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中日、ビシエドのサポートだけにあらず。「キューバの至宝」リナレスを招聘した2つの理由

ベースボールチャンネル 7/27(水) 17:00配信

ビシエドにとって最高のパートナー

 オマール・リナレスがやって来た!!

 1990年代を中心にキューバ代表の主砲として活躍し、92年のバルセロナ、96年のアトランタ大会でオリンピックを連覇。2002年には来日して中日ドラゴンズへ入団し、04年までプレーした「キューバの至宝」が、7月5日に中日の巡回打撃コーチに就任したと発表された。

 その日には遠征先の富山入りし、ダヤン・ビシエドにアドバイスを送るなど、早くも精力的に動いているが、なぜこの時期に中日はリナレスを招聘したのだろうか。大きな理由は2つある。

 ひとつは、ビシエドに長く活躍してもらうための心技にわたるサポート役だ。
 ビシエドがリナレスについて「少年時代から僕のアイドル」と話しているように、キューバ人選手にとってリナレスは特別な存在であり、いつも傍らにいるだけで精神面が安定し、独特な技術のチェックもしてもらえる。ビシエドにとって、これ以上のパートナーはいないだろう。

 また、ビシエドをはじめ、リカルド・ナニータ、アンダーソン・エルナンデス、ラウル・バルデス、ジョーダン・ノルベルトら中日の外国人選手は、西武時代から親交のある森 繁和ヘッドコーチとドミンゴ・マルティネスのコネクションによって調査、獲得している。

 ビシエドに関しては、シカゴ・ホワイトソックス時代から起用法に不満を持ち、14年には日本行きを考えているという情報をつかんで調査を続け、ようやく昨年に契約した。だが、3・4月の月間MVPを獲得する活躍を見せた途端、アメリカの代理人がコンタクトを試みているという。ただ、どんな好条件を提示されようと、ビシエドにとってのプライオリティは“リナレスがいること”であり、中日はマネー・ゲームに巻き込まれ、最悪ビシエドを強奪される危険を回避できるのだ。

思うように事が運びにくいキューバ選手の獲得交渉

 もうひとつは、キューバ人選手の獲得に関してのパイプ役である。かつてキューバ政府が選手の海外派遣に踏み切ると言われた際、中日はキューバ国内の野球場を改修する費用などを負担し、それがリナレスの派遣にもつながった。

 そして、14年のシーズン途中にフレデリク・セペダ、ユリエスキ・グリエル、アルフレド・デスパイネら主力選手が次々とNPBへ移籍したが、その獲得交渉はうまく運んだものばかりではない。キューバ野球に詳しい全日本野球協会の柴田 穣事務局長はこう語る。

「14年に巨人が獲得を望んだのは、当時24歳のヤズマニー・トマス外野手でしたが、キューバ側の意向を呑んで34歳のセペダを獲得した。当然、年齢的にも目指した戦力補強にならず、おまけにトマスは亡命してしまった。そこで、今季の開幕直後には23歳のホゼ・ガルシアを獲得しましたが、今度は巨人側の戦力事情でガルシアを一軍に定着させられず、ガルシアはモチベーションを保ちにくくなっています。NPB球団とキューバ側の意向がマッチする補強を実現するには、双方の事情を理解できる窓口が必要です。中日は、まだキューバ人選手を獲得していませんが、リナレスがいればスムーズな交渉ができるでしょう」

 現在の選手を手厚くケアするにも、将来の戦力補強をスムーズに行うためにも、リナレスは不可欠な“戦力”なのである。ましてや、現役を退いて指導者に転じてからのリナレスは、順調にキャリアを積んでいるとは言えない。そんな状況で、尊敬する落合博満GMと再び一緒に仕事ができることに、リナレスは大きな喜びを感じているという。

 リナレスの入団でビシエド、バルデスのキューバ出身コンビ、ナニータらドミニカ勢が好調を維持し、ペナントレース後半に巻き返すことができるか。さらに、リナレスがどんな指導者に成熟していくのか関心を寄せたい。


横尾弘一

ベースボールチャンネル編集部

最終更新:7/28(木) 10:01

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