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大学病院の事故と不正が減らないのはなぜか

JBpress 8/2(火) 6:15配信

 群馬大学で手術後の死亡例が相次いだ問題で、大学から依頼された第三者事故調査委員会は、7月30日に報告書を提出した。

 朝日新聞の報道によると、主な問題点は以下だ。

 (1)2009年度に同じ男性医師による手術の後に8人が死亡していたのに、対応をとらなかった。
(2)旧第2外科では男性医師1人に手術が集中。支援の体制がなかった。
(3)男性医師の腹腔鏡手術の技量に疑問を持つ同僚医師から手術の中止を求める声が出たが、教授が聞き入れなかった。

 (4)旧第1外科と旧第2外科の間に競争意識があり、連携がなかった。
(5)病院は体制を整えないまま、手術数を拡大。
(6)死亡した18人のうち院内の安全管理部門に報告されたのは1人のみ

■ 責任を問われない教授たち

 群大は、今回の指摘を受けて、組織改革を進めるだろう。既に2015年4月には、2つの外科を「外科診療センター」にまとめている。

 ただ、私は、こんなことをしても問題は解決しないと思う。

 問題を起こした旧第2外科の竹吉泉教授は、いまだに教授職にあるし、ホームページの「教授挨拶」では、医療事故の件に全く触れていない。

 そればかりか「当教室のスタッフだけでほとんどの外科診療についてカバーでき、どのような患者さんが来院されても対応可能な体制をとっています」と主張する始末だ。当事者意識がない。

 さらに、旧第2外科のライバルと評された第1外科の桑野博行教授は、4月14日に大阪市で開催された日本外科学会の会合で、来年度の学術集会の会頭に選出された。

 オピニオン誌『選択』の6月号に掲載された「日本外科学会 医療を腐らせる「黒い利権装置」」によれば、会頭の選出では理事長の渡邊聡明・東京大学教授(腫瘍外科・血管外科)が推す東大閥の候補と、九州大学の推す桑野群大教授が対決した。

 怒号も飛びかう中、中断を繰り返して夜半までもつれ、投票により桑野氏が選ばれたらしい。

 日本外科学会は代々、九大閥が強く、対抗軸として東大閥が存在する。桑野群大教授も九大卒だ。群馬大学が置かれた現状を考えれば、桑野教授は群大の改革より、自分の出身母体の勢力拡張と、名誉職である「日本外科学会学術集会会頭」に関心があったと言われても仕方がない。

 この事例が示すように、群大の問題の本質は組織図や手続き論ではなく「教授のあり方」だ。

 群大の問題は、組織図をいじり、屋上屋を重ねるようなチェック体制を構築しても解決しない。下手な医師が手術をすれば事故は起こるし、統率力のない教授が指導すれば、医局は緩む。

■ 問題は教授選考にあり

 トップが責任逃れすれば、部下の信頼を失う。竹吉教授や桑野教授の振る舞いを見れば、群大外科で事故が相次ぐのも仕方ない。

 群大再生で議論すべきは、どうすれば適材適所の人材を登用できるかだ。私は、今こそ、教授の選考システムを変えるべきだと思う。

 医局では教授に権限が集中する。誰に手術をさせるか、どこの病院に異動させるかは教授に決定権がある。絶対権限を持つ教授に対し、医局員は逆らえない。医局は教授次第と言っていい。

 では、教授はどうやって選ばれるのだろう。

 これは教授が構成員を務める教授会での選挙だ。その際、重視されるのは、研究と診療の実績だ。どれくらい手術が上手いか、いくつ英語で論文を書いているかをが、具体的な評価基準になる。確かにいずれも重要だ。ただ、これで教授を選ぶのは危険だ。

 なぜなら、論文の筆頭著者や主治医に求められる能力と教授に求められる能力は異なるからだ。

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最終更新:8/2(火) 10:25

JBpress

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