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なぜ国内のLCCは低価格を追求しないのか? (森山祐樹 中小企業診断士)

シェアーズカフェ・オンライン 7/24(日) 5:31配信

国内のLCCが機内食(有料)に力を入れ始めている。ピーチは、近大、千房、たこ昌とコラボし、うなぎ味のナマズごはん、大阪オムそばやたこ焼を提供、ジェットスタージャパンはなごみの米屋とコラボしたどら焼きや、ジュノエスクベーグルとコラボしたベーグルサンドを予定する。

この動きは、機内販売による収入増の狙いとともに、LCC内の差別化を図り、大手に見劣りするサービスの差を埋めることが目的であると思われる。一見すると当然の行動と思われるこの変化について、LCCの戦略と照らし合わせてLCCのサービスを考えてみたい。

■LCCの競争戦略
LCCは圧倒的な低価格のビジネスモデルとして産声をあげた。彼らの武器は、通常大手とは大きく異なる低価格の運賃体系であり、ターゲットは大手が相手にする既存顧客ではない低価格層である。また、短距離路線を中心として、可能な限り航空機材の稼働率を上げることで、薄利多売のビジネスモデルを確立することが世界のLCCの典型例である。

しかしながら、昨今の国内LCCのサービス拡充は、上記ビジネスモデルとは矛盾する。そもそも機内食を用意すれば、その搭載や取り卸しに少なからず時間がかかり、機材の稼働効率は低下する。また、限られた経営資源をサービスの拡充に配分したことは、機材の運航効率を最大限に高めることへの資源集中からの転換とも取れる。

このような新サービスを提供するためには、企画と呼ばれる間接部門の人件費やオフィス、その他費用を捻出する必要がある。また、有料・無料を問わず、機内に食事を搭載するギャレーやカートの設置も検討しなければならず、重量増による燃油費の増加は避けられない。

これらのコストは当然ながら運賃や上記機内食販売の価格に転嫁される。利用者としては楽しみな機内食サービスの始まりが、本当の目的である目的地に行くまでの「移動」という商品に対し、本来不必要なコストを伴う結果になりかねないのである。 これは、LCCが当初売りにしていた圧倒的な低価格の武器と相反する方向に向かっていると言える。

加えて、サービス拡充を行うということは、ターゲットの変化をも示唆している。欧米で成功しているLCCは、大手との差を明確にし、大手を頻繁に利用する層をターゲットとせず、低価格による需要創出を図ることでその規模と支持を拡大してきた。(例えば、アメリカのサウスウェスト航空は、空飛ぶバスを目指し、低価格運賃によりターゲットも低価格層としていた)

また、ビジネスモデルも大手と異なり、機材運航の効率化を極限まで高めることで差別化の源泉である圧倒的な低価格を確立したのである。そして、このビジネスモデルは既存大手航空会社では考えられない発想のもとで確立されたものであったため、これらのLCCに対抗した多くの大手航空会社の手がける直営LCCは失敗と敗北を繰り返した。

国内LCCも参入当初、価格帯を前面に打ち出した広告宣伝を行いスタートしたが、最近のPRの中心は、上記サービスから見て取れるように低価格一辺倒ではない。これは消費者ニーズが変化したからという見方もあるが、目の前には高額な運賃を払ってでも乗る利用者がいるのであれば、高付加価値のビジネスモデルに飛びついてしまうのが人間の心理と欲望の当然の帰結であろう。本来は、多くの人がその道(今回の例で言えば、高単価旅客をターゲットとするビジネスモデル)を選ぶからこそ、そこから外れた異端のビジネスモデルに大きなチャンスがあるのである。

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最終更新:7/24(日) 5:31

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