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マスコミの“悲観的”な情報が信用できないワケ

Wedge 8/9(火) 11:20配信

 本稿は、「前向きに読み解く経済の裏側」というシリーズの一貫です。このシリーズ名を決める際に筆者が考えたのは、「世の中には悲観的な情報ばかり溢れているので、物事を前向きに捉えて情報発信をしている事をアピールしたい」との思いからでした。今回は、その前提となった世の中の悲観バイアスについて考えてみましょう。

そもそも悲観的な情報の方が発信されやすい

 以前の当欄で、「満足している人は黙っているが、不満な人は声をあげる」「円高で儲かっている会社は黙り、苦しんでいる会社は声を出す」といった話をしました。「儲かっている」と言うと、労働組合や下請け部品メーカーなどが賃上げや値上げを要求してくるから言えない一方、苦しい企業は「ボーナスを我慢して欲しい」「部品を値下げして欲しい」と言うために苦しさを強調する、というわけです。

 これだけでも、楽観的な情報より悲観的な情報が世の中に溢れやすいという事がわかります。日本では、自慢より謙遜が尊いとされているので、なおさら悲観的な情報が流れて来ます。儲かった話を自慢すると強盗が来ると考えて黙っている、という人もいるかも知れません。

マスコミは悲観的な情報を流したがる

 ただでさえ悲観的な情報が流れてくる中で、マスコミが悲観的な情報を流したがるので、楽観的な情報はマスコミから流れて来にくいのです。

 マスコミが悲観的な情報を流したがる主因は、情報の受け手が悲観的な情報を欲しているからです。なぜか日本人は「大丈夫です」という話よりも「心配です」という話を好むのです。

 なかでも、日本人は「大変なことが起きる」という「トンデモ話」が大好きです。「富士山が大爆発する」「日本政府が破綻する」といった話は、筆者としては想像力を掻き立てられますし、SF小説を読むのも楽しいのですが、予測として聞いて楽しいとは思われません。しかし、好きな人が多いのですから、仕方ありません。

 情報を提供する側も、そうした要請に応えるのは比較的簡単です。「平和な国は一様に平和であるが、不幸な国はそれぞれに不幸である」ので、不幸なシナリオはいくらでも書けるわけです。

 加えて、「他人の不幸は蜜の味」という面もあるのかも知れません。可哀想な人、困っている人の報道は、情報の受け手を安心させる効果があるのかもしれません。いずれにしても、そうした情報を欲している人が多ければ、情報を流す方もそうした情報を流すようになるわけです。

 今ひとつ、マスコミには「権力に抵抗するのがマスコミの使命だ」と思っている人も少なくないようです。そうした人は、どうしても政権に都合の悪いニュースを流すインセンティブを持ちがちでしょうから、悲観的なニュースが多くなる、といったことがあるのかも知れません。

 それから、マスコミは珍しいことを報道するのが使命です。何も起きない平和な日常は報道せず、事故や事件を重点的に報道します。したがって、ぼんやりとニュースを見ていると日本中で事故や事件が起きているような錯覚に捕われますが、実際には事故や事件で死亡する人は非常に少ないわけです。

 こうしたことは、「マスコミが悪いから生じている」ということでは決してありませんが、マスコミの情報の受け手側が「マスコミの情報には悲観バイアスがかかりがちだ」ということを認識しておく必要がある、というわけです。

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最終更新:8/9(火) 11:20

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