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バンドじゃないもん!がついに掴み取った成功 豊洲PIT公演を機にグループの歴史を振り返る

リアルサウンド 8/5(金) 17:00配信

 豊洲の空にかかった虹をくぐって豊洲PITへたどりつくと、そこではたくさんの人々が建物を取り囲んでいた。それは、バンドじゃないもん!によるツアー『バンドじゃないもん!全国ツアー2016 ~てっぺん目指そうぜ!武者修行編~』のファイナル公演が豊洲PITで開催された2016年7月31日のことだ。

 この日のライブは、「エクストリームはっぴー」を掲げてきたバンドじゃないもん!が、活動における喜怒哀楽のすべてを笑顔のまま吸収して、完全にひとつ上のステージへとのぼったライブだった。

 バンドじゃないもん!にとっては、オールスタンディングの会場として豊洲PITは過去最大のキャパシティ。2016年1月から約30公演を行なってきた『バンドじゃないもん!全国ツアー2016 ~てっぺん目指そうぜ!武者修行編~』が最後にたどりついた場所だ。

 会場に入ると、花道が飛び出した凸型のステージをもんスター(バンドじゃないもん!のファンの総称)がぐるりと囲み、その両脇にリフトをしても良いゾーンが設置されていた。この日は、フロアをいくつかのゾーンにわけて、それぞれを温泉に見立てた、バーチャル温泉という趣向だった。

 開演と同時に、三味線の音色の鳴る楽曲が響き、メンバーカラーの6色のライトが回転。「OVERTURE」と映像が流される中、メンバーがひとりずつステージに登場した。

 1曲目の「キメマスター!」は、バンドじゃないもん!が2016年5月に2度目のメジャー・デビューをしたときのシングル。バンドじゃないもん!は、過去に1度メジャー・デビューしたもののインディーズとなり、現在の6人体制で活動を続けて、再びメジャー・デビューのチャンスをつかんだという経緯がある。

 「キメマスター!」では、鈴姫みさこがドラム、望月みゆがベース、甘夏ゆずがキーボードを演奏し、ドラムセットの台の上に七星ぐみがのぼる姿も印象的だった。全力での幕開けだ。

 続く「雪降る夜にキスして」では、「まわるまわるミラーボール」という歌詞に連動して、会場のミラーボールが輝きながら回転した。そのミラーボールの下で鈴姫みさこが叩くドラム・ソロは、早すぎるピークタイムだった。しかも、会場には5面ものモニターがあり、鈴姫みさこのドラム脇のカメラが彼女のドラム・プレイをも見せてくれたのだ。

 曲名の通り1980年代~1990年代のレイヴ・シーンを連想させる「RAVE RAVE RAVE」では、モニターがVJに早変わり。メンバーが扇を振り回す中、スモークが吹きあがった。

 「パヒパヒ」から「タカトコタン-Forever-」への流れは、いわゆる「暴れ曲」続き。「タカトコタン-Forever-」を作詞作曲したのは、BABYMETALへも楽曲提供しているゆよゆっぺだ。「タカトコタン-Forever-」では、ベースを抱えたままヘッドバンギングをする望月みゆの姿も5面のモニターが映し出していた。

 その「タカトコタン-Forever-」が終わってもリズムが止まらずに鳴り続け、「ツナガル!カナデル!MUSIC」へ。バンドじゃないもん!が現在の6人体制になって始めてリリースしたシングルだ。バンドじゃないもん!の最初期から楽曲を提供し続けるミナミトモヤが作曲した楽曲で、彼によるメンバーの歌のパート割りも、それぞれの声質やキャラクターを押さえた完璧なものだ。

 その後、突然始まったショートコントは、バンドじゃないもん!が鈴姫みさこ(当時の表記は『みさこ』)とかっちゃん(金子沙織)の2人体制だった時代から続いている「伝統芸」だ。しかも、この日はなんと約20分に及び、もはや「ショート」ではなく「コント」そのものだった。「どこに着地するんだろう……」と見ながら不安になる気持ちも含めて、バンドじゃないもん!らしいコントだった。

 以降は、グループ内ユニット3連発。鈴姫みさこと甘夏ゆずによる「コットンラビッツ」は、アメリカン・ロックな「ヒーローズ」を披露した。この楽曲は、作詞が鈴姫みさこ(作詞は『みさこ』名義)、作曲が甘夏ゆず。マルチプレイヤーである甘夏ゆずのギターのうまさにも驚いた。

 恋汐りんごと望月みゆによる「Chou Chou Cream」は「アイスクリームになりたいの▽」(▽の正式は表記はハートマーク)を歌った。このキャッチーなテクノポップは、作詞作曲編曲をPandaBoYが担当している。

 七星ぐみと天照大桃子による「ブルーツインズ」が歌ったのは、アーバンギャルドの松永天馬が作詞作曲し、アーバンギャルドが編曲した「シンデレラブルース」。アンニュイさが魅力的なテクノポップだ。天照大桃子はヴォーカルの強力さを武器にバンドじゃないもん!に加入したが、彼女とともに歌う七星ぐみのヴォーカルもうまくなったことを、この日のライブで感じていた。

 その後、メンバーが道行く人に突撃取材するという設定の映像が流されたが、これもバンドじゃないもん!らしい茶番感があった。そして、インタビューに出てきた「プリン」「弾む」「リズム」という別々の人の発言をカットアップしてつなげる力技で、次の曲紹介をしてしまった。「プリズム☆リズム」である。

 そして、この日のハイライトは突然やってきた。ピアノの伴奏でしっとりと始まる新しいアレンジの「歌うMUSIC」だ。

 私が「歌うMUSIC」を初めてライブで見たのは、バンドじゃないもん!がでんぱ組.incらと原宿アストロホールに出演した2011年5月7日のことだ。もう5年以上前のことになる。その日は、それまでメンバーであった劔樹人とミナミトモヤがステージ上に現れなくなり、みさことかっちゃんによるツインドラム編成となった最初のライブでもあった。

 「歌うMUSIC」は、東日本大震災後にミナミトモヤによって作詞作曲された楽曲だ。バンドじゃないもん!が、混乱している当時の社会で生きる人々へ贈ったメッセージ・ソングである。初めて聴いたときから、「歌うMUSIC」は激しく私の胸に突き刺さったことを思い出す。「歌うMUSIC」こそが、私を5年後もバンドじゃないもん!の現場に居させたと言っても過言ではないし、バンドじゃないもん!最大の名曲だと思っている。2011年5月7日の「歌うMUSIC」のライブ映像は残念ながらYouTubeから消えてしまったが、私はその映像をiPhoneに入れて今も持ち歩いているほどなのだ。

 今回のツアー「バンドじゃないもん!全国ツアー2016 ~てっぺん目指そうぜ!武者修行編~」で、バンドじゃないもん!が「歌うMUSIC」を披露していることは友人からも聞いていた。熊本県出身の望月みゆが、2016年4月14日以降の熊本地震に際して、Twitterで現地に向けた情報を発信したり、あるいは現地からの情報を発信したりしていたことも思い出す。

 そして、この日の会場である豊洲PITは、一般社団法人チームスマイルが東日本大震災の被災地復興支援活動を継続するために開設した会場なのだ。「PIT」とは「Power Into Tohoku!」の略なのである。ツアーファイナルの豊洲PITでバンドじゃないもん!が「歌うMUSIC」を歌ったことは、言葉こそなかったものの強いメッセージとして受け止めた。気づくと、私のメガネはどこかに吹き飛んでいた。

 「歌うMUSIC」と同じくバンドじゃないもん!の最初期から歌われてきた「ショコラ・ラブ」は、バンドじゃないもん!のライブの定番曲。前述の「プリズム☆リズム」と同じく大場康司が作曲した楽曲だ。

 「気持ちだけ参加します。」は、沖井礼二(TWEEDEES/ex. Cymbals)が作曲した楽曲。2016年屈指のアイドルポップスだ。作詞は沖井礼二とみさこの共作で、「慢性 五月病」の感覚を描いた歌詞も素晴らしい。「エクストリームはっぴー」にとどまらない心情をバンドじゃないもん!が歌っているのだ。バンドじゃないもん!が喜怒哀楽を飲み込んで、確実にひとつステージを上げた楽曲が「気持ちだけ参加します。」なのだ。

 終盤は「White Youth」「ヒラヒラ」「NaMiDa」と続いた。本編ラストの「NaMiDa」では、メンバーがファンに歌うようにうながし、会場に大合唱が響いた。

 もんスターが素晴らしいのは、メンバーがステージを去ると、間髪を入れずにアンコールを叫びだすところだ。それを受けて、ツアーで行った全国各地での写真がモニターに映し出されていった。

 アンコールは、8月24日に発売されるニュー・シングル「夏のOh!バイブス」で始まった。この楽曲のジャケットやMVで着ている水着姿でメンバーが登場したので、フロアが一気に沸き立った。私の近くにいた若者たちが前に突っ込んで行ったほどだ。そして、「夏のOh!バイブス」では銀テープが一気に噴出された。

 「夏のOh!バイブス」は、ORANGE RANGEのNAOTOがプロデュースし、やはりORANGE RANGEのHIROKIが作詞した楽曲。言うまでもないが、この「夏のOh!バイブス」のジャケットは、ザ・ビーチ・ボーイズの1963年のアルバム「サーファー・ガール」のオマージュだ。

 「君の笑顔で世界がやばい」が終わると、もんスターはやはり間髪入れずにアンコールを叫び始めた。ダブルアンコールは、メンバーからもんスターへの感謝の言葉で始まった。

 このときの天照大桃子の「2年前は6人で200人キャパの会場を必死に埋めていた」という主旨の発言で思い出したのだが、6人体制になったバンドじゃないもん!が新宿MARZでワンマンライブをしたのは2014年7月14日。まだ2年しか経っていないのだ。鈴姫みさこは、「アイドルになってとりあえず進んでみたら仲間が増えた。この6人になって、どこまででも行けるぞと思った」という主旨の発言をしていたが、それが具現化したのがこの日の光景だった。3000人キャパの豊洲PITを埋めてしまったのだから。

 最後の最後は「HAPPY TOUR」。アカシックの奥脇達也が作曲、MOSAIC.WAVが編曲した楽曲だ。そして、花びらの形の紙吹雪が舞ってきた。この日は、バンドじゃないもん!のワンマンライブの中でも、もっとも演出が凝っていたライブだった。終演後にエンディングロールまで流れていたほどだ。

 この日、私が会場に入るときに、バンドじゃないもん!が所属するパーフェクトミュージックの代表取締役である成田光春から声をかけられた。彼は「本屋ナイトからここまで来ました」と笑った。2012年9月8日に吉祥寺CLUB SEATAで開催された『本屋ナイト』にバンドじゃないもん!が出演したとき、チェキの値段すら決まってなかったことを思い出す。チェキの列に並ぼうとしたら、成田光春に「いくらがいいと思いますか?」と聞かれたような、牧歌的な時代だったのだ。あれからもう4年の歳月が流れていた。

 そして、この日の前夜の天照大桃子のツイートも印象的だった。「2016年の好きなところは、やめなかった人達が続々と上がってるところ! 継続は力なりなんて言うけど、やめないことって今の時代すごい大変だし、決して正義でもない」。そうツイートした彼女自身が、2014年の加入から2年、バンドじゃないもん!をやめることなく、上にあがったのだ。あのときの天照大桃子と甘夏ゆずの加入は、それまでのメンバーにも大きな刺激を与えたであろうし、そうした切磋琢磨によってメンバーが伸び続けてきた面も確実にあるのだろう。

 バンドじゃないもん!はこの豊洲PITに向けて、新宿MARZから豊洲PITまでもんスターと歩く『バンもんGO』を7月23日に開催したり、連日ツイキャスを配信したりと、泥臭いまでに動員のための努力を続け、そして成功をつかんだ。それは、この5年間バンドじゃないもん!を続けてきた鈴姫みさこの揺るぎない信念が生み出した成功でもあったし、メンバーたちがバンドじゃないもん!をめぐる状況に臆することなく活動してきたからこそつかめた成功でもあった。

 大団円を迎えたような気持ちになるのはまだまだ早い。けれど、豊洲PITでのワンマンの成功の余韻をしばらくは味わっていたくなるようなライブだった。次はバンドじゃないもん!がどんな光景を見せてくれるのだろうか、と楽しみにしながら。

宗像明将

最終更新:8/5(金) 17:00

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