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小池百合子新都知事は、元祖・意識高い系女子バックパッカーだった!

HARBOR BUSINESS Online 8/4(木) 9:10配信

◆「みんなのしないことをしたい」

 キーワードは、“みんなのしないことをしたい”、それが都知事選で後出しジャンケン有利説を覆し、見事に大勝した小池百合子氏(以下敬称略)の原点であるようだ。

 それが存分に見て取れるのが、1982年に発行された本人の著書『振り袖、ピラミッドを登る』(講談社)である。本には1971年、19歳の秋にエジプトへ留学し5年間を過ごした体験が綴られている。

 なぜ、エジプトのカイロだったのか? その理由を小池はこう書いている。

「ありきたりの言葉を勉強するよりも、将来性のある言語を学びたい」

 小学生の頃から、石油の取引をしていた父から「1980年代はアラブが世界の中心だぞ」との助言があったという。

「アラビア語は勉強せずに出かけた。辞書はもちろんのこと、日本語によるアラビア語文法書など、どんな大書店に行ってもなかったからだ。」

「みんなのしないことをしたい。アメリカやイギリスへの留学はありきたりだし、今さら英語をやってダンゴレースに参戦したくないわ。」

「カイロに来て初めてピラミッドを見たときから、ようし、いっちょう、これに登ってやるぞと心に決めていた。」

◆「ピラミッドの頂上で振袖を着て、お茶をたててやろう」

 かくしてカイロ大学卒業年度の最終試験に合格した小池は、最後の「頂上」征服を敢行する。それは、ピラミッド登頂。このとき小池の中では、ピラミッドが宝の山のように輝き始め、“みんなのしないことをしたい魂”が炸裂するのである。

「どうせ登るなら日本人らしく登りたい、よし、頂上で着物を着て、登る太陽を背にしてお茶をたててやろう!」

 小池は即席でカメラマンと頂上で着る着物を詰めたかばんを運ぶポーターとして、日本人2名を雇う。ギャラは、“朝食をおごる”ことだったそうだ。

そして、すぐに朝日を背景に早朝5時から出発した……と、書けばかっこいいが、実のところは登頂禁止のピラミッド警備員がまだ寝ているうちに登ってしまおうという魂胆だったのだ。小池はもちろん、クフ王によって建造された第一ピラミッドにアタックする。

 本人の名誉の為に説明すると、当時はもちろん、その前からそしてその後しばらくも、ポリスに捕まった場合の賄賂だけ握りしめてピラミッドに登るのは、世界中から集まるバックパッカーにとってはごく自然な流れであった。まだ通常の観光客やハネムーナーでも登る者もいた緩い時代。また、どの人が本当の警官で、誰が便乗のニセ警官かも外国人にとっては判別がつかないという何ともエジプトらしい状況だったのだ。

◆当時から交渉上手の片鱗を感じさせる!? 警官との賄賂交渉

 しかし小池はピラミッドを20メートルほど登り始めたところで、早起きな警官に見つかり賄賂を請求される。そこで賄賂交渉をし、警官が要求する5ポンドを3ポンドに値切り、さらに登り続けた。

 まずやります!と誰よりも先に宣言し、自分流の流儀を貫きながらも冷静に自分に降りかかる火の粉を払い、状況判断しながら適宜対応して目標へまっしぐら。まさに今回の都知事選での小池の行動原理とかぶるものがある。この才能は天賦の才なのか?それともエジプトで学び磨かれたものなのか?

ちなみに3ポンドで約束した警官は、途中から小池のガードマンに変貌していたそうで……。この頃から人心掌握術に長けていたのかもしれない。

 果たして登頂に成功した小池は着物に着替え、着物を包んでいた風呂敷を毛氈(もうせん)にして、その上に茶器を置きピラミッド庵でお茶をたてた。抹茶が手に入らず番茶で代替えとしたが、それは格別な味だったとも記している。

◆都知事というピラミッドの登頂に成功

 ピラミッドの頂上で小池はエジプトで過ごした5年の月日を振り返りながら、このような誓いをたてる。

「私のピラミッドなんて、まだまだ小さいものだけど、これからもずんずん積み上げていかなくちゃ。また新しいピラミッドを捜してそれを目指そう……。」

 そして帰国後はTVの世界から政界へ飛び込み、現在に至るのである。

 ちなみに小池たちは、下りは登りと反対側に降りて警官に3ポンド払わず車でオサラバしたという。もはや完全に当時のバックパッカーの行動そのもので、小池らしいエピソードといえる。

『振り袖、ピラミッドを登る』は、小池百合子の素の人柄を知る上では良書だ。他にも、エジプトで過ごしたエピソードの数々が赤裸々に記されており、読み物としても十分に面白く興味深い。残念ながら現在は廃刊になっているが、往年のバックパッカーだけでなく、現役の若い旅人たちからも読んでみたいと言う声は少なからず上っている。文庫本か電子書籍でも、復刊が待たれるところだ。

〈文/向井通浩〉

250軒以上の安宿を網羅した国内最大のバックパッカー&ゲストハウス宿リンクサイト「ジャパン・バックパッカーズ・リンク」代表、ジャーナリスト。インバウンドとその周辺事情に精通している。

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:8/4(木) 12:11

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