ここから本文です

杜の都・仙台で激しい競争に晒される「旧型イオン大型店」は生き残れるか?

HARBOR BUSINESS Online 8/5(金) 9:10配信

 前回の記事では、仙台市各地の再開発計画と震災復興需要を取り込むかたちで進みつつある、仙台市郊外~近郊地域における「復興・防災型イオン」の出店計画を通して「商業のイオン化」の様子を紹介した。

 しかし、杜の都・仙台における「商業のイオン化」は、郊外~近郊地域のみに留まらない。

 そこで、今回は郊外地域との競争に加えて、中心部どうしの熾烈な競争に晒されつつも「イオン流の店舗改革」で攻勢をかけ、生き残りを図ろうとしている仙台市中心部の「旧型イオン大型店」の奮闘を紹介する。

◆仙台中心部の「顔」だったダイエー旗艦店を引き継いだ「イオン仙台店」

 前回の記事でも紹介した、近いうちの着工が予定されている東北大学雨宮キャンパス跡地(青葉区)以外にも、仙台市中心部には「商店街立地」「高層型店舗」の、いわば「旧型」とも言うべきイオングループの老舗大型店が2店舗ある。

 そのうちの1つが、1975年9月に開業した「ダイエー仙台店」を引き継ぐかたちで今年3月に開業したばかりの総合スーパー「イオン仙台店」だ。

 イオン仙台店は、仙台市内で最も規模の大きな商店街である「クリスロード」に立地。

 売場面積は20,212㎡、開業当時は東北地方のスーパーマーケットで最も規模が大きく、1980年代から1990年代前半にかけては全国の総合スーパーの中でもトップクラスの売り上げを誇った優良店で、仙台市中心部における「顔」の1つでもあった。

 ダイエーが経営再建に伴い店舗の大量閉鎖を行った2005年以降、ダイエー仙台店は東北地方唯一のダイエー店舗として営業していたが、2016年3月に全国のダイエー旗艦店級店舗がイオンに経営譲渡されることに伴い、ダイエーとしての41年の歴史に幕を下ろした。

◆従来顧客の流出を防ぎ新規顧客を獲得できるか?

 今年の3月12日より「イオン仙台店」として生まれ変わった同店では、食品売場を中心に地元野菜の売場の新設や鮮魚コーナーの充実などといった店舗改装が行われており、同時期にイオンに転換した他のダイエー店舗と同様に、今後も少しずつ「イオン流」の売場への転換が進むものと考えられる。

 かつてのダイエー仙台店は、阪神淡路大震災での教訓を生かすかたちで、東日本大震災の際に最も早く営業を再開した大型スーパーとして知られており、市民にとっても頼りにされてきた店舗であった。永年親しまれてきたダイエー仙台店が「イオン化」されることによって、従来の顧客が離れることなく、また、新たな顧客を獲得していくことができるかどうかは、過酷な競争に晒されている中心商店街の運命をも握っているといっても過言ではない。

◆駅前で台頭する「ライバル」

 杜の都の中心商店街の顔が「イオン化」してから約4か月後。仙台七夕まつりに向けて街が動き始めつつあった7月1日の朝、JR仙台駅前には長蛇の列ができていた。

 行列の先にあるのは、この日開業を迎えたファッションビル「仙台パルコ2」。この仙台パルコ2は、2008年に開業した「仙台パルコ」の新館で、JR仙台駅からペデストリアンデッキで直結した場所にある好立地に出店。従来のパルコよりも「大人世代」をターゲットとしており、飲食店街やシネマコンプレックスも入居している。

 JR仙台駅前では、今年3月に駅ビル「エスパル仙台」(1978年開業)の新館となる「エスパル仙台東館」も開業したばかり。エスパル仙台東館は東北初出店となる「東急ハンズ」を核店舗とし、そのほかにも多くのアパレルショップや飲食店が出店。駅ビルということもあり、仙台市周辺のみならず東北各地から多くの客が詰めかけている。

 仙台駅周辺では近い将来「ヨドバシカメラ」が新たなビルを建設、現在の店舗を増床移転させる計画もあり、駅前エリアでの相次ぐ都市型商業施設の開業は、激化する仙台市の商戦を象徴する出来事であった。

◆老朽化した「イオン系ファッションビル」

 こういった仙台駅前での相次ぐファッションビルの開業により大きな影響を受けると考えられる店舗が、仙台駅から徒歩10分ほど離れた仙台市のもう1つの中心商業地・中心商店街エリアにある大型ファッションビル「イオン仙台フォーラス」だ。

「イオン仙台フォーラス」は、1975年5月に開業した「ジャスコ仙台店」を1984年にファッションビルに改装した店舗で、仙台市の中心商店街の1つである「一番町商店街」に立地する。売場面積は14,455㎡。

 イオンフォーラスとしては唯一100万都市に立地しており、フォーラスの「旗艦店」ではあるものの、ファッションビルとしては老朽化が否めず、東日本大震災の際には店舗が一部損傷。さらに、有力テナントが駅前のパルコに移転するなど若干苦戦を強いられつつあったものの、近年は東北で唯一となるゴシックロリータの大型専門ショップ導入や、屋上ビアガーデンの開始、人気アニメ「ラブライブ!」とのコラボ店舗を期間限定で開設するなど、駅前のファッションビルとは一線を画した経営戦略で、幅広い世代から一定の支持を集めている。

 実は、イオンフォーラスの運営会社は今年3月にダイエー系ファッションビル「オーパ」と経営統合したばかり。

 オーパは関西エリアで絶大な人気を誇るファッションビルで、今後は都市部に強い「オーパ流」と、ショッピングセンター経営で培った「イオン流」の運営手法が融合するかたちでの、新たな店舗活性化策や個性的な新規テナントの導入を行い、仙台駅前の新しい商業施設に負けないような魅力を生み出すことで固定客となる「フォーラスファン」を増やしていくことができるかが大きな課題となろう。

◆駅前ライバル店とイオン新店との板挟み

 仙台市中心部の人の流れが仙台駅前エリアに向きつつあるなか、先述の総合スーパー「イオン仙台店」、そしてファッションビル「イオン仙台フォーラス」は、大手百貨店の「仙台三越」や地場百貨店「藤崎」などとともに中心商店街エリアを牽引する存在として、今後の「イオン流」(もしくはオーパ流)の店舗活性化に大きな期待が寄せられている。

 こうしたなかでの、中心商店街エリアから徒歩圏にある東北大学雨宮キャンパス跡地でのイオン新店計画は、中心商店街の旧型イオン2店との自社競合を生み出すことになるうえ、中心商店街全体にも非常に大きな影響を及ぼすことは間違いない。

 法規制強化などにより郊外大型店の出店が難しくなるなかで、仙台市では再開発地域における特例や開発者側の思惑、震災復興需要を追い風にする形で、それぞれ異なった業態や開発手段で3つの「復興・防災型イオン」を出店させようとしているイオングループ。

 流石は小売業の雄と讃えたくなるようなしたたかさも垣間見えるなか、3つの新たなイオン大型店に取り囲まれつつ、中心部どうしでの熾烈な戦いに巻き込まれている「杜の都の商店街の顔」ともいうべき2つの旧型イオン大型店の処遇についても大いに注目されている。

<取材・文・撮影/都市商業研究所>

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

※都商研ニュースでは、今回の記事のほかにも下記のような記事を掲載中

・西武百貨店、筑波西武・八尾西武を閉店へ-百貨店リストラに突き進むセブンアイ

・JR尾道駅、建替へ。築125年の木造駅舎

・イオン「ウエルマート」全店舗、マックスバリュへの転換完了

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:8/5(金) 9:10

HARBOR BUSINESS Online

なぜ今? 首相主導の働き方改革