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今夜放送『もののけ姫』、今こそ考えたい宮崎駿のメッセージ

リアルサウンド 8/5(金) 6:00配信

 スタジオ・ジブリの宮崎駿監督作品『もののけ姫』が本日21時よりノーカット版で放映される(「金曜ロードSHOW!」日本テレビ系列 )。1997年に公開された本作のテレビ放送は今回で9回目。興行収入193億円(歴代興行収入6位)を記録し、TV放送の度に高い視聴率を誇る本作はジブリの中でも屈指の存在だ。本作がいまなお人々を惹きつける理由は何なのか。映画評論家・小野寺系氏に話を聞いた。

「現在は『もののけ姫』が描くテーマが、より明確に受け入れられる時代になってきているように思います。利益追求の経済活動が深刻な事態を引き起こしてしまうという本作の構図は、公開当時よりも3・11、原発事故を経た現在の方が理解しやすいのではないでしょうか。バブル崩壊後、日本の経済状況の悪化から、なかなか明るい未来の見通しがきかないというのは現在まで継続する感覚ですが、アシタカ、サンをはじめとして登場人物の多くが社会から疎外された存在として描かれる切迫感というのは、より状況が深刻化している現在の若者の方がより共感を覚えるのでは。『もののけ姫』の時代設定は、戦国時代を含む室町時代後期と言われています。エボシ御前が指揮するタタラ場では製鉄や武器の製造を行っているわけですが、この利権をめぐり室町幕府と朝廷が背景で争っているという構図は、現在の軍需産業と政治的権力との密接な関係を連想させます。互いの主義主張を分かり合えないがために争いが起きてしまう状況も、現在の世界情勢から感じる不穏な空気と通ずるものがあるのではないでしょうか。『AKIRA』や『攻殻機動隊』など、公開当時には分かりづらい描写も、十年、二十年と経つことでより理解されるという場合があります。本作もそのような作品のひとつといえるかもしれません」

 『もののけ姫』はスタジオ・ジブリ作品の中でもターニングポイントの作品と言われている。

「『もののけ姫』は宮崎駿監督作品の中でもひとつの集大成的作品だと思います。『風の谷のナウシカ』から描いていた自然と人間というテーマがより複雑化され、漫画版の『ナウシカ』や『シュナの旅』の要素も含まれている。エボシ御前の造形も、理想のために自身が汚れる覚悟があるというのは漫画版で描かれていたナウシカのイメージと重なります。アニメーションの製作方法の面では、一部でデジタルを使用しながらも、昔ながらのセル画を使用したアニメーションとしては、これがスタジオ・ジブリとして最後の作品です。後日撤回となりましたが、本作で一時引退発言をしていたのも宮崎氏にとってやりきったという感触があったからでしょう」

 ジブリ作品の中でも屈指の人気を誇るのが本作のアシタカだ。

「アシタカが魅力的に感じる理由に、ある種、理想的な存在でありながら、共感できる存在でもあるという点が挙げられると思います。“曇り無き眼で見定め、決める”という言葉に象徴されるように、権力や状況に惑わされず自分の信念を貫く通す意志がある。現在の社会風潮のひとつとして、この人はこういう人だと安易にレッテル張りをする傾向があると思うのですが、アシタカはそういった決め付けをしない。サンたちが生きる自然の世界と人間の世界両方の共栄共存を求めている。そこが彼を単純なヒーロー像にとどめず、また双方の板挟みにあって苦悩し、いわれなき呪いに苦しめられる姿が、過酷な社会状況に生きる我々に共感をよぶのではないでしょうか」

 年齢を重ね、観る度に印象が変わるのがジブリ映画の魅力だ。公開から約20年が経ったいま、現在の社会情勢、自身の環境の変化を重ねながら今夜の放送を観ると、さらに学ぶべきことがあるかもしれない。

松下博夫

最終更新:8/5(金) 6:00

リアルサウンド

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