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中村アン、モデルから女優への道を着々と 松嶋菜々子を支える『吉良奈津子』の好演

リアルサウンド 8/4(木) 11:54配信

 職場復帰を果たした女性の「仕事」と「家庭」をめぐる問題を、松嶋菜々子主演で描き出すドラマ『営業部長 吉良奈津子』。このドラマには、多くの「あるある」が登場する。「お仕事中すいません。お子さんの具合が悪いようです」など、保育園からの緊急の連絡。「子どもを放って仕事する意味ってあるのかしら」など、義母からのチクリとした嫌味。子育てをしながら働く女性にとっては、どこか身に覚えのあるような状況……すなわち「あるある」が、その随所に描き出されているのだ。しかし、その一方、広告代理店の敏腕クリエイターが産後に職場復帰するも、かつてのクリエイティブではなく有形無実の部署「営業開発部」の部長として配属されるなど、そもそもの前提からして、少々の「ないない」を含んでいるのもまた事実だろう。視聴者の共感という意味で「あるある」は大事だけれど、そればかりではドラマとしての面白味や物語の推進力に欠ける。ときには「ないない」の設定も必要だろう。というか、今季のドラマは「あり得ない」設定のドラマばかりではないか。よって、そのバランスこそが肝要となってくるのだが……まずは、先週の放送を振り返ってみることにしよう。

 「営業開発部」の部長に就任した奈津子(松嶋菜々子)は、常務(石丸幹二)から今月中に新規顧客を開拓することを言い渡されると同時に、部長としてのマネジメント能力を問われてしまう。理想の上司とは、どうあるべきなのか。思い悩む奈津子は、かつての部下であり、現在は会社イチ押しクリエイティブ・ディレクターとなっている高木(松田龍平)に相談するも、「(吉良さんは)まったく部下を信用してない上司でしたね」、「常に自分がいちばんだと思っていて、下に仕事を任せることがまったくできませんでした」と率直な感想を述べられてしまう。その発言に憤慨するも、部下のことを知るべく交流を図る奈津子だが、その多くは空回り。部下たちの心は逆に離れてしまう。そんな折り、奈津子は現在急成長中の化粧品会社「マイキュート」に接触、「東京コスメフェア」の施策協力を取り付けることに成功する。そして奈津子は、その担当を部内唯一の派遣社員である今西(中村アン)に任せることを宣言するのだった。

 誰よりも広告の仕事が好きでありながら、正社員でないことに引け目を感じてきた派遣社員「今西朋美」を、中村アンが好演していた。モデルとしてキャリアをスタートさせながら、近年は女優業へと進出。昨秋の月9ドラマ『5→9~私に恋したお坊さん~』にレギュラー出演して以降は、『家族のカタチ』、『お義父さんと呼ばせて』、『世界一難しい恋』と、立て続けに連続ドラマ出演を果たしてきた中村アン。当初は控え目でありながら徐々に自信をつけ、やがて積極的に前に出ていくようになる今回の「今西」役は、実際の彼女のキャリアからしても、まさにうってつけの役どころだったのではないだろうか。そんな今西の活躍もあって、奈津子率いる営業開発部は、次第に一致団結してゆく……と、ここまでは良いだろう。しかし、「東京コスメフェア」に参加する業界最大手の「リナージュ化粧品」は、自社の花形である「第一営業部」の顧客であり、当日の施策を高木が担当していることが発覚。かくして社内ライバル対決が勃発する……という展開は、いささか突飛ではある。実際、営業開発部の最古参である米田(板尾創路)は、営業の倫理に反する奈津子のやり方に違和を唱え、今回のプロジェクトから早々に離脱してしまう。

 その米田が、「これぞ営業というやり方を見せてやる!」と息巻くのが、第3話の展開となる模様だ。いずれにせよ、落ちこぼれ社員たちが、一念発起のもと、社内のエリートたちにひと泡吹かせるのは、サラリーマンものとしては定番の展開と言えるだろう。板尾創路、岡田義徳、DAIGO、高木渉、中村アン、足立梨花……ひと癖もふた癖もある部員たちに次々とスポットが当たってゆくであろう今後の展開も、「仕事」ドラマとしては期待できるし、実際観ていて面白い。けれども、それと並行して展開する奈津子の「家庭」の部分……冒頭に挙げた「あるある」の部分は、どうだろうか。これは初回から多くの視聴者が指摘していたことではあるけれど、伊藤歩演じるベビーシッター坂部深雪の挙動が、第2話においてもやはり相当謎めいていた。「東京コスメフェア」当日、息子の世話を任された彼女は、奈津子に息子の不調を報告するメールを送るも、続くメールで大事はなかったと告げ、にもかかわらず奈津子の夫である浩太郎(原田泰造)と連絡を取り、早急の帰宅を迫るのだった。浩太郎の脳裏に芽生えた一抹の不信感。彼はその日の就寝間際、奈津子にポツリと漏らすのだった。「働き方、考えたほうがいいんじゃないかな。子ども抱えて代理店の営業部長は、無理なんじゃないか?」。謎のベビーシッター深雪の目的とは、果たして何なのか。しかも、第3話では「夫に急接近する深雪」とある。これは一体どういうことなのか?

 ちなみに、部員たちの活躍によって、雑誌広告2000万の出稿の確約を得るなど、見事新規顧客を開拓した奈津子だが、その一方で、彼女たちの行動が大手「リナージュ化粧品」の不信を買い、秋のキャンペーン2億の出稿が取り辞めとなってしまうなど、さらなる窮地に立たされてしまう。実際、7.7%と早くも一桁となった視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)ともども、奈津子をめぐる状況は依然として厳しい。『営業部長 吉良奈津子』は、その劣勢を見事跳ね返すことができるのだろうか。物語の鍵を握るのは、「あるある」と「ないない」のバランス感。ベテラン脚本家、井上由紀子の手腕が問われるのは、いよいよこれからと言えそうだ。

麦倉正樹

最終更新:8/4(木) 11:54

リアルサウンド

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