ここから本文です

Silent Siren、横浜アリーナ公演で果たした“ハッピーなリベンジ”

リアルサウンド 8/2(火) 18:01配信

「私たちがはじめて横浜アリーナに立ったのは、インディーズの頃の『東京ガールズコレクション』のオープニングアクトでした。みんなが入ってくる途中に演るんですけど……」

リーダーのひなんちゅ(Dr.)が口を開いた。客入れの開場中の演奏。周りはすべてモデルや他の出演者目当ての来場者ばかりだったという。

「みんな“誰だろう?“という中で盛り上がるわけでもなく…… めちゃくちゃ悔しくて、“絶対にここでワンマンやってやる“と決めました。それが5年前です」

 Silent Sirenは“読モ出身”とはいえ、最初から華々しくデビューしたわけでもなく、地道な活動で着実に実力と人気を伸ばしてきた。初ライブの原宿アストロホールから、SHIBUYA-AX、日比谷野音、日本武道館…… そして2016年7月18日、バンド史上最大規模となったツアー『Silent Siren Live Tour 2016 Sのために Sをねらえ! そしてすべてがSになる』ファイナル、横浜アリーナにたどり着いた。

 彼女たちが大切にしてきたもの。それは、音楽のみならず、体を張ったバラエティに至るまであくなき挑戦をし続けるサイサイ流ガールズバンドの矜持と、それを支える制作スタッフ“サイサイチーム”、そして、開場の数時間も前から会場周辺をピンク色に染めていた“サイファミ(※サイサイファミリー)”と呼ばれるファン──。この日見た景色は、そのすべてが結集して創り上げたものだった。

 魔の手により引き裂かれたSilent Sirenの4人が、もう一度音楽をやりたいと決意し、立ち上がる──。 といったドラマ仕立てのオープニングムービーが終わると、会場後方に真っ赤なチャイナ風衣装を纏った4人が登場した。SEのリズムに合わせて打ち鳴らされる手拍子。来場者に配布されたリストバンド状のシンクロライトが点滅する青い光に包まれ、それぞれのトロッコに乗ったメンバーが、“S”を模した形状のステージへと導かれるように向かっていく。

 ステージ上手からゆかるん(Key.)、すぅ(Vo.&Gt.)、ひなんちゅ(Dr.)、あいにゃん(Ba.)、横一列の独特の配置につくと、会場の空気を確かめるように音が解き放たれた。

「Silent Sirenライブツアーファイナル、横浜アリーナへようこそーー!」

 すぅがそう叫ぶと、おもむろにギターを刻む。1曲目は「milk boy」だ。次々と変わっていくリズムと拍子、そして転調を繰り返しながら、緩急をつけた一糸乱れぬアンサンブルは、そのまま「八月の夜」へとなだれ込んだ。タイトでどっしりとしたひなんちゅのスネアと、やけに色気のあるグルーヴィーなあいにゃんのベースが心地よい。「横アリのみんな元気ですかぁーー?!」ステージ前方に躍り出たハッピー番長・ゆかるんの陽気な煽りではじまった「BANG!BANG!BANG!」ではメンバー紹介&各ソロを挟み、すぅの高らかな歌い出しで始まった「ビーサン」へ。怒濤のサマーチューンの応酬に序盤から会場の熱はぐんぐん上がっていく。

 「横浜といったら中華街。中華街と言ったら、あの曲!」そう言って始まったのは「チャイナキッス」。ステージの至るところから火柱が吹き上がる。ソリッドな演奏で鬼気迫るような「Love install」、優しく包み込むような「hikari」。ステージ上のビジョンに映し出されていく詞が、前者ではハッキングされたように、後者では絵本を開いたように、4人の紡ぎ出す音にさらなる色をつける。
 
 本ツアーは、ライブハウスにはじまり、ホールを経て、アリーナを迎えた。初日のEX THEATER ROPPONGI公演は、シンプルなステージと演奏で、ロックバンドとしての本懐を見せつけた。ホール初日となった戸田市民会館公演からはカラフルなセットとビジョンが加わり、エンターテインメント性でも楽しませてくれた。そして、ここ横浜アリーナではさらにスケールの大きいライブショウを魅せてくる。

 今回のツアーリーダー、演出/構成を担当したのはあいにゃん(Ba.)。「驚くと思う」「セットを運ぶトラックの数が今までで一番多い」と事前に語っていたが、「楽しませる」「楽しむ」ことに長けている彼女たちならではの趣向を凝らした演出は観るものを飽きさせない。

 オープニングで使用したトロッコに再び4人が乗り、客席へと繰り出して行く。4人それぞれが客席の目の前で演奏する「LOVE FIGTER!」。思わぬ距離で演奏するメンバーを前にサイファミは「L」「O」「V」「E」の振り付けを全力で応えていく。

 「お家で寂しくて膝を抱えている子がいないように。サイサイのライブはたくさんの愛のある場所にしたいなと思います」すぅがそう語ると、ステージを囲むように紗幕が降ろされた。そこに水の映像が投影され、奏でられたのは「nukumor」。折り重ねられたシューゲイズサウンドが包み込むドリームポップ。浮遊する音とメロディに呼応するよう揺れ動く青の世界。それはまるで水槽を眺めているかのような情景で、〈少女は俯いた 水槽のなかゆらゆら揺れ泳いでる このブルーシクリッドみたい ここじゃなきゃ生きれないのに〉という詞とシンクロしていく。つづく「レイラ」では、内に向けた痛切な詞が歌声とともに手書きのタイポグラフィで綴られていった。誰もが持っているであろう心の奥底にある陰の部分を、揺らめく音と美しいプロジェクションマッピングの融合で体現したこの2曲のあいだ、どこか異次元の世界にいるような感覚に見舞われた。

「ここにいる瞬間は無敵だし、当分無敵でいられると思うのね。“今日楽しかったから、また明日から頑張ろう”って。そして、そのパワーが切れそうになったらまた遊びに来てください!」

 すぅのMCからのラストスパートは、本ツアーのために制作されたミュージックビデオをバックに「吉田さん」、サイサイハッピー感全快の「C.A.F.E.」と、ノリノリのナンバーで攻める。ステージに運びこまれたDJブースに立ったゆかるんこと、“DJ YUKAKOO”が豪快にホーンを鳴らすと、すぅ、あいにゃん、ひなんちゅの3人が楽器を持たずに中央の花道へと繰り出す。サングラス姿で踊り狂うパリピな3人にオーディエンスのバイブスもアゲアゲだ。そのまま「DanceMusiQ」へと突入し、横浜アリーナはダンスフロアと化した。

 「音楽で恩返しがしたい」とすぅが感謝の意を述べる。悔しい思いをしたあのとき、メンバーで誓いあった横浜アリーナに今立っている。あのときと違うのは、ここに集まったすべての人が、Silent Sirenのことを好きだということだ。

「ここまで連れてきてくれてありがとう、ここまで連れてこれてよかったよーー! これからも一緒に、一緒に、一緒に、どこまでも一緒に行こうね」

 そう言って本編の最後に贈られたのは「KAKUMEI」。「もう迷わない」と誓った声が横浜アリーナに響いた。

 割れんばかりの“サイサイ”コールで迎えられたアンコールでは、この日のためにツアー中に作られたという新曲が初披露された。

「バンドを結成してSilent Sirenという船に乗り込みました。みんなもウチらの船に是非乗ってほしいな。っていうかもう乗ってるのかな?」

 「シンドバッド」と名付けられたこの新曲は、きらびやかなシンセサウンドのイントロと大きく揺れる横ノリを用い、これまでになかったサウンドと壮大なスケール感が、新境地へ向かって旅立とうとする決意を感じられる力強い曲。覚えやすいメロディはすぐにシンガロングへと変わり、メンバーとサイファミによる「Wow~ Wow~」という歌声が横浜アリーナに響き渡る。「スタッフのみんなも!」とのすぅの声に、場内の警備スタッフまでも応えていたのが印象的だった。

 ラストナンバー「チェリボム」で、ミュージックビデオのダンサーを意識した筋肉隆々のTシャツを着た数十人のスタッフ、サイサイチームがステージなだれ込む。不慣れながらも楽しそうに“さくらんぼダンス”を踊る姿は、客席で踊るサイファミと何も変わらない。Silent Sirenのライブにおける楽しさを象徴するような光景だった。ここにいるすべての人が作り上げたハッピーな空間に銀テープの祝砲と無数の“S”風船が降り注ぎ、最高潮のフィナーレを迎える。

 ツアー中、全国各地に掲げてきた巨大なサイサイフラッグが、最後の地、ここ横浜アリーナの花道に立てられる。「ツアーファイナル横浜、獲ったぞーーーー!!」4人の勝鬨とそれを讃えるサイファミの大歓声に包まれたのだった。

 9月には恒例の主催イベント『サイサイフェス2016』と、アジア~アメリカを回るワールドツアーが控えている。そして12月には昨年に続き、『年末スペシャルライブ Dream on!』の開催も発表された。

 すぅがライブ中に語った言葉、「ゴールがどこかはわからないけど、長い長い旅になるけど、みんなで一緒にいろんな景色を見に行きたいなと思っています。もっともっと最高の景色をみんなで一緒に見に行こう!」我が道をひたすら突き進むオンリーワンのガールズバンドは、これからもまだ見たことのない最高の景色を見せてくれるに違いない。

取材・文=冬将軍

最終更新:8/2(火) 18:01

リアルサウンド

Yahoo!ニュースからのお知らせ