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護衛艦「いずも」が中国の魚雷一発で沈む日

JBpress 8/10(水) 6:10配信

 タイトルを見てギョッとした向きもあるだろう。しかし、海上自衛隊の艦艇のダメージコントロール(ダメコン)は、かつての帝国海軍の伝統を引き継ぎ、いまだに脆弱な面がある。これは否定しようのない事実なのだ。

 第2次世界大戦中の日本海軍のダメコンは、設計から被害後の対応まで米軍とは比較にならないほど低レベルだったと言ってよい。装甲空母「大鳳」は結果的に魚雷1発で、巨大空母「信濃」は魚雷4発で空しく海底に消えていった。ミッドウェーでは、4隻の空母が炎上し消えていった。他方、米海軍の艦艇は実にしぶとく、昭和天皇が「『サラトガ』が沈んだのは今度で確か4回目だったと思うが」と軍部の報告に皮肉ったように、日本軍の激しい攻撃を耐え抜き、即座に戦列復帰した例が多い。

 日米の戦力は戦争序盤では拮抗していたが、ダメコンの格差が戦力の天秤を米国に傾け、中盤以降はただでさえ少ない日本側の戦力をさらに減少させることになった。こうした背景には、日本側は過去のダメコンの教訓が設計に十分に反映されていなかったこと、米空母に比べて日本の空母は人員が足りなかったことなどが挙げられる。

■ 消火システムの自動化が進んでいない海自艦艇

 実は、これらの点は現在も改められていないのが実状である。

 例えば、米海軍等に比べると海自艦艇には「艦内」スプリンクラーが非常に少ない。もちろん、艦外やヘリ搭載艦の格納庫等にはスプリンクラーを設置しているし、ハロンガスの散布システムを発電機室やポンプ室の一部を備えている。しかし、米海軍他のように艦内の隅々までスプリンクラーのような自動消火システムを導入することはできていない。基本は人力による消火が中心である。

 また、昭和52年度以前に計画された護衛艦には火災警報装置が搭載されていない(現在該当するのは「くらま」「わかさ」のみだが)。実際、護衛艦「しらね」は火の不始末でCIC(戦闘指揮所)が全焼し、100億円以上の打撃を国家財政に与えた。しかも、昭和52年度以降に計画された護衛艦も火災警報装置は「火災の発生する可能性が高い区域や航海中常時配員がない区画」に限定されており、それ以外の区画は人間が発見し、報告する形式になっていると言われている。このように海自は米海軍よりも相対的に人手重視の消火体制である。

■ 人手が頼りなのに、人員が足りない! 

 ところが、海上自衛隊はその人間が足りない。

 まず、充足率そのものが足りていない。海上自衛隊全体では充足率は92.8%だが、これは海上幕僚監部、一部の海外派遣部隊、音楽隊、情報部隊等のような充足率が100%に近い部隊も含めた平均である。実戦部隊たる水上艦艇は、より少なくなる。

 しかも、近年は海外任務が増えたこともあり、艦隊勤務を志望する隊員が減っている。実際、あるDDH(ヘリコプター搭載護衛艦)では20人弱の新人が配属されたが、ほとんどが艦を降りてしまったという。士官は部内の講演で「最近の若者は根性がない」と語ったそうだが、根性で片付けられる問題ではなかろう。

 こうした事情により、筆者の推測だが実際には7割程度の人員で水上艦艇は稼働していると見られる。その結果、幹部は寝られないという状況に陥っている。ひどい艦艇では平均2時間睡眠だといわれている。

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最終更新:8/10(水) 15:15

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