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誰も言わないけれど戦争にはこれだけカネがかかる

JBpress 8/1(月) 6:15配信

 参院選の結果、改憲勢力が3分の2を超えたことで、憲法改正が視野に入ってきた。

 戦後の日本において安全保障の問題はイデオロギー論争と同一であり、憲法9条はもっぱら政治的な視点でのみ議論されてきた。今でもその傾向は大きく変わっていない。

2014年における各国の軍事支出とGDP(表)

 だが、仮に9条が改正され、日本でも戦争遂行が可能ということになるとそうはいかなくなる。軍隊というのはお金のかかるものであり、経済問題と切り離して安全保障を議論することなどできないからである。

 現在の日本は大きな経済的課題を抱えているが、戦争を経済の視点で捉えた議論はほとんど行われていない。日本は太平洋戦争という無謀な戦争を行い、国家財政を完全に破たんさせたという恥ずべき過去がある。本当に憲法を改正するつもりがあるのなら、戦争というものに対してもっとリアルな議論が必要なはずだ。

■ 太平洋戦争の戦費は国家予算の280倍? 

 戦争にはどのくらいのお金がかかるのか? 

 そう聞かれてスラスラと答えられる人はそう多くないだろう。メディアの報道でも経済的な部分に焦点が当たることは少ない。だが戦争の遂行能力は、その国の経済力に依存しており、経済や財政の問題と不可分である。戦争と経済の関係を知るには、まずは過去の具体例を探るのが近道である。

 日本は明治維新以後、日清戦争、日露戦争、太平洋戦争という3つの大きな戦争を経験している。最初の大規模な戦争となった日清戦争の戦費は、当時の金額で約2億3000万円、初の近代戦となった日露戦争の戦費は約18億3000万円だった。

 日清戦争開戦当時のGDP(当時はGNP)は13億4000万円だったので、戦費総額のGDP比は0.17倍である。現在の日本のGDPは約500兆円なので、単純に0.17倍という数字を当てはめると85兆円という金額になる。現在の国家予算(一般会計)は約100兆円なので、国家予算に匹敵する金額を1つの戦争に投じた計算だ。

 一方、日露戦争当時のGDPは約30億円だったので、日露戦争における戦費総額のGDP比は0.6倍である。日露戦争の負担は日清戦争よりもはるかに大きく、現在の金額に当てはめると300兆円ということになる。

 日清戦争から10年後に行われた日露戦争は、当時、急速に発達しつつあったグローバル経済を背景に実施された。最新鋭の艦船やハイテク兵器が多数投入されたため、戦争遂行期間がほとんど同じであるにもかかわらず、日清戦争の8倍もの戦費を必要とした。

 これが太平洋戦争になると根本的にケタが変わってくる。太平洋戦争(日中戦争を含む)の名目上の戦費総額は約7600億円。日中戦争開戦時のGDPは228億円なので、戦費総額のGDP比率を計算すると33倍になる。国家予算に対する比率では何と280倍という、まさに天文学的な数字である。

■ インフレというカラクリ

 GDPの33倍ということになると、今の日本にあてはめれば、兆の単位を超え1.65京(けい)円になってしまう。ただ、この数字には少々カラクリがある。

 太平洋戦争は国力を無視した戦争であり、経済的にはそもそも遂行が不可能なものであった。通常の手段で戦費を調達することはできず、そのほとんどは国債を日銀が直接引き受けることによって賄われた。これは、日銀が無制限に輪転機を回すということを意味しているので、当然のことながらインフレが発生する。インフレによって通貨価値が下がり、見かけ上の戦費も急上昇したのである。

 また、旧日本軍はアジアの占領地域でかなり強引な戦費の調達を行っている。占領地域に国策金融機関を設立し、現地通貨や軍票(一種の約束手形)などを乱発した。

 これは裏付けのない通貨のようなものなので、アジアの占領地域では、日本国内をはるかに上回るインフレが発生している。占領地では激しいインフレになっているにもかかわらず、名目上の交換レートは従来のまま据え置かれたので、書類上、占領地の軍事費は膨れ上がることになった。

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最終更新:8/23(火) 8:05

JBpress

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