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岩政大樹が書く「勝負強さ」にある表裏 理想的なサッカーを貫くこと、それを捨てること

BEST TIMES 7/22(金) 18:00配信

2週間眠れなかったサッカー人生最大の「勝負所」

「勝負強さ」とはなにか。
 サッカー選手のみならず、アスリートにとっては永遠のテーマです。 ここ一番で結果を出せる人、出せない人。なぜか最後には勝つチーム、負けてしまうチーム……。

 この差について前回は、僕の基本的なスタンスとして主にメンタリティの面でお話しました。今回は勝負所の試合の戦い方について振り返ってみたいと思います。

 僕が経験してきたサッカー人生で一番の勝負所だったと思い出されるのが、3連覇をかけた2009年の最後の2節です。32節を終え、僕たちは勝ち点2差で川崎フロンターレを抑え、首位に立っていました。しかし、33節はガンバ大阪(僕たちの3連覇が始まる年の前々年、2005年のJリーグチャンピオン)、34節は浦和レッズ(2006年のJリーグチャンピオン)と、ライバルとの試合を2つ残していました。

 3連覇とは、当然2連覇を果たした後にしか挑戦できません。力の拮抗したJリーグにおいては2連覇でさえ難しく、僕たちは3連覇への挑戦は自分のサッカー人生において最初で最後だろうという思いがありました。

 プレッシャーと緊張で、最後の2週間はほとんど寝られませんでした。僕は正直、その息苦しさから早く解放されたいと思うほど重圧を感じていましたが、過ぎてみて思うと、サッカー選手として幸せな時間だったなと思います。 

 では、そんな重圧のなかで迎えた人生の勝負所とも言える局面で、僕たちが見せた「戦い方」とはどのようなものだったでしょうか。

理想を追求する一方に持ち合わせた「鹿島スタイル」

 鹿島アントラーズには伝統的なサッカースタイルがあります。4-4-2で攻守に主導権を握る……このシーズンもそのスタイルに磨きをかけ、多くの勝ち点を重ねていました。自分たちが勝つために作り上げたその理想のスタイルを追求し、3連覇を目指す中でその完成度はかなりのレベルに達していたと思います。

 しかし、僕たちはこの大事な試合もその理想のスタイルを貫くことができたかというと、そうではありませんでした。

 実は、当時の僕たちにはもう1つの「スタイル」がありました。それは、相手に一度主導権を渡しながら、そこから徐々に勝ち筋を見つけていくスタイルです。いつもいつも自分たちの理想のスタイルを貫こうとするのではなく、相手に流れを取られるようなときは、自分たちのそのいい時のスタイルに固執しない潔さがありました。

 この最後の2試合は対照的な試合内容ではありますが、「勝負強さ」を語る上でとても興味深い事実があると思っています。

 33節は、ホーム、カシマスタジアムでのガンバ大阪戦でした。ガンバ大阪はその頃、超攻撃的なスタイルでたくさんのタイトルを獲得していて、その年も圧倒的な得点力で僕たちと優勝を争っていました。33節を僕たちと勝ち点3差の3位で迎えたガンバも強いモチベーションでカシマに乗り込んできました。

 試合は前半こそスコアレスで終えたものの、晴天の中、ホーム最終戦の素晴らしい雰囲気に後押しされて、僕たちはそれほど硬さを見せない戦いができました。後半にはでき過ぎなくらい次々とゴールが生まれ、終わってしまえば5対1の圧勝でした。勝負所で、自分たちのスタイルがよく出せた理想的と言える試合でした。

 一方、迎えた最終節。2位川崎フロンターレとの勝ち点差は2のままで、勝たなければ自力優勝がかなわない状態での一戦は、アウェイで浦和レッズとの対戦でした。レッズには優勝の可能性は残されていませんでしたが、アントラーズにとって宿敵と言えるレッズとのアウェイ戦は、最高の舞台での最悪の相手と言えました。

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最終更新:10/19(水) 21:00

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