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日本の歴史的「化石」発見、発表までなぜ10年も?

JBpress 7/26(火) 6:00配信

 (文:村上 浩)

 北海道むかわ町穂別で日本古生物学史上最大級の発見があったのは2003年4月。それから10年以上が経過した2013年7月17日、日本初の恐竜全身骨格発見が北海道大学のプレスリリースで世間に伝えられた。

 誰がどのようにしてこの化石を発見したのか、公表までの10年間研究者たちは何をしていたのか、このハドロサウルス科の新種と思われる恐竜は7000万年以上前どのように日本にたどり着いたのか。本書『ザ・パーフェクト―日本初の恐竜全身骨格発掘記: ハドロサウルス発見から進化の謎まで』は世紀の発掘に携わった様々な人にフォーカスを当て、それぞれの視点から発掘の過程をドラマ仕立てで伝えてくれる。

 化石の謎が少しずつ解き明かされていくエキサイティングな展開に、最後には全身骨格が発見されるのだと分かっていても、ページをめくる度に鼓動が高なっていく。

 そもそも恐竜とは何なのかということから丁寧に解説されており、サイエンス本を敬遠している人でも楽しめる。また、科学者、博物館職員、大学院生、イラストレーター等がそれぞれの持ち場でサイエンスに向き合う姿が具体的に解説され、各人のキャリア変遷も言及されているので、サイエンスの道を志す者には大いに参考になるだろう。

■ “たまたま”や“まぐれ”の発見ではない

 発見から発掘、そして同定に至るプロセスを知れば知るほど、この物語が奇跡的なものに思えてくる。化石収集家である堀田良幸が足のリハビリのために普段と違うルートを歩いていなければ、クビナガリュウ類(恐竜ではない)の研究者である佐藤たまきがクビナガリュウ類の化石を求めて穂別博物館を訪れていなければ、日本を代表する恐竜研究者・小林快次が大学生時代に偶然にもアメリカ留学の機会を得ていなければ、この発見はありえなかった。本書には9名分の物語がつむがれており、バラバラに思えるそれぞれの人生が化石を軸に1つにまとまっていく。

 いくつかの幸運があったのは確かだが、この発見は決して“たまたま”や“まぐれ”の産物ではない。堀田はアマチュアながらも1日6時間の化石探索を何十年も続けていたからこそ、この化石を見つけ、正しく保管することができた。佐藤は穂別博物館では標本が「きちんと保管されているし、記録も正確」であることを知っていたから、この博物館へ足を延ばし、その化石の特異さに気が付いた。中学時代の化石採集ツアーで大いに興奮した源体験があったから、小林は日本人で初めて恐竜研究で博士号を取得し、このプロジェクトを適切に先導できた。恐竜を、科学を愛する幾多の者の努力が連なったからこそ、この化石は世に現れたのだ。古生物学研究が少数の天才だけでなく、アマチュア収集家、全国各地にある博物館、科学的発見の価値を理解する自治体など多くのものに支えられているのだということを痛感する。

■ 慎重に慎重を重ねて恐竜の発見を報告

 発見から発表までに10年の時を要したのは、その化石が専門家の目に触れるまでに長い時間が経過したことに加えて、恐竜発見というニュースが「取り扱い注意事項」であるためだ。

 1976年に三笠市でのティラノサウルス類の新属新種の化石発見は大ニュースとなり、その発見を契機として市立博物館まで建設された。ところが後にその化石は恐竜ではないモモサウルス類であることが学術的に確かめられ、大きな失望だけが残った。古生物学に携わるものは皆この事件を知っており、恐竜発見の報告には一層慎重になるという。

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最終更新:7/26(火) 6:00

JBpress

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