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全米を席巻するTVドラマ『ミスター・ロボット』の主演俳優が語る撮影舞台裏

GQ JAPAN 8/9(火) 16:46配信

ITセキュリティ企業に勤める人嫌いの天才ハッカー、エリオット・アルダーソンは悪意を持ってシステムに進入しようとするクラッカー集団と対決。見事に撃退するも、クラッカー集団から自分たちの活動に加わるように勧められる。その集団は、社会民主主義的な理想を持って活動していた……。

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このような現代的テーマを扱い、第1シーズンが米国で大人気となったテレビドラマが『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』だ。日本ではAmazonの動画配信サービス「プライム・ビデオ」にて独占配信。ネット上でも評判が高く、多くの視聴者が絶賛する感想をブログに綴っている。

『ミスター・ロボット』はどのように製作されているのか?主演のラミ・マレックに、主役を射止めた背景、撮影裏話、そして演技について訊いた。

──『ミスター・ロボット』のキャスティングは、どのようにして決まったんですか?

若いのに個性派俳優と見なされてる僕にとっては奇妙な感じだった……少なくとも初めはそう思ったね。異色な外見の男に与えられるポジションは限られているから。

エリオット役はこのドラマの主役だけれど、風変わりなキャラクターだったから僕でもできるんじゃないか、って思ったんだ。それでも「僕がテレビドラマの主役なんて絶対にありえない」と思っていたんだよ。でも製作陣の中の、たぶん数人が「うまくいくんじゃないか」と考えたわけだから、やることに決めて、サム・エスメール(本作の企画・製作総指揮)の前で脚本を読み始めたんだ。

──オーディションはどうでしたか?

脚本を読んでいると、サムはずいぶん楽しそうにしていたよ。少なくとも僕の目にはそう見えた。ただ、サムがその場で何かを“見い出した”からかどうかは分からないけどね。でも実際に撮影が始まってからは、僕の演技を楽しんでいる感じはまだない……(笑)。慣れちゃったのかもね(笑)。

──最初に脚本を読んだときの印象は?

素晴らしいと思った。夢中になって読んだよ。体中に突き刺さるようだった。とても示唆に富んでいて感情を揺さぶるストーリーだし、洗練されていてタイムリーで……。とにかく時代の先を行っている感じだった。

だから僕はひそかに思ったんだ。「誰もやろうとしないだろうし、金を出す人もいるわけがない」ってね。ある意味、評価は分かれる作品だと思う。それに『ミスター・ロボット』ってタイトルじゃ、いかにも失敗しそうだし(笑)。

──なぜこのドラマは爆発的な人気を得たのでしょうか?

今の子どもたちは、自分たちが世の中に与える影響を強く自覚している。それと同時に、人々は今の世界のあり方にうんざりしているような空気もある。この世は常に問題だらけだから。でも、政府が解決に全力を尽くさなくても、僕らにできることがあるかもしれない。そういう諦めに抗う精神が、このドラマにはあると思う。

エリオットのような欠点だらけの人間が、ヒーローとして未来を託されるっていうところもいい。このドラマのキャラクターは全員、闇を抱えてるだろ?彼らは自分の殻を破って、内に秘めた強さを見つけ出し、世界に何らかの変化を起こそうとする姿を描いているんだ。

──このドラマに取り組む前からコンピューターには詳しかったのですか?

そんなことはなくて、今も苦労してるよ(笑)。僕は演技以上に、事前の準備としてコンピューターの知識を得ることに力を入れてきたんだ。本物に見えなかったら誰もエリオットに入り込めないだろうからね。

先日の撮影でも時間が想定以上にかかってしまって、キーボードを打つシーンで代役を用意しようということになったんだ。でも、僕は断ったよ。だって映っている手が本当に僕の手かどうか、見ている人にはわかってしまうから。だから自分でやりたかったんだ。

動作としてのタイピングだけでなく、タイプする内容も勉強したんだよ。だから……だいぶレベルアップしたと思う(笑)。コンピューターについてはまったくの初心者だったし、ハッキングなんていう芸当は絶対に出来なかった。でも今は少しくらいは理解できるようになったよ。

──シーズン2の撮影は順調ですか?

撮影は3月のはじめ……そう、3月7日に始まった。シーズン全体をまとめて撮影しているんだ。

サムがすべてのエピソードを監督するんだけれど、製作会社と放送局からは「君が監督するのもいいが、前もって全エピソードの脚本を書き終えておくように」と言われたそうだ。だから、サムは撮影が始まる前に10話分の脚本を書き終えたって言っていてね。それだけでもすごいことだよ。だって普通は、次に何が起こるかわからない状態で1話ずつ進めていくものだから。

でも、サムはこういう状況にも対応できるタイプの人なんだ。全10話を1本の映画のように撮影したいなら、彼ほどうってつけの人材はいない。でも、今撮っているエピソードから数話分先のシーンも撮影しなくちゃいけないんだから、監督の苦労は大変なものがあると思う。たとえば、1日の撮影で1話を撮っていると思ったら9話に飛んで撮ったりとかね。

──実際にはどのように進めるんですか?

たとえば地下鉄で撮影する場合、1話から10話に出てくるすべての地下鉄のシーンを撮影してしまうんだ。

──それは難しそうですね。

その通り。すべての登場人物が複雑なキャラクターだし、様々な面を持っているんだけれど、各キャラクターはストーリーの展開とともにどんどん変化していくんだ。それはシーズン1を観てもらったらわかってもらえると思う。

皆、最初に登場した時と全然違う。どう頑張っても予測不可能なくらいさ。特に僕のキャラクターはそう。僕はリスクを冒したり選択を迫られるのが好きな俳優だから、喜んで飛び込んじゃうけれど、自分の役を知り尽くしていないと苦労することになるね。

──シーズン1と新シーズンの違いは?

じつはかなり違う雰囲気なんだ。でもいい意味で、だよ。新シーズンは、シーズン1が終わったところから始まっていて、エリオットが自分の頭の中の世界に気づき、そのことで自己が崩壊してしまいそうなほど苦しむところから始まるんだ。

彼は自分をコントロールしようとしてもがくんだけれど、コントロールできるのか、それともただの幻想なのか……でも、そういう物語のひねりは視聴者を驚かせることを目的としているわけじゃない。

サムの脚本のスタイルは、何が現実で何が現実ではないのか、視聴者が常に自問するようにできている。「僕たちの現実とは?」「僕たちが持つ真の影響力とは?」という具合にね。

今シーズンでは、こうした変革を望んだ結果がもたらす因果を描いていて、マイナスの結果とは何か、人は望みを手に入れるためにどこまでやるのか、が主なテーマだといえるよ。

──ニューヨークでの撮影はどんな感じですか?今回はシーズン1が成功したあとの撮影になりますが。

去年、クリスチャンと僕とでタイムズスクエアのシーンを2つ撮影したんだけれど、周りの人にはパーカーを着た子どもとホームレスの男の2人組にしか見えなかったと思う(笑)。でも今は違うよね。街中で「ミスター・ロボットだ!」って叫ぶ人が多くなったんだ。

この作品では、それぞれの登場人物が絶望的な逆境に立たされるわけで、そう考えるとニューヨークという巨大都市を舞台にすることは理にかなっている。ニューヨーク以上に撮影に適した場所はないとさえ思うよ。過酷で荒々しい現実を体現していて、そこに閉じ込められているような感覚を、背景にそびえるフリーダム・タワーが対照的に表現していたりとね。そんな感覚を得られる場所は他にはないと思う。

──クリスチャン・スレイターとの共演はどうですか?

彼は最高、大好きだよ。プロ中のプロだ。いつもきちんと下準備をしてくるけれど、必要とあらばその場で何でも対応できる。自分の演技に他人を引き込んでしまうタイプの俳優だ。子役からずっとやってこられたのには、それだけの理由があるってことさ。そういう才能面だけでなく、人格面でも彼は本当にいい人なんだよ。

──一緒に長時間を過ごす相手としては大事なことですよね。

もちろん。僕たち2人はそれぞれのキャラクターとともに常識外れの浮き沈みを経験している。特に2人一緒のシーンでは、ある時には貪欲になるし、ある時にはかなり意地の悪いやり取りもする。だから、たまには忘れてただ一緒に楽しめることが、毎日仕事する上で一番いい方法なんだと思う。

──製作総指揮や監督を務めるサム・エスメイルとの仕事はどうですか?最初のシーンを撮影する前に、彼と第2シーズンについてじっくりと話し合いましたか?

僕があまりにも何度も話したがったから、彼はイライラしかけていたと思うよ(笑)。

僕は最初からこのドラマがすごく特別なものになると思っていたんだ。それは言うまでもなく、サムという人がつくる作品だから。彼は想像力が豊かで頭の回転が早く、独創的な脚本家であり監督だ。不気味なほどの才能がある。それなのにいつも肩の力が抜けていて穏やか。謙虚であることも、才能の発揮を後押ししている。

彼のようなビジョンを持つ人が、俳優と協力して仕事をする……彼は僕の言わんとすることに耳を傾けてくれたし、僕から提案した演技の方向性も聞き入れてくれたよ。

──サムは今まさに編集室にいるんですよね?

そう。彼には自分の時間なんてないよ、全然寝ないしさ……。どうやってエネルギーを保っているのか不思議だね(笑)。でも素晴らしい人だ。たまに僕は自分の考えを正当化しようとして気づくことがあるんだ。「まあいいや、サムに任せれば大丈夫」ってね。

GQ JAPAN編集部

最終更新:8/9(火) 16:46

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