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乃木坂46、『裸足でSummer』で見せた変化ーー坂道シリーズと“夏曲”の動向から分析

リアルサウンド 8/6(土) 17:01配信

【参考:2016年7月25日~2016年7月31日のCDシングル週間ランキング(2016年8月8日付)(ORICON STYLE)】(http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/2016-08-08/)

 今週のシングルランキングは、1位に乃木坂46『裸足でSummer』、2位にジャニーズWEST『人生は素晴らしい』、3位にこぶしファクトリー『サンバ!こぶしジャネイロ/バッチ来い青春!/オラはにんきもの』という並びとなった。

 乃木坂46『裸足でSummer』の初週売り上げは72.8万枚。グループ最高のセールスを記録した前作シングル『ハルジオンの咲く頃』の75.0万枚には及ばなかったものの、盤石の人気を証明する結果と言える。

 とは言え、数字だけ見れば安泰かもしれないが、グループを巡る状況は動いている。その象徴となるような曲が、3月にリリースされた前作シングル『ハルジオンの咲く頃』から数カ月のうちに生まれている。今回の記事では、それを踏まえて「裸足でSummer」について分析していこうと思う。

 まず最も大きなターニングポイントは、4月6日にリリースされた欅坂46のデビュー曲「サイレントマジョリティー」だろう。まさに鮮烈な登場だった。「坂道シリーズ」として打ち出された後発のグループは、楽曲の力で、一発でわかるほど乃木坂46との差別化を打ち出した。社会的なメッセージを込めた歌詞とアコースティック・ギターと疾走感ある四つ打ちのビートを配した、緊迫感とポップネスを絶妙に併せ持つ曲調。それは大きく受け入れられ、工事中の渋谷駅で撮影したミュージックビデオはYouTubeで2200万回を超える破格の再生回数(8月6日現在)を記録している。

 欅坂46が8月にリリースする2ndシングルの表題曲「世界には愛しかない」もその路線を強力に推し進めている。Aメロにポエトリー・リーディングを導入した、かなりエッジの強い楽曲になっている。

 一方、乃木坂46は5月に2ndアルバム『それぞれの椅子』をリリースした。そのリード曲となった「きっかけ」もグループにとって大きな意味を持つ一曲になっている。「決心のきっかけは理屈ではなくて いつだってこの胸の衝動から始まる」「生きるとは選択肢 たった一つを選ぶこと」と歌うこの曲。ストレートなメッセージ性を持った歌詞とそれをポップに聴かせるメロディが評判を集め、人気曲となった。Mr.Childrenの桜井和寿が絶賛し、寺岡呼人が主宰するライブイベントでカバーを披露したことも話題を呼んだ。

 そういう、シリアスなテイストを持った曲が評判を集めてきた「坂道シリーズ」のここ数カ月の動きを横軸、そして2013年から「ガールズルール」「夏のFree&Easy」「太陽ノック」と毎年この季節にリリースしてきた乃木坂46の“夏曲”の変遷を縦軸と考えると、なかなか興味深いポイントに、この「裸足でSummer」はある。

 まず「ガールズルール」「夏のFree&Easy」「太陽ノック」と並べて聴くと、乃木坂46が“夏曲”に統一したサウンドのテイストを持たせているのがわかる。特徴はディストーション・ギターとアップテンポな8ビート。この組み合わせによって開放感や爽やかさを演出する。オーセンティックなロックのイメージを流用する手法だ。

 「裸足でSummer」にもそのテイストは踏襲されている。AメロやBメロではディストーション・ギターのストロークが存在感を放ち、サビでもバックを支えている。ただし、その一方で、シンセやアコースティック・ギターの音色が上手く取り入れられているので、たとえばカーリー・レイ・ジェプセンあたりのようなEDM以降のダンス・ポップにも通じる仕上がりとなっている。

(ちなみに。当サイトに掲載されたインタビュー(http://realsound.jp/2016/07/post-8511_2.html)では「4つのコードをループさせて進行していく、クラブミュージック的な要素が強い」と指摘されているが、実際のところこの曲ではコードをループさせているのはAメロとBメロ前半だけで、サビではかなりの数のコードとダイナミックな展開を用いている。これはポップスとしての作曲技法であり、クラブミュージック的な要素はかなり薄いと言っていいはずだ)

 一方、歌詞の描写もかなり興味深い。「近くにいつも 大勢いるよ 男友達 その中の一人が僕だ」と、男性視点の歌であることをかなり明確に表している。裸足になって奔放に駆け出す「君」と、それに振り回されたり恋心を抱きつつも「今の距離感 心地いい」と気持ちを隠している「僕」の関係性を描いている。

 「夏のFree&Easy」「太陽ノック」など、乃木坂46の“夏曲”はこれまで「開放的な季節と臆病な自分のジレンマ」を曲のモチーフにしてきたわけだが、一方で「ガールズルール」のように男子禁制の女子校イメージも打ち出してきた。そう考えると、この曲に登場するような「近くにいつも男友達が大勢いて、それをいいように振り回す女の子」という像はかなり新鮮だ。「いつもの夏と違うんだ」という歌い出しも印象的である。

 「サイレントマジョリティ」で欅坂46に「反抗期」的なシリアス路線を歩ませる一方、「きっかけ」と『それぞれの椅子』以降の乃木坂46は、「女優的」というか、より大人の女性としての魅力を開花させるような楽曲を歌っていくようになるのではないだろうか。

 そんな予感もする。

柴 那典

最終更新:8/6(土) 17:01

リアルサウンド