ここから本文です

マクドナルド、「ポケモンGO」で株価急騰に沸くも深刻化する経営の実態

HARBOR BUSINESS Online 7/29(金) 9:10配信

 ついに日本でサービス開始となり、スマホを片手に街を出歩く人が急増するなど社会現象を起こしている「ポケモンGO」。ゲームではマクドナルドの店舗がユーザー同士での対戦やキャラクター集めに必要な場所(ポケスポット)となっており、日本マクドナルドHDの株価が急騰している。

⇒【資料】マクドナルド売上高と当期純利益

 マクドナルドといえば近年、客単価の低下と客数の減少というダブルパンチで閉店が相次ぎ、4年前の水準から300店舗ほど減って、現在は全国3000店舗を切っている。’14年度からは大赤字を出すなど経営環境は悪化する一方だった。

◆「ポケモンGO」効果で株価は急上昇

 ようやく今年に入ってから客数・客単価ともに、月次で前年比を上回るようになり、株価も底を打って回復基調にあると見られている。そこへ「ポケモンGO」とのコラボが実現。さらなる客数の増加が見込まれたことで株価はまた上昇した。

 ところが、同社の経営指標を読み解いていくと、ある深刻な問題が浮き彫りとなった。

◆ゼンショー、ワタミに完敗

 同社の状況を理解するため、’14年にアルバイトによるストライキが噂され閉店が相次いだゼンショーと、昨年末の過労自殺訴訟で会社側が責任を認め、今や「ブラック企業」の代名詞となったワタミと比較していこう。ちなみに3社とも「ブラック企業大賞」にノミネートされた実績がある。

 売上ではゼンショーにおよそ3倍の差をつけられ、1社だけ大幅な赤字を出しているマクドナルドだが、時価総額では逆にゼンショーにダブルスコアをつけるなど他の2社を圧倒している。

 「ポケモンGO」効果で急騰する前から、同社の時価総額は3000億円前後と高い水準にあった。その秘密は保有する資産の内訳にある。総資産に占める借金以外の割合を表す指標・自己資本比率を見れば一目瞭然だ。

 マクドナルドの自己資本比率は他社の倍以上の水準にあるのだ。

 なぜマクドナルドの自己資本比率は高いのか?

 ゼンショーはライバルの吉野家や松屋に勝つため、とにかく店舗数を拡大する路線をとった。しかし、同社は全店舗が直営店なため、出店コストが非常にかさんだ。それを銀行借入によって賄っていたために、自己資本比率は非常に低い水準になっていたのだ。ワタミもほとんどの店舗が直営店のため、同様に自己資本比率が低い。

 一方、マクドナルドは3分の2以上の店舗がフランチャイズだ。フランチャイズの場合は加盟料しか収入にならないから、1店舗あたりの売上高は低い。その代わり、出店に際して負うリスクは低く、費用もかさまない。だからマクドナルドはほとんど銀行借入を行う必要がなく、苦境にあっても無借金経営を続けてこられたのだ。株式市場においてはその安定性の高さが評価されてきたのである。

◆昨年から自己資本比率が急降下

 しかし、’15年度からは事情が違ってくる。グラフにある通り、同社の自己資本比率は80%から60%にまで急激に低下している。

 同社の貸借対照表を読み解けば、如実な変化を目の当たりにする。これまでほぼ0に等しかった借入金が短期・長期ともに激増しているのだ。主にみずほ銀行から’15年度に一時的に借入れただけではなく、’16年度の第1四半期も長期借入金は膨らみ、借入金の合計は300億円を超えた。これと対照的に激減しているのが、保有する現預金である。

 業績悪化に伴い、減り続けた現預金は’12年度の約500億円と比べて、3分の1以下の水準である155億円程度にまで落ち込んでいる。この1年あまりで、保有する現金と借入金は一気に逆転してしまったのだ。

 マクドナルドの現在の自己資本比率60%は依然として他社よりもはるかに高い水準にあるし、企業の成長のためにはある程度の銀行借入を行って、新たな投資をして然るべきだ。しかしこの急激な変化は、大赤字で苦しい状態にあるマクドナルドが、かなりの無理をしていることを示している。

 キャッシュフロー計算書にもそれが表れている。本業によって稼いで入ってきたお金を示す営業CFは赤字に陥ってからマイナスである一方、借入によって多額の財務CFが計上されている。負債が膨らんでいるということだ。

 拙著『進め‼︎ 東大ブラック企業探偵団」でも解説したが、企業は大赤字を出しても、多額の借金をしてもそれだけでは潰れない。しかし、キャッシュが尽きてしまうと倒産する。そう考えるとマクドナルドに残された時間は実はそう多くない。既存店に絞って「ポケモンGO」特需に乗って、まずはなんとか1店舗あたりで稼げるお金を増やしていくほかない。<文/大熊将八>

おおくましょうはち○瀧本哲史ゼミ出身。現役東大生にして、東大・京大でベストセラーの企業分析小説『進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者。twitterアカウントは@showyeahok

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:7/29(金) 19:32

HARBOR BUSINESS Online