ここから本文です

ECBのドラギ総裁の記者会見-exceptional circumstance

NRI研究員の時事解説 7/22(金) 9:32配信

はじめに

ECBも7月政策理事会で金融政策の現状維持を決定し、ドラギ総裁はBrexitに伴うストレスを抑制できた点を強調した。しかし、記者会見での議論の大半は、既に次の政策課題にシフトしていたことも事実である。いつものように内容を検討しよう。

金融経済の評価

ドラギ総裁による冒頭説明は、Brexit以降の金融市場や金融システムでのストレスが、(1)各国中央銀行による流動性供給の姿勢、(2)ECBによる金融緩和、(3)頑健な金融規制や監督の枠組みといった要因によって抑制されたことを強調した。

一方、Brexitによる実体経済への影響については、主要な経済指標のトレンドには足許で変化がみられないとしつつも、十分な情報とそれに基づく新たな見通しは次回(9月)の政策理事会で得られるとして判断を先送りした。実際、記者会見でも、Brexitがユーロ圏の実質GDPに与える影響について、3年間で0.2~0.5%という市場の推計に言及しつつ、ECBの推計を問う質問もあった。これに対しドラギ総裁は、欧州委員会の推計も同程度であると認めつつ、現時点ではgrain of cautionをもって理解すべきとし、理由として離脱交渉の内容や時間には大きな不確実性が残る点を挙げた。

その上で、ユーロ圏では金融緩和の波及や企業収益の改善、雇用の増加や実質購買力の増加等の好条件のため、前回(6月)の見通しに沿った景気回復が見込まれるとしつつも、Brexitを含む地政学的要因や新興国の景気回復の不確実性、構造改革の遅れなどもあって、リスクバランスは下方にあることを認めた。

この間、ECBによるインフレへの評価には前回から大きな変更が見られなかった。足許はゼロないし小幅マイナスで推移するが、商品価格の水準効果が剥落するにつれ、緩やかな景気回復にも支えられてインフレ率が徐々に改善するという見方である。この点に関して記者会見では、ECBのスタッフが発表したGDPギャップに関するレポートを言及しつつ、ECBにより公式推計を質す質問もあった。しかし、ドラギ総裁は、前提となる潜在成長率の推計自体が難しいことを説明するとともに、政策判断の材料としてはGDPギャップはelusiveとの理解を示した。

1/3ページ

最終更新:7/22(金) 9:36

NRI研究員の時事解説