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脆くも美しい、歪んだ少女たちの魂。 『少女外道』 (皆川博子 著)

本の話WEB 8/5(金) 12:00配信

忙しくても1分で名著に出会える『1分書評』をお届けします。
今日は門脇舞以さん。

 少女・久緒の一家が海辺に避暑に行った際の出来事であった。母が下男代わりにと同行させた植木職人の息子・葉次が、海で激しく泳いだのちに足を痙攣させ苦痛に身悶え、よろめいた拍子に鋭く突き出した岩の角で腿に裂傷を負ったのだ。刹那、久緒は己の内に沸き立つ新しい感覚にうろたえていた。……この感覚は決して他人に悟られてはならないと、本能が告げる。葉次の腿に巻かれた包帯に血が滲み広がる度、その歪みは明瞭なものとなり――。

 表題「少女外道」を含む7篇の短編集。作者独特の筆致を表す言葉は無限だ。流麗であり緻密、ヒヤリと生々しく、見惚れるほどにたおやかな……。鮮やかで幻想的だと思う者もいれば、湿り気があり仄暗いと感じる者もいるだろう。読者は決して予測のつかぬ結末に息を呑み、浅い溜息を漏らすほかない。

 戦争という時代に侵食された社会の下で、真綿で首を絞められているかのごとく沈んでいく少女たち。外された道で生き、抗い、あるいは死んでいく彼女らの魂は、脆く歪で、ひどく……美しい。

門脇 舞以(かどわき・まい)

2001年、声優デビュー。主なアニメの出演作に『Fate/stay night』『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』(イリヤスフィール・フォン・アインツベルン役)、『ストライクウィッチーズ』(サーニャ・V・リトヴャク役)などがある。読書好きとして知られ、また日々の子育てに奮闘する“ヲタママ”でもある。

文:門脇 舞以

最終更新:8/8(月) 18:15

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