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ROTH BART BARONが語るFRFのステージ:「これまで経験がない危機感や恍惚感を感じさせる」

ローリングストーン日本版 8/8(月) 17:00配信

フジロックに今年初参戦したフォークロックバンドROTH BART BARON(ロットバルトバロン)。初日の深夜にライヴを終えた彼らを開催2日目の朝に訪ね、ライヴ直後の感想と印象を三船雅也(Vo/Gt)に語ってもらった。彼自身、特別な思い出があるというフジロックでの初ステージ。機材トラブルに見舞われるという場面もあったが、その状況をどのように感じていたのだろうか。



深夜に突如現れた幻想空間。心を溶かす、透明なハーモニー

GREEN STAGEからピラミッド・ガーデンへ。キャンプエリアを背にステージへ近づくと、まるで魔法の国に足を踏み入れているような感覚になった。メイン会場から少し離れた一角には布でこしらえた演劇場を思わせる舞台、揺れる幾多のキャンドルに見守られながら、観客は芝生に腰を下ろす。昼間の疲れを癒そうと、また、もう少し音楽を楽しみたいとチルアウトしている。これもまたフジロック、神秘的なロケーション。そこにROTH BART BARONの幻想的でどこまでも透明なサウンドが鳴り響いている。魔法の国とは言い過ぎかもしれないが、少なくとも異国の地のもののようだ。しかし、聞こえている歌はほとんどが日本語。三船のハイトーンヴォイスが印象に残り、言葉はどこか記号的でもあるが、確実に日本人の心に届く。

音響設備の調子が悪いのか、度々サウンドトラブルに見舞われていたが、それでも演奏の緊張感、透明感が損なわれることはなかった。最後の『アルミニウム』では、ステージ上の5人が最前列一列に並びマイクを通さない、生の音が放たれる。アンプで増幅された音がロックなら、この時の音はロック以前。古の時代にはこうした音だけが世界に鳴っていたわけだ。その音が苗場の自然に吸い込まれていくのがわかり、そこに居られてよかったと心から思った。

アフターインタヴュー

―フジロックには、オーディエンスとしても来ていたんですか?

学生の頃に来ていました。一番印象的だったのはMy Bloody Valentineが復活して大トリをやった時、あれはすごく覚えてます。青春18切符を買って鈍行で、テントを背負って来てました。

―その時はミュージシャンになろうと思ってました?

えー、どうだっただろう? 家で(曲は)作ってたような気がします。僕は、音楽を始めたのが遅かったんで。

―フジロックのどんなところが魅力だと思います?

日本のフェスだけど、外国のミュージシャンがたくさん来てイベントを作ってくれているので、日本語と外国語の境界があやふやになってる瞬間があるんですよね。言葉も必要ない、というか。その感覚がすごく楽しいです。それはお客さんとして来ていた頃から感じていました。

―今回出演者としては初登場でしたが、昨日のステージ(ピラミッド・ガーデン)は、機材トラブルがあって大変そうでしたね。

アクシデントはつきものなので仕方ないですけど、始まる時間がすごく遅くなってしまって。でも、お客さんが最後まで残ってくれていたので嬉しかったですね。結局、お客さんがそういうトラブルとかアクシデントをカバーしてくれた感じがする。アクシデントがあったことによって、さらにお客さんとの距離が近くなった、というか。演奏している僕らからすれば、もっと音響機材やテクニカルな面で万全なパフォーマンスが出来たんじゃないかっていう反省はありますけど、それ以上に、ライヴ本質の部分をお客さんと共有できたんじゃないかと思います。良い時間を一緒に過ごせたな、と。

―その本質っていうのは? また、ROTH BART BARONが音を鳴らす時に一番大事にしてることって何ですか? 

音楽って、人間の感情のトリガーだと思うんです。昔のことを思い出したり、泣きそうになったり、すごく楽しくなったり、そういう衣食住以外の部分でプラスアルファの感情を作ってくれる、きっとフジロックをはじめこういうフェスティバルに来る人たちはそれを求めているんだと思います。大事にしていることは、自分にないものとか、自分が元から持ってるものの扉を開いて "あぁ、こういう感情が僕にもあったんだ" って気付かせてくれるような、そういった部分を引き出せたら面白いなと思いながら音楽を作ったり演奏したりしていますね。ただ、バンドがいくら良い演奏をしても、お客さんが良い空気で音楽を聴く体勢が整っていないとだめだと思うんです。そこが揃って初めて化学反応が起きて、僕らも普通以上の力が出せる。フジロックは、そういったバンドだけでは足りない何かを補ってくれる場所だと思います。それはいろんな場所でライヴを重ねて初めて分かったことなんですけど。昨日みたいな想像していなかったトラブルがある意味刺激になって、お客さんにもそれが伝わるんです。自分自身も、お客さんとしてここに来てそう感じることが多かったし。自分が今日まで生きてきた経験値じゃ全然足りない危機感みたいなものとか、ある種の恍惚感だったりとか、そういうものを感じさせてくれるんですよね。

―まさに、そういうライヴだったと思いますよ、昨日のは。

恐縮です。

―あの場所の空気も含め、なんか異空間だったんですよね。さっきも仰ってましたけど、鳴っている音が自分の中に眠っていた何かを呼び起こしてくれるような感じがしました。きっとみんなそう感じていたと思います。

そうだと嬉しいですけどね。そもそもフェスティバル=お祭りって、日常生活では見られないお祭り好きな日本人の本質みたいなものが見える気がして面白いんですよ。日本人って海外の人からすると例えば "真面目でカッチリしてて繊細" みたいな感じじゃないですか。そういうところも確かにあるけど、もっと深い、本質の部分では荒々しい面もある。雑で荒々しくて粗野。そういった面が自分の音楽にもあると思うし、今回お客さんからも見せてもらった気がして、なんかちょっと嬉しかったです。

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最終更新:8/8(月) 17:00

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