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もはや中国名物、空虚な高層マンション「鬼城」

JBpress 8/10(水) 6:15配信

 中国河南省の都市、洛陽を訪ねるチャンスがあった。洛陽は唐の時代に都になったこともあり、その名は「洛陽の紙価を高らしむ」などのことわざになって残っている。ただ、今は昔日の面影はなく、中国に数多くある地方都市の1つに過ぎない。

閑散とした工場街、郊外の鬼城(写真)

■ 閑散とした工業街

 洛陽の主要な産業は工業。ガラスや農業用トラクターの生産において中国を代表する企業がそろっている。その多くは国営企業だ。

 下の写真(1)を見てほしい。これは工場が集積する地域の道路を撮ったものであるが、街路樹がきれいに整備されているものの人影はまばらであり、時たま自動 車が通る程度であった。工場街であるからそれほど多くの人がいなくとも不思議でないが、それにしても閑散としていた。空地も多かった。これは新たに進出し てくる工場がなくなったためだと言う。

  (*配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の写真をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47568)

 いくつかの工場の広報担当者から話を聞いたが、どの工場も過剰生産問題に悩んでおり、生産を抑制していた。そのような状態で、工業が主な産業である洛陽に有力な就職先はない。若者は学校を卒業すると北京、上海、広州、深圳など沿岸部の都市に行ってしまう。市街地の人口は約140万人だが、近年、農村部からの人口の流入も止まり、その人口は減少傾向にある。

■ 誰が住むのか、もはや中国名物の「鬼城」

 写真(2)は、もはや中国名物と言ってもよい「鬼城」(住む人のいないマンション街)。これは新市街を撮ったものだが、既にできあがったマンションに住む人はいない。最初に建ったマンションは、完成から3年が経過するがまだ誰も住んでいない。

 中国ではマンションを投資用に買う人も多いから、人が住んでいない物件のすべてが売れ残りとは断言できないが、それでも建ててから3年を経てもこのような状態にあるのなら、デベロッパーは資金繰りに窮しているのだろう。写真(2)中央の作りかけのマンションの工事はストップしていた。

■ 奇跡の成長から取り残された庶民

 一方で、冒頭の写真は中心街の一画の古びたビルを収めたもの。新しくきれいであった工場地区やマンションとは好対照である。民間が所有する物件の更新は遅れている。これは中国の都市開発が官主導型によって行われたことを示している。

 さらに写真(3)は旧市街の道路の様子。この道は夕方になると歩行者天国になり、出店が立ち並ぶことで有名だ。写真は夜の営業準備のために行き交う車輪の付いた出店を撮影したものだが、その背後の建物が老朽化していることが分かろう。庶民の商店や家はいまだに汚い。

 出店の看板には1元(約16円)で8串などと書かれた文字が躍っている。庶民の食べ物は安い。もっともそこで働く人の月給は2000元(3万2000円)程度とされるから、生活は決して楽ではない。夜店に集う人々の多くは、奇跡の成長から取り残されてしまった。

■ 事態の悪化を食い止められない理由

 地方政府が好んで投資したのは工業団地と新市街のマンション。「箱もの」好きは日本の官僚の専売特許ではない。どの国の官僚も産業振興というと真っ先に「箱もの」を思い浮かべる。中国の官僚は日本の官僚以上に「箱もの」好きである。

 工業生産額が急激に増加した時代に中国経済は奇跡の成長を遂げた。そして、その原動力は拙著『データで読み解く中国経済』に書いたように、地方政府が農民から農地をただ同然で取り上げて、市場価格でデベロッパーに転売することによって得た利益である。

 その資金を利用して工業団地を整備し、工場を建設した。それが地方経済を発展させた。このような成長モデルがあまりにうまくいったために、現在になっても地方政府はその成功体験を忘れることができない。

 それが過剰生産設備を作り出してしまった。日本の鉄鋼生産量が1億トンであるのに、中国の鉄鋼産業の生産能力は10億トン。中国の国内需要は6億トン程度だから、国内生産だけを考えれば4億トンもの過剰生産設備があることになる。

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最終更新:8/10(水) 8:20

JBpress

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