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ワタミ、給与水準のごまかしに見る抜け出せない「ブラック企業」体質

HARBOR BUSINESS Online 8/5(金) 16:20配信

 6月27日、居酒屋・外食チェーンなどを運営するワタミが、ある新聞広告を大々的に打ち出した。そこに「私たちワタミは、一連のブラック企業批判に対して、その理由と要因にしっかりと向き合い、働き方や社会との関わり方をはじめアイデンティティーを聖域なく見直しました」という一文がある。

⇒【資料】ワタミ平均年間給与

 昨年末、従業員の過労自殺を巡って、遺族と争っていた裁判が和解に至ったワタミ。渡邉美樹前代表取締役が謝罪するなど、今やすっかり「ブラック企業」の代名詞になっている。そんな同社は、前期の広告の通り、生まれ変わることができるのか。数字を読み解く事で、その可能性に迫りたい。

◆危機水準から立ち直りつつあるワタミ

 まず、ワタミの総資産に占める負債以外の割合を示す自己資本比率から見ていきたい。

 自己資本比率は危険水準に達していた昨年の7%台から40%弱へと、急速に回復している。その理由は、昨年12月に外食と並ぶ収益の柱となっていた介護事業を、今年3月に環境事業の一部であるメガ・ソーラー事業を、それぞれ売却し、負債を一気に減らしたためだ。

 続いて、昨年度のセグメント別の売上高と利益はどうなっているのか。

 外食と、新規事業である環境や農業の分野が赤字を出すなか、宅食以上に利益を上げていたのが介護事業だ。

 入居者の死亡が相次ぎ、居酒屋同様の人手不足が指摘されるなどブラック化が著しい介護事業だが、売上高・利益ともに苦境のワタミを支えていたのだ。

 その介護事業と、以前からの投資が実って少額ながらも利益を出していた環境事業の一部の売却によって、ワタミは差し引き90億円以上のキャッシュを増やした。

◆依然として行き詰まる外食事業

 これで当面の資金繰りには困らず、じっくり腰を据えて会社の再建に取り組めるという見方もできる。しかし、そもそもワタミは外食事業での出店・売上増の行き詰まり、ブランドイメージの悪化の果てに、介護事業などに経営を多角化したのだ。

 それなのに赤字事業に一本化してしまった。当然、「和民」「坐・和民」などの本業を立て直せなければ会社の存続そのものが危ぶまれる。

 図を見れば明らかなように、たった2年あまりで全体の3割に及ぶ200店舗弱を閉店。本年度に入っても店舗数は依然として減り続けている。既存店の売上も前年比でプラスになったのは4月だけだ。そんな崖っぷちの状態でワタミは新聞広告を出したのだ。

 ワタミの居酒屋が落ち込んでいる最大の要因は、同居酒屋が伸びていたデフレ時代が終わったことだ。事実、従業員にしっかりと給料を還元しながら、味やサービスの面でも客に訴求できる「鳥貴族」や「塚田農場」といった外食チェーンは順調に伸びている。

 さらに、そんなワタミは従業員の平均年収もどんどん落ち込んでいる。有価証券報告書によれば、’11年度には560万円もあった平均年収が、昨年度は481万円、本年度は356万円という水準まで落ち込んでいる。

 昨年度までの給与水準は、居酒屋業界ではかなりの高額で、同じく「ブラック企業大賞」にノミネートされた「大庄」の389万円、高価格路線の「塚田農場」の368万円をも上回っていた。

「日本一の、ホワイト企業を作ろう」というメッセージを打ち出しはっきりとブラック企業対策を意識している鳥貴族でさえ491万円で、昨年度までのワタミと同水準だった。

◆高給与に隠されたカラクリ

 しかし、これにはカラクリがある。ワタミの有価証券報告書に記載されている平均給与には、グループ本体の社員しか記載せず、連結を含まなかったのだ。

 昨年度まででワタミグループ全体の従業員数は6000人を超えていたが、明かされているのは本体の約100人の給与のみだ。今年度、介護事業の売却などもあり、グループ全体の従業員は3500人ほどにまで減った。

 しかし、逆にグループ本体の社員数が1778人にまで膨らんだ。すると、そこで算出された平均給与は356万円と、これまでのどの会社よりも低い水準だ。他社はほとんどの社員が本体におり、ほぼ正確な給与水準を明かしているが、ワタミは残り1700人の給与をまだ計上していない。それを含めれば、さらに給与水準は下がるかもしれない。

 しかも、ワタミの外食事業の従業員数推移をみると、4年間で1624人から966人と、ほぼ6割減している。人員削減も容赦なく進められているのだ。

 売上自体は4年前の約7割ほどの水準だから、売上減以上のペースで人員が減らされていることがわかる。業界内屈指の低水準で従業員を雇用し、非情なリストラを進めるワタミ。

 一連のブラック企業批判に向き合うには、まず今回の売却で得た資金を従業員に還元することから始めるべきではないだろうか。

<文/大熊将八>

おおくましょうはち○瀧本哲史ゼミ出身。現役東大生にして、東大・京大でベストセラーの企業分析小説『進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者。twitterアカウントは@showyeahok

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最終更新:8/5(金) 16:20

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