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リオ五輪、甲子園、イチローで押しやられても……地味な常連の世界で楽しむ、パ首位攻防戦

ベースボールチャンネル 8/5(金) 16:00配信

3000本安打達成と金メダル獲得が重なったら……

 先日、川崎市郊外の実家に帰ったら床に臥せっている父(86歳。お、ハム寿だ!)が僕を枕元へ呼ぶのだ。

「一朗……、一朗はどうした?」
 ちょっとショックだった。顔をのぞき込むようにして声をかけている。僕がわからないのだろうか。
「どうしたの? 父さん、一朗だよ」
「一朗……、一朗じゃなくてアメリカのイチローだ……。ヒットは打ったか?」

 父はマイアミ・マーリンズのイチローのメジャー通算3000本安打を心待ちにしていただけだった。ちなみに僕の本名も、マーリンズのイチローも漢字で書くと同じ「一朗」である。

 そうしたら横で聞いてた母(80歳)が「アメリカのイチローも、頑張って早く打たないとオリンピックに間に合わないよ……」と言い出した。いやいや、母さんイチローの偉業とリオ五輪は関係ないから。別に間に合わせようと思ってないから。

 と、珍しく小話でスタートしたファイターズコラムだが、実は母の発言は(意図せず)めっちゃマスコミ関係者っぽいんである。皆、本音ではかぶらないでほしいと思っている。せっかく大々的に盛り上がれる話題が、重なってしまうとお互いに打ち消し合うのだ。例えば3000本達成と金メダル獲得が重なったらスポーツ紙はどっちを1面にするのか? 盆と正月はいっぺんに来てはいけない。

週末は首位攻防戦

 で、何が言いたいかというと「ソフバンvs日ハム」の直接対決である。オールスター明け、三度目の週末決戦。空前の勝率で突っ走るソフトバンクを、ファイターズが必死に追いかける。今、パリーグで最も面白いカードだ。それが「イチローの3000本安打」と「リオ五輪」と「甲子園」にかぶってしまった。何だろうなぁ、このひっそりやってる感。密度の濃い名勝負が繰りひろげられても、どうせ両チームのファンしか見てない地味さ。

 だけど、この「東中野の雀荘」っぽい感じがプロ野球なのだ。オリンピック級の派手なスポーツイベントとぶつかると、その本質がわかる。能力の「最大瞬間風速」を競うオリンピックと比べると、こっちの業態は内向きだ。常連と打つ麻雀。先週の金土日、今週の金土日が(球場こそ違え)同じ「ソフバンvs日ハム」ということは、先発ローテーションのマッチアップも同じで、「その前と前回の対決を踏まえての今回」みたいなことになる。

 深掘りの世界なのだ。バッテリーと打者はずっと同じ顔ぶれで勝負する。何度もやるから「いつか大事な場面でカモるために(点差の離れた)今はエサを撒いておく」みたいなことが起きる

 僕はあるOB投手から「ニセのキラー」の話を聞いたことがある。その投手と相性のいい代打をねつ造(?)したらしいのだ。記者らにもわざと「顔を見るのもイヤだ」とコメントする。低めに放って、大ケガしない程度に打たせる。で、秋のビッグゲームで出てきてもらう。その打者には沈む球種をシーズンで一度も見せていない。のるかそるかの場面で「ニセのキラー」に死んでもらう。内野ゴロを打たせてゲッツーだ。

 だから、選手も観客も常連さんの世界なんだなぁ。常連度が高ければ高いほど奥行きがわかって面白い。直近のロッテ戦では「武田久vs福浦和也」の濃厚な戦いがあった。あれは泣けた。もうやってる双方も、見てる者も全員が常連さんの世界だ。あの数分間、野球は野球じゃなくなっていた。野球じゃなくて何なのかというと、たぶん近い概念は「ハグ」とか「暑中見舞い」とかそういうやつだ。

 まぁ、しばらくリオ五輪やなんかで、プロ野球はスポーツニュースの隅へ押しやられるだろう。それはそれでいい。次に水面に浮上したとき、意外とソフバンまでゲーム差詰まってないかなぁ。


えのきどいちろう

ベースボールチャンネル編集部

最終更新:8/5(金) 16:30

ベースボールチャンネル

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