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フランス人も驚く “他力本願”思想のすごさ

Wedge 8/8(月) 12:20配信

[フランス中西部Le Puyからスペインの聖地Santiagoを経てMuxiaまで]
(2015.4.22-7.16 86days 総費用37万円〈航空券含む〉)

フランス人の日本趣味、“ゼンとブッダ”

 5月21日 24km歩いて途中で道連れになったフランス人中年夫婦とカステ・アルイ(Astet-Arrouy)の宿に到着。彼らの他にも数人フランス人が加わり賑やかに会食。

 やはり日本人の巡礼者と知って仏教や日本文化について質問攻めになる。フランス人は他の欧米人に比べて日本趣味が盛んなようである。話していると次第に具体的な質問になる。“仏教と禅”の関係を混同しているようなので「仏教の修業の一つの方法・手段が禅である」と説明すると「“リンザイ”(臨在宗)、“ソウトウ”(曹洞宗)では禅を重視しているが禅は単に修業方法の一つなのか」とさらに聞いてくる。

 「臨在宗、曹洞宗では禅を瞑想(meditation)の一つの方法として重視しているが、瞑想には他にも色々な方法がある。例えば無心に庭を掃除するのも瞑想の一つの方法である。例えば私は毎日夕刻にビールやワインを飲みながら夕陽を眺める。私はこれも仏教の説く瞑想の一つであると考えている。私は夕陽を見ながら仏様(Buddah)と対話(dialogue)しているのである」と具体的に自説を展開したら皆が関心を示した。

 さらに私が「日本の一般民衆に最も広く信仰されているのは修業を重視する臨在宗、曹洞宗ではなく、“念仏”を唱えるだけで天国に行けると説く浄土真宗や日蓮宗である」と説明すると全員が驚いた。

 彼らには“人間は原罪を背負っており善行をしたり寄付をすることでやっと天国に行ける”という長年教会が教え込んできた強迫観念が身に沁みついているようだ。私は「どんな人間でも単に念仏(just one phrase pray)を1回唱えるだけで無条件に天国に行ける」という親鸞聖人の教えを丁寧に説明した。誰でも無条件に天国に行けるから万人に平等であり本来の仏教の教えにも合致するものだと。

 他方でイスラム教などは1日5回の礼拝、喜捨(寄付)、断食、聖戦参加、飲酒禁止、豚肉禁止などなど義務と規則でがんじがらめにして天国に行くためのハードルを高くしている。私はイスラム国などという狂気の集団が正当化される根本にはこのがんじがらめの構造があると思うと勝手な自説を展開した。

 親鸞の“他力本願”“悪人正機説”は欧米人にはかなり刺激的であるようで紹介するたびに毎度大きな反響があるので巡礼旅での私の定番となった。

 考えてみれば他力本願とか悪人正機説は高校の日本史の教科書で読んだだけである。さらに振り返ってみると私は定年退職するまで神仏について真剣に考えたことは無かったし、過去に家族・友人も含めて神仏について語り会った記憶もない。日本人どうしで宗教を議論する機会がないというのも不思議である。

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最終更新:8/8(月) 12:20

Wedge

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