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auは大きく変われるのか?ドコモは新社長になって変わるのか?

@DIME 8/9(火) 8:10配信

 スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回はauの「大きく、変わります。」宣言とドコモの社長交代で会社がどう変わるかをテーマに話し合います。

■auの長期ユーザー優遇サービスをどう評価するか

房野氏:前回、auは端末ラインアップについて話していただきましたので、今回はサービスについてうかがおうと思います。

法林氏:「au STAR」で長期ユーザーをちゃんと見るという姿勢は、個人的には非常に良かったと思います。今回の「大きく、変わります。」宣言は内向きの話という印象が強いけれど、本当に変われるかが問われている。

 過去にも指摘してきたけれど、auは新しいことにチャレンジするけれど、続かない。安心、慢心しちゃう。例えばLTEのエリア。ドコモやソフトバンクは2.1GHz帯から始めたけれど、auは電波が届きやすい800MHz帯で始めたから、エリアは万全だとされていた。でも最近はそうでもない。お店に入って3キャリアの電波をチェックすると、auだけカツカツということがよくある。他社は電波が届かないなりの工夫をしているけれど、auは800MHz帯に甘えている感がある。他にも色々なサービスをやってきたけれど、他社に優っているかといったら、動画はドコモのdTVが目立っている。今回の宣言は上から内側へ向けた「しっかりしてほしい」「変われ」という宣言だという解釈です。

石野氏:端末も色々出すけれど、営業の意見でラインアップが偏ってしまったり、必要なオプション品がショップになかったりといった問題もちょいちょいあるので、むしろ「変われ」ということだと思います。社長自らボードにサインして、それをプリントしてプレスに配っていたくらいだから本気なんですよね。


法林氏:それをチェックする機関があるかどうか。どこまでできるかは、なんともいえない。

石川氏:各社、総務省のガイドラインを受けて、長期ユーザー向け施策をしていますが、これまでユーザーを騙すといったらうがった見方だけど、請求書をWeb化して何にどれだけ払っているかを見えにくくしている中でポイントを与えても、何に対してポイントが付与されているのか、自分が何年契約していて、だからいくらポイントがもらえるのか分からなくなっている。結果、ユーザーにアピールしても一切伝わらない気がします。請求書を見せなくなったしっぺ返しで、色々やってもユーザーの満足度は上がらない気がする。

石野氏:利用年数に応じてWALLETポイントがもらえる「au STAR ロイヤル」のポイント付与率が、ちょっと低いのが気になりました。ポイントじゃなくて値引きですけどドコモの「ずっとドコモ割」の方が率が高い。auはポイントという形で、確かに用途が色々あって最終的に端末の値引きに使えるのもいいんですけど、まどろっこしい印象は少しあるかな。発表会でも「なぜ直接値引きじゃないのか」と突っ込まれていました。au WALLETの利用率を上げたいという思惑もあるのは分かりますが。

石川氏:au STAR ロイヤルのポイントは自由に使えますよね。でも、ずっとドコモ割の「更新ありがとうポイント」の3000ポイントは、利用できるのは半年間で、用途にも制限があるんですよ。ソフトバンクの長期利用特典のTポイントも、使えるところが限定される“なんちゃって”Tポイント。

石野氏:auの2年契約を更新したときにもらえる3000ポイントはギフト券ですよね。

石川氏:そう、ギフト券。データ定額料によってもらえるのはポイント。表向き、すごくポイント付与しているように見えて、実は使える場所が限られていてキャリア内でぐるぐる回っているだけ。総務省のメンツは保ちつつ、キャリアは何倍も上手だなあと。あの議論はなんだったのかな。

石野氏:ソフトバンクの長期利用者向けポイントはYahoo! JAPANのサービスでしか使えなくて一番使いにくい。ドコモはローソンのようなリアルなお店でも使えるけど。

法林氏:組んでいるポイントサービス次第。僕は料金を値引くよりも、ポイントで付与して、au WALLETカードで使いましょうというやり方で良かったと思っている。値引くと元の値段を忘れちゃうんですよ。値引きするより、引く分のお金でポイントを付与して、それをプリペイドのクレジットカードにチャージして使う格好でいいし、場合によってはそれを子どものお小遣いにしてもいい。新聞系記者は、値引かないのはどうだと突っ込んでいるけど、単純に値引けばいいという話ではない。

石野氏:2年縛りで基本使用料が半額になるといっていたのも、いつのまにか半額が前提になっちゃってますからね。当初はドコモが契約年数に応じて割引率を少しずつ変えていて、家族で契約すれば半額になっていたのに、いつのまにかそれが大前提の金額になっちゃった。

法林氏:そうなんだよ。

石川氏:家電量販店と同じで、10%値引くよりも10%のポイントを付与する方が、お店にまた来てくれるし、次に使おうというモチベーションになるので、企業はそちらを選ぶのは当然だろうと思います。ユーザーとしては、いかにポイントを貯めるかを工夫したらいい。

石野氏:それは分かるけれど、ポイント貯めるのがあまり好きじゃない派からすると、ちょっと面倒だなという気持ちもあるんですよね。

石川氏:結局、キャリアとずっと付き合わないと得にならない状況になったので、これが本当にいいのかは見ていく必要がある。ユーザーの流動性があるから競争が起きるのであって、総務省公認でずっと同じキャリアを使っていいとなると、競争がなくなって最終的にはキャリアのいいようになってしまう気がします。

■「世界データ定額」は他社も追随してほしい

石野氏:auのサービスで今回、インパクトが大きかったのは「世界データ定額」。24時間980円で国内と同じ契約データプランで使える。あれは他社になくて非常に使いやすく、いいサービスだと思います。インパクトが大きいと思う人は、そこまでたくさんはいないかもしれないです、これまで出張族は早くからSIMロック解除ができたドコモを使っていた傾向があった中で、auも世界データ定額でそこを引っ張ってこれるかもしれない。まあ、本当のエグゼクティブ出張族は、そんな細かいことは気にせず会社に全部請求するでしょうけど(笑)

石川氏:すごいなと思ったんですけど、色々調べてみると、実はすでに北米の通信会社のVerizonが10ドルの「TravelPass」をやっていた。あれだけパス、パスいっているKDDIが、なぜパスを使わないのかと思ったら、実はVerizonが先に使っていたという。Verizonも100か国くらいで1日10ドルなんですよ。同じ内容なので、KDDIは参考にしているんじゃないかな。

石野氏:T-Mobileはアメリカとカナダ、メキシコで容量の範囲内で使えるとか、プランによっては国際ローミングで速度は遅いけど無制限で使えるというサービスを提供している。国際ローミング競争がアメリカで起っているんですよね。

石川氏:果たして980円とか10ドルが必要かどうかも分からない。最終的には、日本で契約している容量が海外でそのまま減っていけばいいという気もする。そういうサービスをドコモ辺りがやってくれるといいなと思うし、そうなれば海外でSIMカードを買わずに済むし、国内と同じように使える世界になるといいなと思います。まさにGoogleの「Project Fi」はそういう世界観。

石野氏:EUもデータローミング料撤廃の動きがあるので、ローミングは世界的にもホットなテーマになってきている。日本は島国なのであまりローミングする機会がないとはいえ、これだけの人が海外に行っている。今の1日2980円は、やっぱりちょっと高すぎると思うんです。スマホ時代の料金設計じゃないので、2段階制でもすぐに上限に達する。そこを見直してきたのは、ユーザーにとって非常にいいことだし、他も追随してほしいところです。

法林氏:テザリングしようが何しようが上限がないので、超ヘビーユーザーにとって1日2980円はアリだけどね。パンクするくらい使っても、誰も文句を言ってこない(笑) 逆に言えば、今後、そういう使い方が拡大する可能性があるから、980円で国内のデータ容量が減っていく形にしようという狙いがあるでしょうね。

石川氏:auは選べるんだよね。たくさん使うと分かっているなら、2980円を選べばお得なはず。

法林氏:将来的にそういう人が増えてくると、2980円は廃止される。

房野氏:使うデータ量にもよると思うんですけど、SIMフリー端末で現地のSIMを購入して使う場合と、国内の定額プランを使う場合と、どちらがお得でしょうか。

法林氏:現地のSIMの方が安いです。

石野氏:今だと1日2980円だったら10日で3万円。世界データ定額でも10日で1万円。ドイツのMVNOだと、5GBで3000~4000円レベル。

房野氏:ローミングの料金としてはどうですか?

石野氏:海外のSIMカードを使って日本でローミングすると、今は1日1000円くらいになっています。だから980円は相場かな。

石川氏:Verizonが1日10ドルで同じサービスを提供しているし、グローバルでも標準的だと思います。現地でSIMを買って契約するのはハードルが高いですよ。我々みたいに、それを仕事としている人間なら苦にならないけど、貴重な海外旅行の時間を潰すことになるので、ローミングを使った方がいい。auの世界データ定額なら、容量的にもつらくないと思いますね。

石野氏:10日で1万円だったら、下手なところでプリペイドSIMを購入するより安く済みます。

法林氏:海外でプリペイドSIMを買う話は、ひとまとめに評価しがちだけど、国によってだいぶ違います。僕らもそんなに多くの国に行ったわけではないんですが、それこそ自販機で買って、端末に挿したら使えましたという国もあれば、書類を書いて契約したけどいつまで待っても動かなくて、もう1度ショップに行った、みたいなこともざらにある。それをまとめて、海外でプリペイドSIMは安いと、安直に言うのは問題があると思う。ハードルは高いです。楽な国を基準にして考えない方がいいと思います。

石野氏:台湾や香港、イギリスは簡単。ドイツはヨーロッパの中でもちょっと面倒。

法林氏:去年の年末、フランスとオランダに行ったけれど、ショップを探さなくてはいけなくて両方とも面倒だった。オーストリア、チェコもショップ探しは結構苦労しました。

石野氏:スペインもMWC(Mobile World Congress)で行ってなければ利用は難しいですよね。

石川氏:言葉の問題も大きい。

石野氏:アメリカも面倒といえば面倒。空港で簡単に買えるわけじゃないし、キャリアによっては「プリペイド、はあ?」みたいなことになったりするので、国によってまちまちですね。

法林氏:Wi-Fiルーターのレンタルが1日980円程度なので、キャリアとしてようやく対抗できるレベルのものが出てきた。ごく普通の人が海外に行ったときに普通に使える環境ができたのは良かった。

房野氏:海外でトラブルになると対処が大変ですからね。

石川氏:ちょっと気をつけたいのが……先日、auのVoLTE対応端末を持ってサンフランシスコに行ったんです。VerizonにつながるとVoLTEが使えるんだけど、基本的にAT&Tでローミングするんですよ。なので、ちゃんと接続先を確認して、VoLTEで通話したければ自分で手動で設定してVerizonにつながないといけない。また、ソフトバンクの「アメリカ放題」はSprintがひど過ぎて、T-mobileやAT&Tにつながってローミングしているときに電話がかかってくるとアメリカ放題にならない。そこは気をつけないと。

房野氏:エリアの問題はないですか?

石川氏:端末の対応バンドでちょっと違いはあるかな。その点iPhoneはよくできていて、対応バンドが多くてどこでもつながるので安心な気がします。

石野氏:バンド3が国際的にある程度一般化していて、日本でも使えるので、欧州、日本、アジアは同じ端末で大丈夫なんですけれど、アメリカが引っかかりますね。

法林氏:アメリカが一番特殊。昔から言い続けているけど、アメリカは通信後進国ですから。

石川氏:アメリカが“ガラパゴス”なんですよ。アメリカは好きにやっていて、世界とあまり協調していない。

法林氏:アメリカの方が特殊だということを、世の中の人に認識していただきたい。GSMA(GSM Association。携帯通信事業者の業界団体)が設立されたヨーロッパが基準値です。

房野氏:結論として、今回のauの「大きく、変わります。」というのは……。

石野氏:ローミングは変わったね。

法林氏:変わってね、結果を見せてね、ということに尽きると思います。ユーザーがauに対して「ドコモではできるのに、どうしてauではできないの?」というべき。それを受けて、auがドコモに負けないようにサービスを作り込んでいく、アピールしていくことが重要です。

■ドコモが社長交代

房野氏:ドコモの社長が吉澤和弘氏に変わりました。

石川氏:僕はちょうどそのとき海外取材で、株主総会も新社長会見も行っていないんですが、加藤社長は絶妙なタイミングでバトンタッチしたなと。これから端末が売れなくなって、業界的に厳しくなるじゃないですか。この1~2年は売上がドカンと下がる可能性があるけれど、その後にどう巻き返せるかが吉澤さんの課題になると思います。

石野氏:加藤社長は、業績がガーンと落ちたのをガーンと戻した後、好印象で交代したので、タイミングは良かったと思います。吉澤さんは加藤さんの後輩で、若返るのもいいのかな。ただ、ドコモは慣例で4年に1回、社長が交代するので、自分の色が出せるようになるのに1~2年かかり、そこから2~3年で、また次の社長になってしまう。吉澤さんは就任会見でAIやロボティクス、自動運転なんかに取り組みたいと言っていましたけど、それを実現するには4年じゃ足りないんじゃないかという気もする。ここはNTTグループであるドコモの難しいところだなと、なんとなく思いました。実際、吉澤カラーが出てくるのは、来年の今頃なのかなという気がします。

法林氏:そういう見方がある一方、僕は山田(隆持)、加藤、吉澤という流れは、次の人に渡す礎をちゃんと作って次に渡せていると見ています。山田さんは顧客満足度を上げてスマホ時代の入り口を作り、iコンシェルなどの情報系サービスで、今までと毛色の違うものを用意して渡した。加藤さんは最初は苦労したと思うけど、iPhoneを導入し、新料金プラン、ドコモ光もやって、ドコモの中ではドラスティックに物事を変えた人というイメージ。次の種まきとして「+d」の枠組みを一通り作れたので、これをベースに吉澤さんがいかにビジネスを広げていけるか。ちゃんとやって、ちゃんと次に渡せていて、よかったのではないかと思います。

石川氏:その意味で、副社長陣営が鍵を握っているような気がしています。阿佐美(弘恭)さんはd系サービスをやっている人だし、中山(俊樹)さんもコンテンツやサービス連携をしている。通信は当然メインとしてあるんだけど、そこにプラスされるサービスは、この2人が回していく感じが強い。今までのドコモより、さらに+dに突っ込んで、いろんなところと組んでいくだろうと思います。周辺の会社はドコモと組みたいと思っているわけで、組むことによってドコモの強みが出てくると、ちょっと怖い存在になると思います。

石野氏:通信と、通信以外の上位レイヤーの売上を同じくらいの規模にしていくと語っていたので、それができると確かに他社には追いつけない規模の携帯電話会社になる。KDDIはその方向を目指しつつも、まだそんな規模にはなっていませんし、ソフトバンクはちょっと特殊でYahoo!がありますけど、ドコモがそういう会社になっていくと、他にとっては相当脅威になりますね。

房野氏:吉澤さんのカラーはどういう感じになりそうでしょう。

石野氏:どうでしょうね。スピード感を出したいとはおっしゃっていましたけど、社長が変わる度に毎回言っている気がします。今度こそ、あの若々しさでスピード感を高めることに期待したい。

石川氏:吉澤さんは初の生え抜きといわれているので、そういう人がトップになったことによって、ドコモとしてのモチベーションも上がるだろうし、ドコモの代表としてがんばってほしいですね。

房野氏:加藤さんが立て直して、吉澤さんにバトンタッチして、スタートは非常に順風満帆な印象があります。順調に業績を上げていけるでしょうか。

石野氏:社長として、もうちょっと困難があった方がいいんじゃないかと感じます(笑)。順風満帆過ぎる環境で社長就任要請を受けている感じがして、つまずいたときのダメージが大きそう。

石川氏:これから業績を伸ばしていくのはプレッシャーだろうという気はする。市場環境的に端末は売れなくなっていくので、それをどう乗り越えていくのかが課題だと思います。

房野氏:ドコモプロパーと考えると、NTT本体とのコミュニケーションはどうでしょうね。

石野氏:気になるところですね。

法林氏:本当に野次馬的な見方だけど、少なからず気になるところ。例えばiPhone導入のときは、すったもんだして非常に揉めたという話を聞いています。もっと前だと「うちは株式会社ドコモでいい(NTTを外してもいいと)」とドコモの初代社長の大星(公二)さんが言ってNTT本体を怒らせたとか、昔からNTTとNTTドコモの間にはいろんな事件がある。吉澤さんがドコモの発言力を確保できるかは未知数ですね。

 もう1つ、NTT本体から来た人が何人もいらっしゃるけれど、そういう人たちをちゃんとまとめ上げられるかも気になるところ。前の副社長だった坂井(義清)さんは、以前、ドコモの広報部長で、その後NTT本体の財務に行って、ドコモに帰ってきて副社長になり、今度はNTTファイナンスの社長になったんですよ。こういう人がNTT本体側とのつながりや後押しとなるけれど、そういう人がいなくなったり、新しい人が入ってきたりするので、吉澤体制がどう築き上げられていくのか、ちょっと見ものです。

石野氏:社長を4年で定期的に変えるのはどうかという声もある一方、NTTほどの規模の会社になると、社長1人でそんなに大きく変わらない。全員野球な会社なんですよ。ソフトバンクやKDDIよりも社長の権限が弱め。組織として和をもって戦う上では4年交代もアリかなと思います。それで会社がダメになるわけじゃないのは、CEOが輪番制のファーウェイを見ていても分かる。合議で決めた人を順番に回していくと、1人に振り回されて間違った方向に行きそうになったときのリスクヘッジにもなる。チームで戦う組織作りもあるかなと思います。

......続く!

@DIME編集部

最終更新:8/9(火) 8:10

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