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村川絵梨「ラブシーンは女優をやる上でいつか辿る道」 映画『花芯』インタビュー

リアルサウンド 8/7(日) 10:00配信

 瀬戸内寂聴の同名小説を、『僕は妹に恋をする』(07)、『海を感じる時』(14)の安藤尋監督が映画化した『花芯』が8月6日に公開された。本作は、親の決めた許婚と結婚した女性・園子が、夫の上司・越智に出会い、生まれて初めて知った恋に戸惑いながらも、次第に肉体の悦びに目覚め、子宮の命ずるまま生きていく模様を描いた恋愛映画だ。リアルサウンド映画部では、本作で主人公・園子役を演じた村川絵梨にインタビュー。初めて挑んだラブシーンや、安藤尋監督との信頼関係などについて語ってもらった。

■「“脱ぐ”のはこの作品には必要不可欠なこと」

ーー今回の作品は村川さんにとって、内容的にも役柄的にも非常にチャレンジングなものだったのではないでしょうか?

村川絵梨(以下、村川):そうですね。なので、オファーをいただいた時もすぐにお返事はできませんでした。ただ、最初に台本を読んだ段階で園子という役に惚れてしまって、自分の中でこのセリフを言いたいというような願望が湧いてきたんです。もちろん脱ぐということでチャレンジングな作品ではあるのですが、それはこの作品には必要不可欠なことだし、女優をやる上ではいつか辿る道だと私自身も思っていました。この作品であれば躊躇なくできるし、他の人が演じているところを見たら悔しいと思う役柄でした。

ーーストーリーに惹かれた部分が大きかった?

村川:ストーリーと園子の生き様ですね。共感できない方もいるかもしれませんが、私は園子の生き方がすごくカッコいいなと思ったんです。女の中の女という感じで、尊敬する部分もあって。私は台本を読んでから原作を読んだのですが、原作が伝えたかったことがそのまま映画へも反映されていると感じています。

ーー園子は自身の欲望や願望に正直に生きていく女性ですよね。村川さん自身は園子に共感する部分はありましたか?

村川:園子にはすごく共感しますね。女性だったらみんなどこかで園子のような感覚になったことがあるのではないかなと思うんです。“恋をしたい”“幸せになりたい”と思って、結婚したり主婦になったりされる方がいる中で、園子はそこに素直になれない。自分自身が思い描いている夢とはあまりにも程遠い現実が待っているということを彼女は感じてしまっているので、違う道を選ぶことによって、孤独になっていく。そして、自由に生きていくことを選択したために、いろいろな代償が払われる。彼女を通して、女って強い生き物なんだなということを思い知らされました。

ーー映画の中では、様々な時代の園子の姿が映し出されていきます。役作りでなにか意識したことはありますか?

村川:園子が口紅を塗った瞬間に全く別の女性になるように意識しました。女性ってアイラインやマスカラひとつでものすごく変化するんですよね。私はこれまでメイクに関してはメイクさんにほぼお任せでお願いしていたんですけど、今回は「この時期の園子は、ラインをこれぐらい入れます」と、事前に入念な打ち合わせをしました。見た目のちょっとした変化が心の変化にも繋がってくるので、映画の中では描かれない空白の時間を、いかに空白に思わせないようにするか。髪型なども含め、そのあたりはすごく力を入れました。あと、園子はあまり話さないので、セリフではなく佇まいや表情などで感情を表現しなければならなかったんです。監督とはじっくりと話し合いを重ねさせていただきました。

ーー安藤尋監督の印象はいかがでしたか?

村川:ヒゲも生えた男らしい方だったので、最初は私も少し警戒している部分があったんです。でもすごく繊細で暖かくて優しい方で。リハーサルで私が力んじゃうこともあったんですけど、「そんなに感情を込めなくてもいいよ」という感じでアドバイスをしてくれたり、カメラマンさんの横に張り付いてくださって、私の演技を見ながら自分まで園子の感情に入り込んでしまったり、すごくアツい監督でした。撮影するまではまさかそんな方だとは思ってもいませんでした(笑)。あと、私が少しでも不安げな表情をしていると、それを感じ取って話に来てくれるんですよ。作品を一緒に作り上げていくという姿勢をずっと持ってくださっていたので、私もすごく自由にできました。

ーー監督と信頼関係が築き上げることができたと。

村川:撮影期間中にお互いの信頼関係が芽生えていきましたね。監督は「そうじゃないと思う」というように、戦うところはすごく戦ってくれましたし、私は私で「いや、でも…」というような感じで意見を言わせてもらったりもして。そういうことを言える環境を作ってくれたんです。途中からは、私が何か質問をしても「もう俺にはわからない。好きにどうぞ」という感じででしたから(笑)。あと、私は今回ラブシーンが初めてだったので、リハーサルをやらせてもらったんですけど、その時に安藤監督と助監督の方が男同士の絡みを見せてくれたんですよ。ちょっと笑いそうになっちゃったんですけど、本当に一生懸命やっていただいて。なので、ラブシーンだからといってそんなに重く考える必要はないということ、本当に大丈夫だという安心感を与えてくれましたね。現場で不安にならず、抵抗なくラブシーンに挑めたのも、監督のおかげだと思います。

■「ラブシーンの最中は役になりきっていた」

ーー今回の作品において、ラブシーンは非常に重要な役割を担っていると思います。村川さん自身、初めてラブシーンに挑戦するにあたり、心がけたことはありますか?

村川:肉体的な面よりも、精神的な面ですね。シーンのひとつひとつにおいて園子の感情の変化を表現しないといけないことが多くて。ラブシーンというか、そういう行為をしている時って、感情が最も豊かになっていると思うんです。ただ、そこに没頭していることを見せるのではなく、そこで園子はどう思っているのか。そういうことを紡いでいかないと最後に辿り着けないと思っていたので、そこは私自身も心がけながら挑みました。実際、ラブシーンの最中は本当に役になりきっていて、あまり大変だった記憶もないんです。全然迷いもなかったですし、本当に役を生きていたんだと思います。

ーーそういう意味では、村川さんにとっても大きな意味を持つ作品になったのでは?

村川:こうして主演でやらせてもらえる機会があるのは本当にありがたいことですし、真の女性の役をやれる年になったんだなと自分でも感じます。11年前の連続テレビ小説『風のハルカ』(05)の頃には全く想像もしていなかったので。私はここ数年、舞台を中心にやらせてもらっていたんですけど、心の解放ができる舞台の経験を積んできたことは、すごく大きかったと思います。物怖じせずに挑める度胸がついたんじゃないかなって。でも観るのは映画が一番好きで、映画に出たいとずっと思っていたので、完成した作品を観た時は本当に嬉しかったです。そこまでストーリーに緩急があるわけではないですが、それが心地よくて、とにかく美しい映画です。女性にとっては、共感する部分があると思います。

宮川翔

最終更新:8/7(日) 10:00

リアルサウンド

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