ここから本文です

これぞ夏の一冊、“読むコカコーラ” 『ヤギより上、猿より下』 (平山夢明 著)

本の話WEB 8/9(火) 12:00配信

 独特の表現と文体に魅了されるコアなファンが多い著者の作品のなかでも、ポップな入門編として名前が挙がる『デブを捨てに』。これに続く“イエロートラッシュ”シリーズの第二弾が刊行された。

「アメリカでは“ホワイトトラッシュ”と言うと、ドン底の生活してる白人のことなんだけど、日本も、国全体で“インチキ賭博”に騙されてるみたいな世の中だからね。まさに“イエロートラッシュ”な状況。だから、この話に出て来る奴らみたいに、騙されずにもっとタフになってほしいって思いをこめたつもりなんだ」

 奇想天外な表題作は、潰れかけの淫売宿で、ヤギと一緒に働かされることになったオランウータンのポポロが起こす奇跡を、「おかず」という幼い女の子の視点から描いた物語だ。だが、これには、元になった実話がある。

「以前、知り合いの作家との酒飲みのヨタ話で、インドネシアでオランウータンが女の代わりに淫売させられてたって話が出たんだ。そのとき『よし、これで一本短篇書く』と宣言しちゃった。でも、その場にいた奴らは『こんなくだらない話を出さないだろ』って言ってたから、だから今回、本が出て一番驚いたのはたぶん、あの場にいた奴らだね(笑)。この話は、もともと短篇にしては登場人物が多いから整理して、ほぼ全面改稿したから、刊行までかなり時間をもらった。ほかの作品も、雑誌で載せた時にはインパクト重視だったから、物語がまとめ切れてないところがあったんだけど、読み味という部分を大事に考えて、かなり手を入れてみたよ」

 他の作品も、これぞ平山ワールドとでも言うべき作品だ。実の親に虐待される子どもたちのタフな日常を描く「パンちゃんとサンダル」。老人の妄想に付き合う探偵が事件に巻き込まれる「婆(ババ)と輪舞曲(ロンド)」。著者が得意とする、殺し屋のハードボイルドな世界に満ちた「陽気な蝿は二度、蛆を踏む」。すべて描かれている状況はハードだが、どこかユーモアがあり、前向きな結末なのがこの作品集の特徴と言える。

「物書きって、日々鬱屈がたまるじゃない。だって、健康な人間が朝から晩まで椅子に座って、ちまちま『ああでもないこうでもない』ってやってるのは、どう考えても病的な商売ですよ。そういう鬱屈を、オレ自身が解消しようと思って書いた。書いててモヤモヤするのを、書いてスッキリさせるってのも、ヘンだけど。だから、読む人にも、ゲラゲラ笑ってもらえばOK。夏場でモヤモヤしてるときに、ぜひこれでスキッとしてもらいたいね」

平山夢明(ひらやまゆめあき)

神奈川県生まれ。2006年「独白するユニバーサル横メルカトル」で日本推理作家協会賞短編部門、11年『ダイナー』で大藪春彦賞をそれぞれ受賞。

聞き手:「オール讀物」編集部

最終更新:8/9(火) 12:00

本の話WEB