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広告で人が泣くことってあるんですか? もり代表・原野守弘さんに聞いた広告の今昔

GQ JAPAN 8/10(水) 12:32配信

テレビCMを一本放映したら、翌日には全国の人がそのことを話題にしている──。そんな広告の黄金時代が過ぎ去った今、広告の楽しさはどこにあるのだろうか。異能のクリエイティブディレクター、原野守弘さんにお話を伺った。

【異能のクリエイティブディレクター、原野守弘さんの全画像はこちら】

僕たちは映画や音楽に触れて心を動かされることがある。同じように、広告を見て感動することもある。しかし、今ほど広告が邪魔者扱いされている時代もないだろう。メディア体験を阻害する要因として、しばしば槍玉に挙げられるほどだ。

株式会社もり代表の原野守弘さんは、「クリエイティブ出身ではないクリエイティブディレクター」である。ベンチャー経営や事業開発での経験を持ってクリエイティブ業界に挑んだ人物である。

そんな原野さんは今、「広告」をどう考えているのだろうか。これまでのキャリアを辿りながら、原野さんに広告の本質を伺った。

──さまざまな分野で活躍されていますが、常にクリエイティブでいるための秘訣はありますか?

広告の仕事は「お客さまありき」です。ですから「クリエイティブ」は、目的というよりも手段。「クリエイティブ」そのものにこだわるよりも、「目的」をはっきりさせることのほうが重要です。

「目的」を考えに考え抜くことが、結果的に「クリエイティブ」を生み出します。今までの表現手法ではなくて、新しいやり方がいいんじゃないか、などと考えやすくなるんです。僕はクリエイティブ出身ではなかったこともあり、そのことに気付きやすかったのかもしれません。

──もともとはどんな仕事をしていたのですか?

電通でインターネット・ビジネスの開発をしていました。最も使っていたアプリケーションは「Excel」(笑)。今でも「日本一Excel上手なクリエイティブディレクター」だと思っています。

クリエイティブ一本でキャリアを積んできた方は、クリエイティブの制作を「目的」と考えがちなのですが、僕の強みは、物事を俯瞰で見て、クリエイティブを「手段」として考えられることだと思います。

打ち合わせで経営者や担当者の方々からお話を伺ってみると、「これは広告では解決できないな」と思う時もある。そもそも商品のコンセプトがブレていたり、パッケージデザインが良くなかったり、流通戦略がうまくいきそうになかったりと。そんな視点から、広告以外のことも俯瞰して話し合っていくと、例えば「商品のデザインそのものから見直す」、というような大胆なアイディアでも、クライアントは耳を傾けてくれます。なぜなら、先方には「この商品を売りたい!」とか、「格好良くしたい!」という「目的」があり、そのためにベストな「手段」を探しているだけだからです。

──「目的」を確実に果たすために、クリエイティブを「手段」としてとらえる……そんなイメージでしょうか?

そうですね。ただ、その時に重要なのは「診断能力」です。

ほぼすべての企業やブランドは、病気といっていい。どこかに腫瘍ができていたり、老化が進んでいたり。そして多くの場合、企業はそれを自覚していません。

たいていの企業は自己診断して「ちょっと風邪だと思うんですけど」などと言ってくる(笑)。ところが、それは風邪どころではなく、もっと根本的な病いであることが多いんです。ですから、そのことを率直に申し上げることが、たぶん一番大切なことになります。

僕には企業経営の経験があるんです。電通時代に「ドットコムバブル」が起きて、ついつい金に目がくらみ、ネットベンチャーに転職しました(笑)。そこで役員になり、IPOも実現させたんです。ですから、会社経営の仕組みやIR(投資家向け広報)の重要性などを社会人のアーリーステージで学べたんです。

クリエイティブ畑しか知らなければ、テレビCMをどう制作するかとか、ポスターのビジュアルをこう工夫しようなどということを追求するんでしょうけれど、僕はそういうバックグラウンドがあったので、最初から既存のクリエイティブの枠組みをそれほど意識しないでやってきました。

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最終更新:8/10(水) 13:11

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