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セミとアドラーに学ぶ「殻の破り方」

JBpress 8/4(木) 6:10配信

 いよいよ夏本番。都心のビルの谷間にも、セミの声が響き渡っています。ミーンミンミンとシャーシャーシャーとジージージーが入り混じったあの暑苦しい大合唱は、日本の夏の象徴です。

■ セミは、殻を破って生まれ変わる

 子供の頃に繰り返し読んだ昆虫図鑑には、「セミの幼虫は土の中で7年過ごす」と書いてありました。小学校の期間より長い間、地中にいるなんて、セミってすごいなあと素朴に感動したものです。

 ただ近年ではセミの飼育技術が向上し、実際の幼虫期間はもっと短いことが分かってきたそうです。それによると、ツクツクホウシは1~2年、ミンミンゼミやアブラゼミは2~4年。かなりスケールダウンした感じでちょっと残念ですが、それでも相当長い時間には違いありません。

 それほど長いこと地中で生きていた虫が、ある日、地上に這い出てきて、一夜にして姿を変える。成虫になった彼らは、大音響を発しては空を飛び回る、夏の主役です。

 生物学用語で「変態」と呼ばれるこのプロセスで、セミは文字通り、殻を破ります。幼虫の姿をした外殻を脱ぎ捨て、全く新しい姿へと生まれ変わるのです。

 「殻を破る」ことにおいて、セミは実に、見事な仕事をする。

 木の枝に残された抜け殻を眺めながら、私は時折、そんなことを考えます。

■ 安全な地下生活をスパッと手放す

 彼らはなぜ幼虫の期間を地中で暮らすのか。一言でいえば、地上より安全だからです。土の中では、敵といえばモグラぐらい。鳥やクモ、スズメバチといった強力な捕食者たちの目は届きません。もちろん夏休みの小学生に追い回される心配もない。

 幼虫の体は、土の中の生活に完全に適応しています。太い鎌状の前脚は土を掘るのに最適ですし、木の根から樹液を吸うために、長い口吻も備えています。

 つまり幼虫にとって、土の中の暮らしはかなり居心地のいいものだと思われます。地中の環境に適した「殻」をまとっている限り、その快適さは保障されている。そんな安寧な状況で、何年も暮らしてきたのです。

 それがある日、その快適さをスパッと手放して、地上という未知の世界へ踏み出してくるのです。

 人間には、これがなかなかできません。

 うーむ、セミは、すごい。

 「殻を破る」ことに関しては、人間よりセミの方がずっとうまいと私は思うのです。

■ 人間の「殻」は心の中にある

 人間においても「殻を破る」という言い方がしばしば使われます。ここでいう「殻」は、セミの幼虫がまとっているような物理的な殻ではなく、心の中にあります。自分の発想や行動を制限し、可能性を狭めてしまうような思考パターンといえばいいでしょうか。

 例えば、ちょっと内向的な若手社員Aさん。実務能力はきちんとしてるし、コミュニケーションも、実際に話してみればまあ普通にできる。本人さえその気になれば、もっと大きな仕事を担えるはずだと周囲は思っているのですが、肝心の本人は「いや、私なんてまだまだ」などといっていつも退いてしまう。そろそろ、殻を破ってほしいんだが・・・。

 こんなのが、典型的な「殻」といえるでしょう。

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最終更新:8/4(木) 10:15

JBpress

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