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EBAによるストレステストの結果公表(First Impression)

NRI研究員の時事解説 8/1(月) 9:39配信

はじめに

注目を集めたイタリアの「世界最古の銀行」が、国際投資銀行団による不良債権切り離しと資本増強のパッケージを受け入れたこともあり、今回のストレステスト公表に伴う市場への直接的なインパクトは抑制的となった。

もっとも、EBAが説明するように、これらは一定のシナリオの下で主要銀行の自己資本や収益、資産内容がどう変化するかトップダウンで示したものに過ぎない。その上で、各銀行は、市場を含む様々なステークホルダーの意向やマクロの金融経済環境といった要素をみながら、ストレステストの結果に基づく監督当局との議論を踏まえて、頑健性の強化を進めることになる。

このため、ストレステストの結果を適切に評価するには、今後の各銀行の対応を踏まえた議論が必要であるが、本コラムはその準備も含めて、とりあえず現時点で内容を検討する。

ストレステストの枠組み

本論に入る前に、今回のストレステストの枠組みを概観したい。まず、ESRBが策定したストレスシナリオは、四つの側面でストレスが波及するものとなっている。最初に、国際金融市場で突然にリスクプレミアムが上昇し、低下した市場機能を通じて主要な資産価格の変動が高まる。ESRBは、例として米国長期金利のスパイクを挙げている。

その結果として、(1)低成長やバランスシート調整の遅延に伴う金融機関収益の毀損、(2)低成長の下での公的債務ないし民間債務のsustainabilityに対する懸念の増加、(3)流動性リスク等に増幅されたシャドウバンキングへのストレスの三つが生ずる。

これらのシナリオをもとに、ESRBは2016年~2018年にかけてのストレス下での長期金利や株価、為替レートの推移を推計し、それをマクロ経済予測(ベースを欧州委員会が提供)に取り込むことで、3年分のGDP成長率やインフレ率、失業率といった主要経済指標についても、同様にストレス下での推移を示している。

各金融機関は、ESRBによるこうしたストレスシナリオと、その下でのマクロ経済指標や金利・株価等の推計をもとに、主要なリスク(信用リスク、市場リスク)および純金利収益への影響を推計する。加えて、主として自行モデルにより、金利外収益やオペリスクを推計し、これらを総合して自己資本への影響を計算する。

もちろん、各要素の推計方法はEBAによる一定のガイドラインに服するだけでなく、各金融機関は各々の監督当局との間で、自行モデルの妥当性や扱いを含め、個々に扱いを相談しながら具体的な推計を進める。

今回の対象となった金融機関はEU(27カ国)のうち15カ国の合計51先である。EBAは、(1)ユーロ圏全体およびそれ以外の諸国で各々資産規模で7割を占める上位先をカバーする、(2)300億ユーロ以上の資産規模を有する、といった基準を示している。念のため付言すると、ストレステストを実行する各金融機関と直接にやり取りするのは、原則としてECB(ユーロ圏の場合)または各国の監督当局である。EBAは上記のような枠組みの調整と決定に加え、各金融機関の結果を集約して発表する役割を担う。

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最終更新:8/1(月) 9:39

NRI研究員の時事解説