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国民皆保険にとどめを刺す桁外れの高額がん治療薬

JBpress 8/2(火) 6:10配信

 7月21日の報道によると、中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)が「高額な新薬の適性投与に指針を制定する」方針を立てているとのことです。

 投与制限の対象となる薬の第1弾は、がん免疫治療薬の「オプジーボ(ニボルマブ)」です。オプジーボは、免疫力を高めてがんを攻撃する画期的な新薬で、理論上は全てのがんに効く可能性があります。

 ただし今回の政策では、オプジーボについて「効果が見込まれない」基準を制定し、その基準に合致する場合は投与を制限することになります。効果が見込まれないと診断する基準については、今後半年間で決定するとのことです。

 これまで、日本では国民皆保険のもと、効果の上がる可能性がきちんとしたデータで示された薬剤については、認可に時間が多少かかることはあっても、続々と健康保険適応となってきていました。ですから、適応とされている薬に対して、“効果が上がる可能性が低いかもしれない“という理由で投与制限がかかることは極めて異例です。

 オプジーボは、効果は非常に高いのですが、コストが年間1人当たり3500万円もかかります。ここまで高額な薬剤については、保険適応の投与対象者を選別して、公費負担を減らそうというのが狙いです。

 とはいえ、これほどの金額になると、患者が自費で治療を受けることはほぼ不可能でしょう。よって、保険適応対象者の基準から外されることは、その方にとって事実上のがん治療終了宣告となります。私たちが医療を受ける際には必ず「保険が適応されますか?」と確認しなければならない時代がやって来るということかもしれません。

■ 聖域なき医療費抑制策が施行される

 前回のコラム(「伝えられない医療改革、あらゆる世代が負担増に」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47249)で、これから実施される見込みの医療費抑制策の中に以下の項目があることをお話ししました。

 ・保険適応は後発品のみで、先発品との差額は自己負担
・市販類似薬(薬局で購入可能な薬)の保険除外

 ですが、後発品を処方するケースは、あくまで慢性期で症状が安定している場合、ないしは安定した効果が認められる状況を想定しています。「市販類似薬」というのも、軽症者が薬局で購入できる風邪薬などが対象でした。

 このくらいの施策であれば、確かに自己負担が増えるものの、すぐに生命に関わるわけではありませんし、個人レベルでもなんとか防衛対応可能な範疇と思われました。

 しかし、今回は、生命に関わる抗がん剤や高額薬剤も給付制限の対象となることが発表されたのです。まさに聖域なき医療費抑制策が施行されることが明らかになったと言ってよいでしょう。

■ 桁外れの高額な金額が国民皆保険にとどめを刺した

 日本の国民皆保険の趣旨は、「誰でも」「いつでも」「どこでも」医療の全てを健康保険でカバーすることです。その趣旨に基づいて、これまではどんなに高額な薬剤であろうとも、一定の効果が認められれば次々と保険適応とされてきました。

 例えば2011年には、乳幼児に重篤な肺炎を引き起こすRSウイルスの重症化を防ぐ抗体注射「シナジス」が、早産児や呼吸器疾患を持つ乳幼児に外来で注射可能になりました。「シナジス」注射1回分の料金は16万です。月に1回を半年間続けると約120万円です。

 また、2013年には、潰瘍性大腸炎に対してTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ」の適応が認められました。こちらの1回分の薬剤代金は7万2000円です。月2回投で、1人あたりの年間料金は360万円となります。

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最終更新:8/2(火) 6:10

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