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都知事選で話題の“都議会のドン”は江戸時代から存在していた!?

HARBOR BUSINESS Online 8/2(火) 9:10配信

 7月31日、東京都知事選挙の投開票が行われ、都議会の「冒頭解散」を訴えた小池百合子氏が当選を果たした。選挙期間中は“都議会のドン”なる存在が話題にのぼり、猪瀬直樹元知事も“ドン”に大いに苦しめられたことを暴露し、剛腕で鳴らした石原慎太郎元知事さえも頭を下げたことがあったという。絶大な権力を握る首都のトップでも、思いのままにはいかないのは、今に始まったことではない。江戸時代の行政の長であった江戸町奉行も、部下の顔色を伺わなければ、業務を進めることができなかった。

 都知事の前身は、戦時中の東京都長官、戦前の東京市長、東京府知事だが、明治維新の一時期に置かれた江戸府知事、さらには江戸期の町奉行にまでさかのぼることができる。テレビドラマでお馴染みの大岡越前こと大岡忠相は、町奉行を20年も務めたが、実は歴任者のほとんどは数年の任期で交代していた。さらに、知行3000石(現在の貨幣価値で数千万円)の役職でありながら、大名と同等の扱いを受けていたなど、任期や給与面だけでなく、小国の国家元首と比される都知事と共通する部分が多い。

◆江戸時代にもあった「利権構造」

 町奉行は、北町奉行、南町奉行からなり、北町奉行所は現在の東京駅八重洲北口、南町奉行所は有楽町マリオン付近に置かれ、人口100万人を抱える世界最大の都市であった江戸の町の行政・司法・警察機能を隔月交代で担当した。奉行の下には与力と同心がおり、彼らが現在の都議会議員、都職員に近い存在だった。

 身分は奉行の方がはるかに高いのだが、与力と職務上の方針が異なった場合は、与力の意見が通ることが多かったという。それは数年ごとに交代する奉行に対して、与力が世襲職で実務に精通していたためで、与力にとって奉行は“お飾り”に過ぎず、また奉行といえども、代々に渡る与力の利権構造には手が出せなかった。

 江戸時代の官僚化した武家社会について詳しく書かれた「江戸の組織人」(山本博文著・新潮文庫)によると、上司であるはずの奉行は、部下の与力の歓心を買うために、今でいう“お中元”と“お歳暮”を欠かさなかったようで、多忙な時期や火事など特別な出動の場合は“特別手当”としてポケットマネーから弁当代までも出していた。その額は月125両(約2500万円)にも上ったという。お奉行様も気苦労が尽きなかったのだ。

 今回の都知事選は、舛添要一前知事の公私混同問題への追及の甘さ、高額なリオ五輪視察計画など、都議会の“なれ合い”体質へ都民の怒りが噴出した結果となったが、果たして小池氏は大ナタを振るうことができるのか。大岡越前のような名奉行は、与力や同心をうまく使いこなすことで実績を残せたが、振る舞いが横柄だったり、利権構造を改革しようとした奉行の中には、与力たちが言うことを聞かず、まったく働かなかったために短期間でクビになった者もいたという。都政改革を掲げる小池氏は、どちらの道をたどるのだろうか。

<文/中野龍 写真/Tomo.Yun >

【中野龍(なかの・りょう)】

1980年東京生まれ。日本大学文理学部史学科(日本近現代史専攻)卒。毎日新聞「キャンパる」学生記者、化学工業日報記者などを経て、フリーランス。

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:8/2(火) 9:10

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