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映画『ハイ・ライズ』:高層マンションで繰り広げられる階級闘争を描くSFファンタジー

ローリングストーン日本版 8/6(土) 10:00配信

巨匠J・G・バラードのカルトSF小説を映画化した『ハイ・ライズ』で、トム・ヒドルストンは最上階への道を閉ざす。

【予告編はこちら】映画『ハイ・ライズ』:高層マンションで繰り広げられる階級闘争を描くSFファンタジー

トム・ヒドルストンは、見るものを惹きつけ、その注目に報いるような俳優だ。8月16日からAmazonプライム・ビデオで放映されるミニシリーズの犯罪サスペンス『ナイト・マネージャー』に関する情報をチェックしてみよう。あるいは、1975年にJ・G・バラードが出版した科学技術と人間の狂気を描いた小説を、ベン・ウィートリー監督が催眠術にかかったような錯乱したテイクで映画化した『ハイ・ライズ』で、予想もしなかった異常事態に挑むヒドルストンの姿を見てみよう。それは重々しい話に思える、時にはものすごく。だが、ウィートリー監督と彼の妻で脚本家のエイミー・ジャンプは、人の痛い所を突き、あるいはあなたを出口へと駆け出させる大胆なアプローチと共に、テクノロジーの時代の階級闘争を寓話的に描いたバラードの物語に活力を吹き込んでいる。

ヒドルストンが演じるのは、医師のロバート・ラング博士だ。まず私たちは、かつて一流の生理学者だった彼が、バルコニーで血まみれになって犬の脚を焼いている姿を目にする。次に私たちは、回想シーンで数カ月前にロンドンにある高級な高層マンション、ハイ・ライズの25階にロバートが初めて引っ越してきた日の出来事を目にする。このシーンは、極端に度を過ごした1970年代を表現するメタファーとしての役割を果たしている。そしてジェレミー・アイアンズは、下層階級の人々が低層階でもがきながら野心を抱くかたわらで、40階のペントハウスに生活するハイ・ライズの設計者アンソニー・ロイヤルを楽しんで演じている。

2013年に公開されたSFアクション・スリラー映画『スノーピアサー』では、『ハイ・ライズ』と同様の階級社会の寓話を表現するために列車が用いられた。本作では、ロバートがセクシーな隣人シャーロット(シエナ・ミラー)と共に、ドラッグ交じりの乱交パーティー(かかる音楽はロックではなくアバだ)、どん底に生存する者たちの間で繰り広げられる暴行やレイプを通り抜け、上階に上り詰めていく姿でその寓意を理解する。停電でエレベーターが停止した後に起こる出来事は地獄だ。ルーク・エヴァンスは反乱派のリーダーとして登場する。しかし、締め付けられ閉所恐怖症を引き起こしたハイ・ライズの進む先は知れている。意外性に欠ける点は残念だが、ウィートリーは映像をオーバードライブ状態にさせて、私たちの感覚に衝撃を与えてくれる。試しにひとつ、道を外してみよう。

『ハイ・ライズ』
★★★★(4/5)
監督/ベン・ウィートリー
出演/トム・ヒドルストン、ジェレミー・アイアンズ、ルーク・エヴァンス、シエナ・ミラー、エリザベス・モス、ステイシー・マーティン
8月6日よりヒューマントラストシネマ渋谷他にて全国順次公開
http://www.transformer.co.jp/m/high-rise/

Translation by Yuka Ueki

Peter Travers

最終更新:8/6(土) 10:10

ローリングストーン日本版

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