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中小企業の経営者は放送大学を聴け!

GQ JAPAN 7/29(金) 19:06配信

経営者は、学習のための時間をほほ取れない。勉強よりも売上向上のために時間を使うべきだから。そんな経営者の強い味方になるのが「放送大学」である。ただし、使い方にはちょっとした「コツ」がある。

【零細・中小企業の経営者必読のコラム「ポスト資本主義時代の起業術」】

周知のように「放送大学」は、公共放送による通信制の大学・大学院で、45分×15回の講義が300種類以上ある。授業はテレビ、ラジオ、インターネットを通じて提供される。

この放送大学が多忙な中小企業経営者のための格好の経営教材として機能することをご紹介したい。

本来、きちんと受講料を支払い、単位を取得すべき正規の大学だが、経営者にはそんな面倒なことをする時間もないし、する必要もない。使い方はたった一つ、「ラジオ(東京はFM 77.1MHz)で、たまたまスイッチを入れた時に放送中の講座を真剣に聴く」に尽きる。

一般に講義は、その内容よりはその構成(Syllabus)に大きな意味があるが、多忙な経営者にはその構成に付き合っている余裕はない。従って、こちらの都合最優先で教材を手元に引き寄せるための使い方を身につけなければならない。

予約録音しても後から聴くことはないだろうし、テキストなど買っても読まないのは間違いない(このような一見真面目に見える態度の弱点は「やったような気になってしまう」ことにある)。

経営者には単位も名誉も不要であって、実質的に仕事に使えるネタかどうかだけが重要だ。

講座が始まる時間にあわせてきちんと襟を正して拝聴する、などということもやらんでよろしい。とにかく、仕事が一段落したらスイッチを入れ、この場限りのかけがえのない講義なのだと自分に言い聞かせた上で、その瞬間から“真剣に”聴く、というのが一番学習効果が高い。

普段の仕事脳とは別の脳を使うので、真剣に聴くほど休憩になる。特に自分の得意領域から距離がある講義ほど参考になる。

筆者でいうと「学校図書館メディアの構成」といった話は100%批判になってしまって後味が悪いが、「西洋政治理論の伝統」みたいな話は掛け値なしに面白い。

ランダムにスイッチを入れるということは番組(講座)の途中、おそらく20分くらいは話が経過してしまった時点でアクセスする確率が高くなる。しかしそれで問題ない。40歳を超えたビジネスマンなら既に経過した20分でどんな話しをしていたのか推測できるはずだし、またその推測自体がトレーニングにもなる。

「ランダムかつ真剣に」に加えるべきもう一つの態度は、「批判的(Critically)」に聴くということだろうか。こっちは現場を知り尽くした百戦錬磨のビジネスマンだ。大学教授のいうことなど机上の空論に過ぎない。「コイツの言ってることは何がおかしいか」という態度で聴くことが肝要だ。

しかしさすがに大学教授、その分野だけを専門に調べているだけのことはある。特に当該分野の過去の歴史についてはこれがまた妙に参考になる。「へええ、そうだったのか」の連続だ。というわけで批判と尊敬が入り混じった態度で聴くのがとても大切であると思う。

生涯学習という言葉には、なんとちゃんと定義がある。

「人々が自己の充実・啓発や生活の向上のために、自発的意思に基づいて行うことを基本とし、必要に応じて自己に適した手段・方法を自ら選んで、生涯を通じて行う学習」(昭和56年の中央教育審議会答申)だそうである。

しかしこれでは、学習自体が自己目的化(consummatory)するだろう。そもそも教養講座に通って身につくようなものは教養ではない。

本来の生涯学習とは「仕事(業務)のクオリティを向上させるために、仕事しながら仕事についての考えを深め、学ぶ」という状態のことである。日常的に仕事を行いつつ、その仕事の品質を向上させるための学習(勉強)も併行して行うのが本来の生涯教育であるべきだ。

社会人向け大学院のようなごく一部の(総合的な意味で)恵まれた環境にある人しか利用できないようなものは生涯教育のツールとしては不完全だし、そもそも仕事を犠牲にして学習するという行為に至っては本末転倒も甚だしい。

また、仕事は、主たる重要な業務が中核にあって、その隙間に様々な細かい用事が割り込む、というイメージで捉えられがちだが、経営者の仕事のスタイルとしては、この認識は間違いである。割り込み(例外処理)こそ仕事の本丸だ。中核にあるとあなたが想定している主たる業務は、余剰時間にやるべきプライオリティの低いものに過ぎない。

顧客からの割り込み要求に対して高品質に応答する、というのが本丸だとした時、筆者の提唱する放送大学の使い方はトレーニングキットとして極めて有効になるだろう。

特に中高年になってくると長時間の緊張状態に耐える体力がなくなってくるので、30分程度の単位でメリハリをつけた動きが求められる(集中した時間と同じ時間の休憩が必要になる)。普段きちんと弛緩していないと、いざという時に瞬発力で勝負できない。

その弛緩の時間を有効に使えるのが、放送大学である。また、従業員研修などに多額の費用を費やすことのできない中小・零細企業にとっても(ラジオの)放送大学をどう使うか、は面白いテーマだと思う。

竹田茂

最終更新:7/29(金) 19:06

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