となっており、何らかの拘束力ある解決策が提示されても、国連海洋法条約自体には強制力はない。同様に、仲裁裁判所の裁定に関しても、裁定を当事国に強制する手段は存在しない。

 したがって中国政府は、「仲裁裁判所が提示した裁定なるものには拘束力はなく、そもそも無効なものであり、中国は受け入れない」として裁定を無視する姿勢を明らかにしている。

■ 「国際世論は中国の味方」と主張

 もちろん「無視する」といっても、中国としては何らかの反撃を開始しなければならない。「中国の九段線の主張は認められない」「中国の人工島は単なる岩礁で領海の基準にはなり得ない」といった裁定が、国際機関によって国際社会に公表されてしまったからだ。

 そこで中国は、早速「情報戦」(人民解放軍のいう「輿論戦」)分野での反撃を開始した。例えば、国営メディアをはじめとする英語版メディアは次のように力説する。

 フィリピンの主張を公式に支持している政府は、黒幕のアメリカをはじめとして、その片棒を担いでいる日本、それに南シナ海で中国と敵対しているベトナムなどごく少数に限られている。反対に中国の主張を公に支持している政府は枚挙にいとまがない。

 このような国際社会の実態は、仲裁裁判所の判断というものがいかに国際常識から乖離した空虚なものであるかを如実に物語っている──。

■ 「日本の資料も中国の主張を裏付けている」

 それだけではない。中国メディアは、アメリカとともにフィリピンを公に支持している日本の資料をも宣伝材料に使っている。

 中国メディアは、南京市の歴史学者により発見された日本の資料を、中国側の言い分の正当化のために持ち出した。その資料とは、1937年に日本で発行された『世界の処女地を行く』(信正社)の記述である。

 著者である探検家の三好武二氏は、1933年夏に探検隊を率いて南沙諸島を偵察した。その際に、南沙諸島に中国人漁師たちが居住し、漁業や水産加工業それに耕作などを行っていた状況を観察し、漁民たちの生活や家屋の状況などを本書で紹介している。

 中国メディアは「日本人が目撃し書き記したこれらの事実は、歴史的に見て南沙諸島が中国の領域であったことを具体的に物語っている。よって、南沙諸島は無主の地であったというフィリピンの主張は事実に反している」と“日本の資料”の価値を高く評価している。

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最終更新:7/21(木) 6:15

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