ここから本文です

大橋巨泉さんが残したあの名言がどうしても納得できない!

HARBOR BUSINESS Online 7/31(日) 16:20配信

【石原壮一郎の名言に訊け】~大橋巨泉

Q:このあいだ大橋巨泉さんがお亡くなりになった。巨泉さんが遺した名言に「集団の真ん中にいたら、絶対にダメだ。どうせなら、ビリを走れ。時代の風が逆から吹いたら、自分がトップに立てる」というのがある。俺は、この言葉に納得できない。時代の風が逆から吹かなかったら、ビリはビリのままだ。そもそも巨泉さんのように才能がある人はいいけど、凡人がこんな心がけでいたってうまくいくわけがない。おとなしく真ん中にいるほうがマシじゃないのか。こんな考え方は、間違っているんだろうか。(長野県・30歳・営業)

A:巨泉さんらしい刺激的な言葉ですね。巨泉さんがお亡くなりになって、この言葉もあらためて注目されているようです。間違っているか間違っていないか、それは他人が決めることじゃありません。真ん中にいたほうがマシだと思うなら、そういう生き方をするのはあなたの自由です。巨泉さんだってけっしてビリを走っていたわけではないわけだし、ツッコミを入れようと思えばいくらでも入れられるでしょう。

 ただ、あなたがもし、この言葉の「アラ捜し」をすることで、得意気な気持ちになっているとしたら、それはどうかなと首を傾げさせていただきます。ネット上では、他人の言葉や行動にケチをつけることに生きがいを覚えている人が少なくありません。まあ、そうやってプライドを必死で保ってきた人は、昔からたくさんいたんでしょうね。ネットの発達で存在が見えやすくなったり、大きな声を出す楽しさに溺れる人が増えたりしただけで。

 そもそも「名言」というのは、そのとおりに行動すれば大丈夫という「正解」を与えてくれるものではありません。与えてくれるのは、あくまで「ヒント」です。自分にとっての「正解」は自分で見つけ出す必要があります。「自分を劇的に変えてくれる大きな気づき」を棚から牡丹餅的に期待しているだけでは、せっかくの「名言」も活躍のしようがありません。巨泉さんは、こんなふうにも言っていました。

「人に助言を与えることにも用心深くしよう。賢い人はそれを必要としないし、愚かな人は心に留めないだろうから」

「名言」も同じ。私たちはなかなか「賢い人」にはなれません。しかし、周囲から助言を受けたり、心に引っかかる「名言」を知ったりしたときには、どう受け止めるのが自分にとって有益かを貪欲に考えるぐらいの賢さは持っていたいもの。言い訳がましく反発したり屁理屈をつけて否定したりするのは、心に留めない「愚かな人」以上に愚かな反応と言えるでしょう。あっ、すいません。せっかく相談してもらったのにケチョンケチョンに言って。

「集団の真ん中にいたら、絶対にダメだ。どうせなら、ビリを走れ。時代の風が逆から吹いたら、自分がトップに立てる」――。含蓄に富んだいい言葉じゃありませんか。集団の中でもがき苦しんで自分を見失っている人にとっては、別の価値観もあるんだと思うことで大きな救いになるはず。何かに挫折して時代に取り残された気になっている人は、自分の武器を身に付ける大切さに気づくことができるでしょう。それこそ、けっして棚から牡丹餅を期待すればいいと言ってるわけではありません。

 ケチョンケチョンに言ってしまいましたが、どうかお気になさらず。私がもっともらしく言っていることも含めて、他人の言うことなんてアテにならないというのが大前提です。自分の考えに自信があるなら、そのまま「真ん中」を目指してください。時代の風の吹き具合によっては、いつかトップに立って高笑いできる日が来るかもしれません。あ、でも、べつにそんなことは望んでらっしゃらないんですよね。失礼しました。

【今回の大人メソッド】

◆「名言」に過大な期待を寄せるのは甘ったれた了見

「名言」の力に思いっきり頼った連載のくせに、こんなこと言うのは大胆かもしれません。ただ、いちおうここでは、「名言」を絶対的な救世主として崇め奉るのではなく、あくまでヒントをもらって、そこから読む人に意味を考えてもらおうというスタンスをとっているつもりです。引き続き、「名言」との大人の付き合い方を一緒に模索していきましょう。

【相談募集中!】ツイッターで石原壮一郎さんのアカウント(@otonaryoku )に、簡単な相談内容を書いて呼びかけてください。

いしはら・そういちろう/フリーライター、コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』(扶桑社)でデビュー。以来、さまざまなメディアで活躍し、日本の大人シーンを牽引している。『大人力検定』(文春文庫PLUS)、『大人の当たり前メソッド』(成美文庫)など著書多数。近年は地元の名物である伊勢うどんを精力的に応援。2013年には「伊勢うどん大使」に就任し、世界初の伊勢うどん本『食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)も上梓。最新刊は、定番の悩みにさまざまな賢人が答える画期的な一冊『日本人の人生相談』(ワニブックス)

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:7/31(日) 16:20

HARBOR BUSINESS Online

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。