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「正当ではない結果など欲しくもない」。異端の監督、パコ・ヘメスの気高き魂【超攻撃的フットボールの美学】

フットボールチャンネル 7/29(金) 10:40配信

 圧倒的に予算の少ないクラブをリーガ1部に残留させ続け、なおかつ超攻撃的なフットボールを展開することで注目を集めたラージョ・バジェカーノとパコ・ヘメス監督。15-16シーズンには惜しくも2部降格となってしまったが、彼らが残した印象は計り知れない。16-17シーズンより、グラナダの指揮を執ることになったパコ・ヘメスだが、ラージョ時代のインタビューをお届けする【後編】。(取材・文:江間慎一郎/『欧州フットボール批評 special issue 01』より転載)

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1シーズンの中で同じメニューを繰り返すことは、ほぼない

――練習メニューには、どれ位の変化をつけますか?

P 変化だらけだよ。私は繰り返すことを嫌う監督だ。基本的に、1シーズンの中で同じメニューを繰り返すことは、ほぼないと言えるだろう。各練習で常に新しいメニューを取り入れる。たとえ同じ戦術を取り扱うとしてもね。そうした方が選手たちは楽しむことができ、何より自主的に考えることを義務付けられる。

 実際にやってみてうまくいかないメニューもあるが、そういうときには納得のいくまで修正を繰り返すよ。そのために練習が1時間延びてしまうこともあるがね。今日のインタビューもずいぶんと待たせてしまい、本当に申し訳なかったが、自分が納得できる形となるまで選手たちには付き合ってもらうんだ。

――選手が自主的に考える……。それは試合における判断のスピードに直結することですね。

P その通り。フットボールにおけるアクションは一瞬で、コンスタントに判断を下す必要に迫られる。選手たちは直感によってそうしていると思っていたりもするが、実際には一瞬の考えでアクションを実行しているんだよ。何も考えていない選手はプレー自体が遅く、最低だ。一方で考えている選手はどうプレーすべきかを前もって理解し、スピーディーに動くことができる。

最もスピードがあるのはシャビ・エルナンデス

――足ではなく、頭の回転の速さ。

P 足の速い選手はもちろん素晴らしいが、頭の回転が速い方がずっと大切だ。理想的な選手を挙げるとすれば、シャビ・エルナンデス一択だね。フィジカル的にはまったくスピーディーではないが、自分にとっては世界で最もスピードのある選手だよ。彼はほかの選手には不可能な速度でピッチ上の情報を処理でき、誰も対応できない次の一手を打てる。

 頭の回転が速い選手というのは、そうしてチーム全体のプレースピードを増すことが可能なんだ。そして、その後に実行するトランジションで必要となるのが、フィジカルのドン、つまりは足の速い選手となる。

――ではグアルディオラのバルセロナは、シャビ、アンドレス・イニエスタ、リオネル・メッシといった才能なしでも、あのような偉業を達成できたと思いますか?

P あのような次元の話であればノーだね。例えばアトレティコは良いパフォーマンスを見せているが、耽美的な観点からするとまったく美しくない。だがグアルディオラのバルサは良いパフォーマンスを見せ、結果を手にし、なおかつ美しかった。それはメッシ、シャビ、イニエスタのほか、最高のレベルにあったペドロ・ロドリゲス、カルレス・プジョール、ジェラール・ピケらなくしては成り立たなかったはずだ。

 美しいプレーを見せながら結果を収めるためには、稀有な才能を有する選手たちが絶対的に必要となり、グアルディオラはその幸運を手にしていた。一方ラージョであれば、多くの試合で良いパフォーマンスを見せられ、美しさもある。しかし負けてしまうんだよ(笑)。

 人々からはみっともないパフォーマンスでも勝たなくてはならないと文句を言われるが、私の考えは異なる。ほかのチームであれば、勝利のために美しさなど必要ないのかもしれないが、ラージョは逆であるべきなんだ。チームは美しさがなければ負ける運命にあり、あったとしても同様に土をつけられる。それでも美しくある方が、より勝利を重ねていける。それが私の率いるチームなわけだ。

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最終更新:7/29(金) 11:10

フットボールチャンネル

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