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落合GMのスカウティング・育成論――“減点法”で決めつけず、小さな可能性にも着目

ベースボールチャンネル 8/10(水) 6:50配信

実戦の中から特長を探る

 プロ野球を目指す若者たちは、走・攻・守の三拍子が揃った選手に憧れる。しかし、MLB通算3000安打が目前となったイチロー(マイアミ・マーリンズ)、2年連続トリプルスリーにひた走る山田哲人のように、三拍子揃った超一流選手はプロの世界でもごく僅かだ。現実には、走・攻・守のどれかひとつでも一流の領域に達することができるよう、鍛練を積み重ねている。

 現在、中日ドラゴンズのゼネラル・マネージャー(GM)として、アマチュア野球の視察を続ける落合博満に「どんなポイントでアマチュア選手を見ているのか」と問うと、こんな答えが返ってきた。

「仮に、160キロを超えるストレートを投げられたり、100m走で10秒を切るような選手がいたら、それだけでスカウトしてもいいと思う。プロとして大成するのに、素質が占める割合は小さくないから。けれど、現実的にそんな選手はなかなかいないわけで、実戦でのプレーを見て可能性を探っていくことになる」

 その際に大切なのは、何かひとつ特長を見つけることなのだという。

 プロの目でアマチュア選手を見れば、どうしても欠点ばかりが気になってしまう。だからこそ、「どんな打球が来ても慌てないショートだな」、「変化球にはからきし合わないが、ストレートを打ち返す力はなかなかだ」というように、細かな部分でも特長を探し、それを伸ばせばどれくらいの選手に成長できるのかイメージするのだ。

出会った指導者によって選手の運命は決まってしまう

 もちろん、プロの世界に入ってから、新たな特長が見つかることもある。

 中日に赤田龍一郎という選手がいる。愛知大から2010年の育成ドラフト2位で入団し、2013年のシーズン途中で支配下登録された捕手だ。同期入団の松井雅人らと切磋琢磨しながら飛躍を目指しているが、現在まで一軍で目立つ実績は残していない。それどころか、歳下の捕手が次々と入団してくるため、今季はファームでファーストもこなしながら奮闘中である。7年目ともなれば、強い危機感を抱いているのは間違いない。

 ファームを視察した時、そんな赤田を見た落合GMは、課題とされている打撃面が持ち味になるのではないかと感じたという。

「詳しくは言えないけど、ちょっとした修正で赤田のバッティングは見違えるようになった。あとは、実戦でどれだけ結果を残せるか。左の代打で使えるようになれば、可能性も広がるでしょう。そうやって、ひとつずつステップしていく。プロで生き残っていくためには、それしかないでしょう」

 投手としての才能を認められながら、なかなか芽が出ず、野手に転向した途端に球界を代表する存在まで上り詰めた糸井嘉男(オリックス)のように、プロ入り後に別の可能性を広げる選手もいる。だからこそ、スカウティングや育成は「バッティングはいいが、あの守備では使えない」や「このストレートの球速ではプロでは厳しい」といった“減点法”で決めつけてしまうのではなく、「あれだけの強肩を生かすことはできないか」、「シュート回転のストレートを武器にできれば」というような、小さな可能性にも着目するべきではないか。

 ただでさえ、成功するのが難しい世界である上、入団したチームや出会った指導者で選手の運命は変わってしまう。だからこそ、たったひとつの特長を見極めてやりたい。生まれながらのスターではなく、ファームで苦労して這い上がった落合GMらしいスカウティング・育成論だと感じた。


横尾弘一

ベースボールチャンネル編集部

最終更新:8/10(水) 6:50

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