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明るい米国の未来示したヒラリー 米国のリーダーどう決まる?その21

Japan In-depth 7/29(金) 19:58配信

先週の共和党大会に続いて、民主党もヒラリー・クリントンを正式に大統領候補として立てる党大会を催した。

男女同権が当たり前のように受け取られがちなアメリカだが、2大政党が女性を大統領候補に選んだのはこれが初めてで、1984年にウォルター・モンデールが副大統領候補としてジェラルディン・フェラーロを擁立して以来だ。

共和党候補のドナルド・トランプが暗い現状を前面に押し出し「私だけがこの国を建て直せる」をぶち上げたのと対照的に、「みんなで力を合わせて、この国をよりいっそう良くしていこう」というポジティブなメッセージに終始した。

オバマ大統領がまだイリノイ州上院議員になりたての12年前の党大会で力強いスピーチを披露し、未来のスター政治家としてデビューを飾ったように、この民主党大会では、初日に登壇したニュージャージー州のコリー・ブッカーが全国的に知名度を上げた。他にもミシェル・オバマ大統領夫人、ジョー・バイデン副大統領、ビル・クリントン前大統領、バーニー・サンダース上院議員、マイケル・ブルームバーグ元ニューヨーク市長など、それぞれの個性が活かされた秀逸なスピーチが続き、トリとして締めくくるヒラリー・クリントンにプレッシャーがかかるとまで言われていた。

エンターテインメント業界からのセレブゲストも華々しい顔ぶれで、女優のメリル・ストリープから歌手のケイティー・ペリーまでが駆けつけ、聴衆を沸かせた。有名無名のアメリカ国民が登場するのが党大会の常だが、クリントン陣営がスピーカーとして招待した一般人は、乱射事件で子どもを失った母親から、トランプに愛想をつかした共和党員まで、社会的弱者のカテゴリーは全てカバーしたのではないかと思われるほどバラエティーに富んでいた。

ブッシュ父子元大統領さえ出席を拒否した共和党大会と対照的に、オバマ大統領は自分の意思を継ぐ者として、かつてのライバルであるクリントンを後押しする力強い演説を行った。今春の広島原爆追悼式典でのパフォーマンスからも分かる通り、いつも心を打つスピーチで知られるオバマだが、民主党大会でも大役をやり遂げた。

彼はトランプ個人を攻撃することは避け、トランプの言動の根底に流れるファシズム的思考「Trumpism(トランプ主義)」そのものを批判し、共和党内でトランプを支持できないでいる保守層や主流派を呼び込む姿勢を見せる見事なものだった。

そして党大会最終日、娘のチェルシー・クリントンに紹介されて登場したクリントンは真っ白のパンツスーツ姿。アメリカのダークサイドを強調したトランプとの対比を狙ったのかもしれない。

自分の家族や幼少時の体験など、プライベートな話から始めたクリントンは、幼い時に近所のbully(ガキ大将)にいじめられて泣きながら家に帰ってきた時に、母親が「自分の力で立ち向かうまで帰ってくるな」とドアを閉められた体験を明かし、今もトランプという「ブリー」と戦う用意があると語った。

女性が米軍に入隊したり、リーダーとしてのポジションに就く時によく問題とされるのが、任務を全うするタフさがあるかどうかだが、クリントンも、自分には“commander-in-chief(米軍最高司令官)”になれるだけの経験と決断力があることを主張した。“A man you can bait with a tweet is not a man we can trust with nuclear weapons.(ツイッターのつぶやき一言に釣られるような男に核兵器を託すことはできない)”というセンテンスは、これからの大統領選で繰り返されるフレーズとなるだろう。

クリントンのスピーチはおしなべて聴衆を圧倒するような派手なものではなかったが、彼女が掲げた政策はトランプのそれと違って常に具体的で計画性があり、総合的に「meaty(実のある)」と評されている。そして驚くべきは、8年前のクリントンが掲げていた政策よりずっとリベラルで進歩的なものだという点だ。これでは共和党保守派を取り込むのは難しいだろう。

ただ一つ、ハッキリしたのは、トランプが示すネガティブで暗く、ひどいアメリカの現状と対照的な、これから皆でアメリカをさらによくしていこう、というポジティブなメッセージだ。

今年の党大会は例年より早く行われたため、今日から本選挙まで長い長い100日戦争が始まる。

大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)

最終更新:7/29(金) 19:58

Japan In-depth