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寺尾次郎がゴダールを新訳。ネット時代の字幕とは?

Casa BRUTUS.com 2016/7/27(水) 7:30配信

『勝手にしやがれ』と『気狂いピエロ』がリバイバル。“ゴダールのイタコ”になったという寺尾次郎の仕事に迫る。

ヌーベルバーグの旗手、ジャン=リュック・ゴダールの代表作である『勝手にしやがれ』と『気狂いピエロ』が、デジタルリマスターでスクリーンに蘇る。そこで両作の字幕翻訳を新たに手がけた寺尾次郎にアンスティチュ・フランセ東京で話を聞いた。

Q 今回新たな訳を手がけることになった理由は?

いちばんの理由は、現在手軽に買える『気狂いピエロ』のDVDの字幕がイマイチだから(笑)。といっても、過去には山田宏一さんたちの素晴らしい訳もあるわけで、当初は私がやるなんて無謀だと思いました。でも、村上春樹さんがレイモンド・チャンドラーの『ロング・グッドバイ』を新訳したとき、あとがきに書いていたんです。“訳は家みたいなもの。時間が経ったらその時代に合うように改築していいと思う”と。この2作も以前の翻訳から数十年たっているので、そろそろ直してもいいのかなと思い、担当しました。

Q 新訳を手がけるにあたって、特にこだわった点は?

『気狂いピエロ』に関しては、台詞の中に文学からの引用の訳が多くあるのですが、その訳をより正確にしました。僕自身はネットの登場で世の中がよくなったとは少しも思っていませんが、唯一良かったことがあるとすれば、調べものの精度が上がったこと。ゴダール映画は引用元が不明なものも多いのですが、原文をネットで検索すると、大概は引っ掛かります。これまでは引用の原典を探すには図書館にこもるしかなかったので、大いに役立ちました。

Q ゴダール作品を翻訳する上で大切にしたことは?

翻訳者はイタコのようなもの。監督が言いたいことを最長6秒しか映らない文字でどう表現するかが勝負です。普通の作品ならできるだけ観客のわかりやすい言葉に置き換えればいいのですが、ゴダールでそれをすると、監督を裏切ることになる。だから、この2本の字幕も、初めて観る人にはよくわからないものになっているでしょうが、そのわからなさを持ち帰って自分の中で時間をかけて咀嚼してくれたらなと思います。それこそが映画の楽しさだと思うので。

text_Keisuke Kagiwada editor_Yuka Uchida

最終更新:2016/7/27(水) 7:30

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