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滝沢秀明 & 武井咲、突っ走る不倫劇はアリ? 『せいせいするほど、愛してる』の勢い

リアルサウンド 7/26(火) 6:10配信

 滝沢秀明と武井咲が不倫劇を繰り広げるドラマ『せいせいするほど、愛してる』(TBSテレビ)が、その振り切れた内容で賛否両論を巻き起こしている。第1話では、そのバブリーな設定や次々と出てくる過度な演出ーーとくに滝沢演じる三好海里がキッチンでエアギターに興じる場面は視聴者に衝撃を与えたーーが、好き嫌いの分かれるポイントとなったようだ。また、キャスティングや物語の展開に、大人の事情を感じるとの意見も散見された。だが、だからといって本作がドラマとして退屈なものかといえば、そうではないだろう。少なくとも、夏のドラマにおける注目作のひとつであることは間違いない。

 先週放送された第2話では、お姫様抱っこやエアギターといった“飛び道具”は少々抑え気味だったものの、よくよく考えると常識離れした展開となっており、興味深いものだった。たとえば、第1話からのキスシーン。三好は、武井演じる栗原未亜に対し、ストーカーから守るための演技としてキスをしたと平然と言ってのけるのだが、これを普通の男性が行えば間違いなくセクハラで訴えられるだろう。しかも、三好は妻帯者との設定だ、どう考えても不自然である。ところが三好のイケメンぶりが凄すぎるのか、このキスで未亜のハートを完全に射止めてしまうのだ。

 未亜もまた、かなりの猪突猛進タイプだが、向こう見ずな行動にはむしろ清々しさを感じる。駿河太郎演じるカリスマスタイリスト・森丈一が催す仮装パーティーにおいて、酔いつぶれて寝ている三好にキスをしようとする大胆不敵さもさることながら、嫉妬のために彼の結婚指輪をくすねてしまうのだから、少し問題がある女性といえなくもない。今回は未亜のモノローグが多く、その心理が丁寧に説明されていたため、可愛げのあるイタズラとして捉えることができたが、それがなかったら悪質にも映ったはずだ。しかし、そういった倫理性の欠如は、本作では設定の華々しさやキャストたちの煌びやかさによって、すんなりと乗り越えられていく。あまり深く考えず、まっすぐに恋をしていこう、とのシンプルさは、このドラマにおけるある種の美徳といえるかもしれない。

 そのことを象徴するように、第2話のラストシーンでは、未亜は次のようなセリフで三好に告白している。

「副社長の言葉一つで、泣いたり笑ったり、単純で馬鹿みたいで、でも力になりたくて。わたしの心は副社長でいっぱいなんです。指輪なんかいりません、奥さんが一番だっていいです。離婚してとか、面倒なこというつもりもありません。ただ、副社長が欲しいです」

 そう、このドラマはそもそも“不倫もの”で、なにも考えることができないほどに恋い焦がれて突っ走ってしまうふたりの情熱こそが、メインテーマなのだ。そこで重要なのは、深く共感できる心理描写やリアルな設定よりも、理屈をすっ飛ばすほどの勢いである。

 90年代のトレンディドラマを思い返すと、ミーハーで陳腐な物語が決して少なくなかった。いま観ると、その設定は浮かれていて、登場人物たちは短絡的で、セリフもどこかクサいものばかりである。だが、その軽薄さは、まだ世の中が前向きだったからこそ生まれたものでもあり、いまとなっては得難い、壊れやすいものでもあっただろう。

 時代の空気を捉えた、リアルで濃密な人間ドラマも良いけれど、イケメンと美女がシンプルに求め合うだけの、言ってみれば徒花のようなドラマも、今の世の中にあって良いのではないだろうか。

松下博夫

最終更新:7/26(火) 6:10

リアルサウンド