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「復興・防災型」出店に東北大キャンパス取得に……。杜の都・仙台で進む「商業のイオン化」

HARBOR BUSINESS Online 7/31(日) 9:10配信

 小売業の雄・イオングループは、そのスケールメリットを享受すべく店舗網の拡大を進めており、今やその様子は「商業のイオン化」とも称されるほどである。

 2016年に入っても、わずか約半年のうちに千葉県佐倉市(イオンタウンユーカリが丘)、大阪府堺市(イオンモール堺鉄砲町)、島根県出雲市(イオンモール出雲)、愛媛県今治市(イオンモール今治新都心)、鹿児島県姶良市(イオンタウン姶良)など、全国各地でイオン系列の大型ショッピングセンターの新規出店が行われているほか、昨秋から今春にかけてはダイエー主要店舗のイオンへの転換もあり、「イオン化」の動きはより顕著なものとなってきている。

 そんな中、ひときわ「イオン化」の動きが目立ってきている都市の1つが、杜の都・仙台だ。

 イオングループは、これまでも仙台市とその近郊において大型ショッピングセンター「イオンモール名取」、「イオンモール富谷」、「イオンタウン仙台泉大沢」などのショッピングセンター、「イオン仙台幸町店」などの総合スーパー、ファッションビル「イオン仙台フォーラス」、ディスカウントストア「ザ・ビッグ」など、様々な業態の店舗を展開してきた。

 しかし、近年はそれに加えて、再開発や震災復興にともなう大型ショッピングセンター出店計画を相次いで発表しているほか、既存のダイエー旗艦店のイオン転換、新業態となる小型化イオンの出店などを矢継ぎ早に行っている。震災からの復興需要も追い風となる形で、郊外地域・近郊地域・中心市街地を問わず、杜の都の「商業のイオン化」はとどまるところを知らない勢いだ。

◆郊外店規制の中で大型店を出す戦略

 2015年12月に開業したばかりの仙台市営地下鉄東西線・卸町駅(仙台市若林区)。卸売業を中心とした中小オフィスが雑然と立ち並ぶこの駅の周辺は、まだ「駅前」といった雰囲気はあまり感じられない。

 現在、仙台市におけるイオングループの事業計画の代表とされるのが、この卸町駅西側へのイオンリテールによる大型ショッピングセンター出店計画だ。

 開業して半年ほどの卸町駅の周辺は、核となるような目立った施設はまだ少ない一方で、同駅は仙台駅から東に4kmほどと、中心市街地からも近い好立地にある。イオングループは、この卸町駅そばの約1.9haの敷地(キリンパークプラザ跡など)に、延床面積30,000㎡超の大型店舗の建設を計画している。

 現在、新まちづくり3法により郊外型大型店の出店は以前よりも難しいものとなっており、この卸町地区の都市計画においても、新規に出店する大型店は延床面積10,000㎡未満のもののみに規制されている。

 そこで、イオングループが目を付けたのが、開通したばかりの地下鉄東西線沿線を活性化するために仙台市が設けた「仙台市東西線沿線都市計画提案制度」だった。

 この制度では、東西線沿線で都市開発を行う場合は市に対し規制緩和を求めることができるため、イオンリテールは延床面積30,000㎡を超える大型店舗を建設することが可能となった。

 卸町は、かつてはその名の通り卸業に特化した地域として開発された経緯があるが、昨年の東西線の開業に合わせて地区計画が変更され、現在は「商業、文化、居住」を中心とするエリアへの転換を目指している。それにともない、卸町駅前では東日本大震災の復興公営住宅とオフィス、医療機関などが集積したコミュニティプラザ「ほるせ」が整備されるなど、順調に開発が進みつつある。

 そうしたなかで新駅の前にイオンの大型店が出店したならば、新たな地域の核の1つとなることは間違いなく、駅や震災復興住宅周辺の開発にも弾みがつくほか、東西線の利用客増も見込まれる。

 つまり、卸町駅における新店計画は「市営地下鉄沿線と震災復興住宅周辺の開発を進めたい」という行政側と、「市街地近くに大型ショッピングセンターを出店したい」というイオン側、両者の思惑が一致した形での出店であると言える。

◆マンションラッシュ続く仙台南部副都心への出店

 仙台市内では、先述の卸町地区のほかにも2つのイオンの大型店計画がある。

 そのうちの1つが、仙台市南部の副都心である太白区長町地区への出店計画だ。

 長町地区は仙台駅から4キロほど南に位置しており、1999年に廃止されたJR長町機関区跡の再開発地区「あすと長町」を中心に、近年急速な発展を遂げている地域である。

 この「あすと長町」には、2016年現在、民設共営の多目的体育館「ゼビオアリーナ仙台」、ライブハウス「仙台PIT」といった文化施設から、家具店「IKEA」やセブンアイ系のショッピングセンター「ヨークタウン」などの商業施設、仙台市立病院やメディカルプラザなどといった医療施設に加え、先述の卸町駅前と同様に大型の震災復興公営住宅も立地しており、今後は地元放送局「東日本放送」の移転が計画されるなど、開発から僅か10数年で副都心としての都市機能の集積が急速に進んでいる。

 イオングループはこの発展著しい地区においても長町駅近くの土地を取得、近隣型の大型ショッピングセンター「イオンタウン」の出店を計画している。

 現在、あすと長町地区には大型マンション3棟(シティタワー長町新都心、プレシスあすと長町エクレール、ワンパークレジデンシャルタワーズ)が建設中で、その総戸数はおよそ900戸にも上り、完成後は急激な人口増加が見込まれている。

 近年は津波被害の影響があった沿岸部から開発が進む内陸部の長町地区へ住み替える人も多く、商業需要の受け皿となる大型店の必要性が高まっており、イオンタウンはマンションディベロッパーや、震災復興住宅居住者も含めた新住民からの期待を背負っての出店となる。

◆前代未聞? 国立大キャンパスをイオンが取得

 そして最後の1つ、3つ目のイオンの大型店計画は、仙台市の中心商店街からも近い、東北大学のキャンパス跡だ。

 国立大学法人東北大学は、仙台駅から北に2キロほどの北仙台駅近くにある東北大学雨宮キャンパス(青葉区)を2016年度中に青葉山キャンパスに統合させることになっている。この雨宮キャンパスの土地を取得したのもイオングループの「イオンモール」だった。イオンモールは、雨宮キャンパスの広大な敷地約9.3haを、実に約220億円で取得したという。

 雨宮キャンパスがある上杉地区は仙台市役所や中心商店街から僅か1キロほど北側の徒歩圏に位置する高級住宅街で、大型マンションも多く立地する。イオンモールは、この約9.3haの広大な土地を従来のような郊外型ショッピングセンターとして利用するのではなく、総合的な開発を行うことを目指している。

 具体的には、キャンパス跡を商業・地域医療支援病院・住宅の3つのエリアに分けて開発。そのうち約3.6haを商業エリアとし、延床面積約60,000㎡超の「都市型ショッピングセンター」の建設を計画しているという。

 また、約4.1haの地域医療支援病院エリアには、大型医療拠点となる「厚生会仙台厚生病院」を進出させる予定で、仙台市中心部の防災・減災にも一役買うことになる。残りの1.6haは大型マンションとなる見通し。これらの施設は、2019年度中の完成を目指している。 

◆「復興・防災型イオン」による地域復興

 ここまで紹介したように、仙台市内の郊外~近郊地域では、地域の再開発計画に合わせ、東北地方の地域特性ともいうべき「震災復興需要」を取り込むかたちでイオングループによる大型開発計画が続々と持ち上がっている。

 実は、このような震災復興需要や、それに伴う再開発に合わせた「復興・防災型イオン」ともいうべき店舗の新規出店は、仙台市のみに留まらず、岩手県釜石市、岩手県陸前高田市、福島県いわき市、福島県広野町など、津波被害が大きかった東北沿岸部各地で行われている。こういった被災地域の復興に伴う新規出店は、東北地方におけるイオングループの成長の要にもなっており、震災被災地において、イオンを軸とした大型民間資本を投入するかたちでの地域再建・防災拠点整備は「1つのトレンド」であるとも言える。

 しかし、東北随一の大都市である仙台市の「商業のイオン化」は、他の東北諸地域と同様の「震災復興重要の取り込み」や「郊外~近郊地域での大型再開発」のみには留まっていない。

 そこで、次回からは、激しい競争に晒されている仙台市内において、大型店と中小店舗を上手く使い分ける形でライバル店と徹底抗戦を行うというイオングループの経営戦略を見ていく。

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

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最終更新:7/31(日) 9:10

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