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100分の1を手繰り寄せた壮絶な執念 鹿島戦2発のレッズ李のストライカーとしての矜持とは

Football ZONE web 7/24(日) 8:30配信

五輪OAで離脱の「興梠の穴」という命題に奮起

 負けず嫌いの権化のような男が発奮しないわけがなかった。23日のJ1セカンドステージ第5節で、浦和レッズは敵地カシマスタジアムで鹿島アントラーズを2-1で撃破した。0-1のビハインドで迎えた後半に2ゴールを挙げて逆転勝利に導いたのが、後半から出場した元日本代表FW李忠成だった。

 このゲーム、浦和にとって最大のテーマが「興梠慎三の穴は埋まるのか?」だった。リオデジャネイロ五輪日本代表にオーバーエージ枠で選出された興梠は、浦和の不動の1トップだ。ボールを引き出して良し、クロスに飛び込んで良し、ゴール前での勝負強さもありという万能型の男が抜けることは、五輪代表選手が抜けるJのクラブの中でも、浦和が最上位の痛手を被ると予想されていたからだ。

「(興梠)慎三がいなくなったから点が取れない、勝てないなんて言わせたくなかった」

 李の胸にはその熱い思いがあった。自身も日本代表の一員として2011年のアジアカップでは決勝のオーストラリア戦でチームを優勝に導くボレーシュートを決めた実績の持ち主だ。そのプライドは、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督による「ここでお前が頑張らなきゃダメだろう」という言葉でさらに刺激されていた。

 だが、指揮官の檄に反して、試合ではなぜかベンチスタートだった。後半から1トップのポジションを争う元スロベニア代表FWズラタンに代わってピッチに立った。ストライカーとして最も結果がほしい試合、苦しい状況でその実力を見せつけた。

 後半15分に先制点を許した2分後、右サイドをMF柏木陽介が抜けだすと、李の前にはスペースが広がっていた。そこで李は、強引にそのまま突っ込むのではなく、一度スピードを緩めている。

「サッカーの神様、ありがとう」

「一度(スピードを)落として相手をブロックすることでスペースが作れる。(元浦和FWの)ワシントンがああいう風に決めるのがうまかったですよね。あのまま突っ込むとスペースがなくなるんで」

 冷静な判断で勝負の場所を確保すると、お手本のように相手GKと最終ラインの間に入ってきたボールを右足で決めた。

 そして同28分、李がストライカーの証明といえるようなプレーで決勝ゴールを挙げた。左サイドを抜け出したMF武藤雄樹がグラウンダーのシュートを放ったが、ボールはGK曽ヶ端準の正面に飛んだ。それでも李はゴール前に入り込む勢いを緩めることなく詰めた。これを、曽ヶ端がファンブル。それを逃すことなくゴールに蹴り込んだ。「100回狙って1回あるかないかというゴールだけど、FWなら100回詰めてなきゃいけない。サッカーの神様にありがとう、という気持ちです」

 100分の1を猛烈な執念で手繰り寄せた。

 「僕はサッカーを始めた時から点取り屋」と語る生粋のストライカーは興梠の代役にとどまるつもりはない。名門対決で浦和を逆転勝利に導いたストライカーは「(興梠が)いない間に何点取れるかが自分の勝負だと思っています」とさらなるゴールラッシュを誓っていた。

轡田哲朗●文 text by Tetsuro Kutsuwada

最終更新:7/24(日) 10:27

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