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ヘリマネーは財政規律の喪失もたらす「打ち出の小槌」

会社四季報オンライン 7/22(金) 19:26配信

 7月下旬から8月初めにかけて米連邦公開市場委員会(FOMC、7月26~27日)、日銀政策決定会合(28~29日)、米4~6月GDP統計発表(29日)、欧州主要銀行ストレステスト結果発表(29日)、英金融政策委員会(8月4日)など重要イベントが目白押しだ。

 このうち、4~6月の米GDPは消費主導で年率2.5%の成長が見込まれるが、Brexit(英国のEU離脱)後の動きが反映されていないため注目度はやや低い。FOMCはBrexitの影響を注視しつつ「米景気指標次第」という様子見姿勢を続けよう。一方、イングランド銀行のカーニー総裁は「8月にあらゆる手段を協議する」と予告しており、何らかの緩和策を打ち出すだろう。

■ 日銀は追加緩和の好機 

 注視しておかねばならないのはむしろ、日本の金融政策ならびに主要銀行のストレステストの結果公表などに絡む欧州の動向。不確定要素が多く、かつ万が一の場合の影響も大きいとみられるからだ。

 日銀は今回、どう動くのか。国内経済はBrexit以前から景気後退(リセッション)一歩手前の低迷状態だった。5月の鉱工業生産は予想外の大幅減少となり、この結果、4~6月の生産は1~3月に続いて前期比マイナスになる可能性が高まった。6月日銀短観の業況判断DIは大企業・製造業だけが横ばいを保ったが、大企業でも非製造業は低下し、中堅、中小企業は製造、非製造業ともにDIが悪化した。

 消費者物価の下落基調も強まる。5月の生鮮食品を除く消費者物価の前年比マイナス幅は0.4%に拡大。日銀が最近注目する「エネルギー・生鮮食品を除く消費者物価」の上昇率も4月が前年比0.9%、5月同0.8%と昨年7月以来の1%割れとなった。

 物価上昇率の鈍化は原油安だけでなく、円安に伴って値上げされてきた食料品の価格上昇が止まったことや企業の安易な値上げ戦略に対して家計が消費を抑制したことが原因だ。日銀が高めようとしているインフレ期待も冷え込んでいる(図1参照)。

 2%の物価上昇に固執する日銀の黒田総裁は何らかの手立てを講ずる必要に迫られている。だが、(1)市場に出回る国債のほとんどを日銀がすでに買い上げているため量的金融緩和は限界、(2)マイナス金利政策は銀行収益悪化の副作用が大きい、(3)金融緩和と円安だけに依存した政策は米国の拒否反応が強い、といった問題に直面。先月の会合でも様子見姿勢を維持せざるをえなかった。

 今回は財政面での景気対策が打ち出されたことで、少なくとも海外からの円安誘導批判が少しは和らぐとみられるだけに、追加緩和策を講ずるには絶好のタイミングだ。具体策としては、副作用の小さい「貸出支援制度のマイナス金利適用」が順当なところ。効果については疑問だが、実施されれば株式市場でも好感されるだろう。

■ ヘリマネー導入でも消費は増えない

 こうした中、ここへきて一部で喧伝されているのがヘリコプター・マネー政策(ヘリマネー)だ。これはもともとノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマン氏の「一機のヘリコプターが飛来し、すでに流通している貨幣量に等しい現金を空からまいた」場合にどうなるかを想像した話である。ベン・バーナンキ前FRB議長が2002年のフリードマン氏の90歳誕生パーティーの席で「デフレ克服のためにはヘリコプターからお札をバラまけばよい」と発言したことから、同議長はヘリマネーを唱える「ヘリコプター・ベン」と言われた。

 もちろん実際にヘリコプターでおカネをまくわけではない。いろいろなやり方はあるが、たとえば図2のような方法でお金をバラまく。まず、政府が無利子で償還しなくてもいい永久国債を発行しこれを日銀が額面で引き受ける。「無利子で償還しなくてもいい永久国債」の実質的価値はゼロだ。永久国債の額面額に見合うだけ政府の日銀当座預金が増え、増えた預金を元に政府は国民に現金給付を行う。国民はもらったお金(日銀券)を消費に回すことができる。

 ヘリマネーの利点は以下の点だとされる。第1に金融緩和だけで景気を押し上げることはできなくても、財政・金融政策を合体させたこの方法なら消費は増える。第2に通常の減税なら財政赤字が拡大するため、国民は将来の増税を予想して減税分をほとんど貯蓄へ回してしまう結果、景気押し上げ効果が帳消しになるが、この方法なら実質的に借金は増えない。ヘリマネーはまさに「打ち出の小槌」であり、国民は将来の増税を心配なく消費を増やせるというわけだ。

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最終更新:7/26(火) 19:36

会社四季報オンライン

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