ここから本文です

『ゴーストバスターズ』『死霊のはらわた』……80年代洋画、相次ぐリブートの背景

リアルサウンド 8/9(火) 11:01配信

 「エンタメ大作の黄金期」である80年代洋画の魅力を多角的な視点から読み解いたムック『私たちが愛した80年代洋画』(辰巳出版)が、8月9日に発売される。

 発売に先駆けて、リアルサウンド映画部ではコンテンツの一部を抜粋して掲載。リアルサウンド映画部主筆・宇野維正による、80年代ハリウッド大作のリブートについて書かれたコラムを紹介したい。(リアルサウンド映画部)

■70年代を食い尽くし、本格的にリブートされはじめた80年代ハリウッド大作

 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズで向かった30年後の未来の世界。その日付は、2015年10月21日だった。作中で描かれていた2015年の映画館では『ジョーズ 19』が公開されていたが、実際の2015年の映画界といえば、ここ数年続いてきた70年代作品のリブート、リメイク、続編のブームがそのクライマックスを迎えた年だった。『マッドマックス』の4作目、30年ぶりの続編にして事実上のリブート作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』。『ロッキー』の初スピンオフ作品にして、内容的には第1作のリメイク要素もたっぷりあった『クリード チャンプを継ぐ男』。そして、『スター・ウォーズ』の7作目、22年ぶりの続編にして、こちらも第1作の軸となる設定や小ネタを随所で大胆にトレースしていた『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』。

 そこで注目すべき点は2つある。1つは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズが予測していたようにバカ正直に続編をナンバリングしていく手法を、ハリウッドの映画人はとっくの昔に乗り超えているということ。『怒りのデス・ロード』も『クリード』も『フォースの覚醒』も、日本題だけでなく原題にもナンバリングは明示されていない。そもそもリブートという手法は、そのナンバリングから逃れるための絶好の方便であったわけだが、もはやリブートであろうとなかろうと、「新規客を動員するために数字はつけない」ことが常識となっている。

 もう1つは、『マッドマックス』にせよ『ロッキー』にせよ『スター・ウォーズ』にせよ、第1作だけが70年代後半の作品で、2作目以降、人気シリーズとして作品が量産され、ファン層が拡大していった時代は80年代であったということ。つまり、「70年代リバイバル」とされる現在の映画界のブームの実態は、「80年代リバイバル」と言い換えることも可能なのだ。実際にこの先、2015年にリブート/スピンオフ/続編製作されたそれらの作品がシリーズ化されていくにしたがって、「80年代リバイバル感」はさらに色濃くなっていくはずだ。

 つまり、空前の「70年代作品リバイバル」ブームに沸いた2015年は、ある意味、70年代の最も美味しい果実を食い尽くした最後の年であり、同時に本格的な「80年代作品リバイバル」ブームの幕開けとなった年でもあったのだ。それが80年代を代表する人気シリーズ『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が描いた未来の世界と同じ年であったというのは、とても示唆的ではないか。

 もっとも、当の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のロバート・ゼメキス監督は、まさにその2015年10月に「シリーズは三部作として完全に出来上がっているから」という理由で続編製作を公式に否定している。

 そのゼメキスがCGアニメにかまけていたゼロ年代にデンゼル・ワシントン主演で傑作を量産し続け、ゼメキスがデンゼル・ワシントン主演の『フライト』で実写映画に復帰した2012年にまるで入れ替わるように他界してしまったトニー・スコットは、亡くなる直前までトム・クルーズと『トップ・ガン』の続編の相談をしていたという。その企画が実現していたら、もしかしたら80年代リバイバルの到来はもう少し早くきたかもしれないが、プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーによると、まだ企画は生きていて、トム・クルーズとヴァル・キルマーには出演の快諾を得ているとのこと。つまり、『トップ・ガン』の続編は、リブートでもリメイクでもなく、正式な続編として動いているのだ。

 きっと、映画ファンがそれ以上に期待しているのは、トニーの兄、リドリー・スコット監督が誇る2大SF傑作の復活だろう。ニール・ブロムカンプ監督が抜擢された『エイリアン』の新作は、「4」まで作られたシリーズの「3」と「4」を無視して、「2」の続編として作られるという噂。シガニー・ウィーバーの出演も発表されている。また、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が抜擢された『ブレードランナー』の新作でも、ハリソン・フォードの続投が決定済。いずれの作品もリドリーがプロデューサーに名を連ねていることもあり、リブートやリメイクではなく、正式な続編として製作されるようだ。ちなみにリドリー自身も『エイリアン』の前日譚となる『プロメテウス』の続編を既に撮り終えていて、そのタイトルが『Alien: Covenant』(原題)だというから、ややこしいことこの上ない。

 そして、良くも悪くも80年代を象徴するSFコメディ大作の『ゴーストバスターズ』は、度重なるトラブルやオリジナル2作のアイヴァン・ライトマン監督の降板を経て、ようやく2016年にリブート作として世に送り出された。前評判はあまり芳しくなかったものの、アメリカ本国ではまずまずのヒットを記録していて、「80年代リブート」の機運がここで削がれることはなさそうだ。

 さて、こうなってくると『E.T.』は? 『グーニーズ』は? 『スタンド・バイ・ミー』は? 『アルタード・ステーツ』は? 『遊星からの物体X』は? といった話になってくるわけだが、それらすべての要素(他にも『AKIRA』とか『MOTHER 2』とか『エルフェンリート』とかいろいろ入ってるんだけど)をぶっこみながら、とんでもない完成度を誇る傑作『ストレンジャー・シングス』が映画ではなくテレビシリーズ(Netflix)として突然現れたりするのが、今の時代ならでは。そういえば、『死霊のはらわた』の30年後を描いた『死霊のはらわた リターンズ』(Hulu)の真摯な仕上がりにも不意をつかれた。リビングに豪華なテレビセットを持っているアラフォー以上の世代のニーズを直撃ということも含めて、今後「80年代リバイバル」の主戦場となるのは、映画ではなくテレビシリーズとなるかもしれない。

宇野維正

最終更新:8/9(火) 11:01

リアルサウンド

Yahoo!ニュースからのお知らせ