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VHSビデオデッキの生産中止、船井電機はやめたくなかった? (多田稔 中小企業診断士)

シェアーズカフェ・オンライン 7/22(金) 6:13配信

船井電機がVHS方式の家庭用ビデオテープレコーダーの生産を7月末で終了する、と報じられたのは7月14日でした。

ご存知の通り、映像の記録媒体はDVDやHDDなどが主流となり、テープレコーダーの市場は著しく縮小しています。今回のニュースを聞いて、一抹の寂しさとともに、「時代の流れだから仕方ない」という感想を持った方も多いのではないでしょうか。

しかし、今回の決断を、「時代遅れの商品が売れなくなったから」という単純な図式で考えると本質を見誤ります。今日はそのことをお話したいと思います。

■VHSは今でも“金のなる木”だった?
報道によれば、昨年、船井電機の家庭用ビデオテープレコーダーの販売数は75万台でした。これは年間1,500万台以上を販売したピーク時に比べると20分の1の規模です。この数字だけを見ると、「商品が時代に合っていないことは明らか」と考えるのも自然なことです。

しかし、角度を変えて見ると、まだ75万台“も”売れている、と考えることもできます。販売価格を1台2万円として単純計算すると年間150億円の売上です。船井電機の昨年度の売上高は約1,680億円ですので、占める割合は9%と決して小さい数字ではありません。

さらにいえば、他の大手競合がすでに生産を終了していますので、家庭用ビデオテープレコーダーに限った市場シェアはかなり高まっていたはずです。このように、「市場の成長性は低いが、市場シェアは高い」商品のことを、PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マトリックス)という経営学のフレームワークでは「金のなる木」と呼びます。市場と生産技術が成熟しているので、広告費など改めて顧客に訴求するための費用や技術開発の費用はかからない。一方、需要が一定数ある上にライバルが少ないので楽に販売できる。そのためお金を稼ぎやすくなるというわけです。

このように見ていくと、VHSビデオレコーダーが「時代遅れ」という理由だけで撤退するには惜しい事業だと分かります。

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最終更新:7/22(金) 6:13

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