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人工知能時代こそ光る、松下幸之助と吉田松陰

JBpress 8/5(金) 6:00配信

 「うちの連中は全然あかん。いつまで経っても育ちませんわ」

 社外の人と雑談する時は、自分の部下のことを卑下してこんなふうに冗談半分で話している人を見ることも少なくない。

 そんななか、ある不動産業を営む社長は、初めてお会いした際に会社の部下の話になり、部下のことをこのように話されていた。

 「うちの部下はほんと優秀なんです。会社では自分はほとんど何もやってなくて、彼らが仕事をよくやってくれるので、感謝感謝で頭が上がらないんです。うちの会社は彼らのおかげでここまでやってこれてるんです」

■ ピグマリオン効果で業績向上

 確かに部下の人たちが優秀なのだろう。しかし、そのような優秀な人たちがこの社長についてきているということは、この社長はそれだけの人望を備えていると言える。

 あるいは、元々は優秀ではなかった部下たちを優秀と言えるほどに成長させてきたのかもしれない。いずれにしろ初対面の人間の前でも、部下のことを褒め、部下に感謝する姿勢に私は強い好感を覚えた。

 以来、この社長とは長いお付き合いをさせていただいている。今ではこの社長は初めてお会いした頃とは比較にならないほどに大きく会社を成長させている。

 この社長が部下を褒める言葉を聞いた時、私はこんなことを思った。

 部下が頑張ってくれるから部下のことを良く思えるのか。部下のことを良く思っているから部下が頑張るようになったのか。

 おそらく両方ともが正解であり、両方が相乗効果を発揮して会社の成長をもたらしたのではないかと思う。

 こんなふうに思ったのは人間の心理には「ピグマリオン効果」という効果が働くからである。

 これは1964年に米国の教育心理学者ロバート・ローゼンタール氏によって提唱されたもので、人間は期待された通りの成果を出す傾向があるということを意味する言葉である。

 この言葉の基となったこんな実験がある。

 成績の優秀な生徒を集めたクラスと成績の悪い生徒を集めたクラスを作り、それぞれのクラスの担任に逆のことを言ってクラスを担当させる。

 つまり、成績の優秀な生徒を集めたクラスの担任には、このクラスの生徒は成績が悪いと伝える。一方、成績の悪い生徒を集めたクラスの担任には、このクラスの生徒は成績優秀だと伝える。

 その結果、もともと成績の良かった生徒のクラスの成績は下がり、もともと成績の悪かった生徒のクラスの成績は上がったという。

■ 松下幸之助とピグマリオン効果

 このピグマリオン効果をビジネスの世界にあてはめると、リーダーとなる者がその組織をどのように思っているかによって、その組織のパフォーマンスは変わるということになる。

 「うちの部下は出来が悪いので、これ以上の成長を望むことは難しいだろう」と心のどこかで思っていると、部下のパフォーマンスは実際にそういう結果に終わってしまう。

 逆に、「うちの部下は短所もあるが、光る長所もあるので、きっと成長してくれる」と心から信じることができれば、部下のパフォーマンスはそういう結果を出すようになる。

 このピグマリオン効果の例として、松下幸之助氏のこんな話がある。

 幸之助氏は、新人であれ、ベテラン社員であれ、誰に対しても、「この人は人間としての無限の可能性を持っている、無限の価値を持っている」という考え方で接していたという。

 そのため、話をしても、叱っていても、部下の可能性を高く評価しているという印象を部下に与えていた。

 部下としては叱られながらも、どこか褒められているような気持ちになり、叱られてなお感動したという。そのため、幸之助氏から叱られた部下は叱られた話を自慢話のように話す。

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最終更新:8/5(金) 6:00

JBpress

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