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ヘモグロビンA1cについて教えてください

月刊糖尿病ライフ さかえ 8/11(木) 11:00配信

ヘモグロビンA1cって? もう少し詳しく知りたいです。 (1型糖尿病、40歳、女性)

【回答】
ヘモグロビンA1cは日ごろの血糖値の状態を反映してくれる重要な検査項目です。

その半面、「あれ? 病院に来る少し前にあんなに生活に気を付けたのに、ぜんぜん下がってない!」と思われたことはありませんか?

今回は、そんなヘモグロビンA1cの「どうして?」を解説します。


■ そもそもヘモグロビンA1cとは?

 ヘモグロビンA1c(Hb A1c)は過去1~2カ月の血糖値の平均を反映します。
皆さんの血管の中を流れている赤血球。その赤血球の中に含まれているのがヘモグロビンです。このヘモグロビンというたんぱく質にブドウ糖が結合したものが、ヘモグロビンA1cです。血糖値が高ければ高いほど、ヘモグロビンと一緒に存在するブドウ糖が多いため結合する可能性が高くなります。そのため血糖値が高いとヘモグロビンA1cの値も高くなるのです。

 では、なぜ過去1~2カ月の血糖値の平均を反映するのでしょうか。ヘモグロビンを含む赤血球の寿命は約120日(4カ月)といわれています。赤血球は毎日新しいものが作られ、脾臓(ひぞう)で古いものが壊されています。そのためブドウ糖が結合したヘモグロビンA1cも入れ替わるため赤血球の寿命の半分に当たる1~2カ月の平均の血糖値を表すといわれています(図)。

 このようなことから、ブドウ糖とヘモグロビンは長い時間をかけて結合するため、直近の生活改善を反映しづらいことがあるのです。その半面、直前の食事等による血糖変動の影響を受けず、いつでも検査ができるため健康診断等で広く使用されています。


■ ヘモグロビンA1cの値に影響を与えるもの

ヘモグロビンA1cは血糖値にだけ影響を受けるのかというと、そうではありません。次のような要因もヘモグロビンA1cの値に影響を与えるといわれています。

(1)貧血
 貧血ではさまざまな理由により赤血球の寿命が変動します。赤血球の寿命が短くなれば、その分ブドウ糖と接する時間が短くなるため、ヘモグロビンA1cは低めに出るようになります。逆に赤血球の寿命が長くなる場合は、高めに出ることもあります。また、肝硬変やアルコール肝などでも、赤血球を壊すはたらきが強くなったり、赤血球が壊れやすくなることで貧血になることもあります。

(2)腎疾患
 腎臓は尿を作る仕事以外にもさまざまな機能を持っており、その一つに赤血球を作るための指示を出すというものがあります。糖尿病腎症により腎臓の機能が低下すると赤血球を作るための指示が出せなくなり、貧血になります(腎性貧血)。このような場合にもヘモグロビンA1cは過去1~2カ月の血糖値を反映できなくなってしまいます。

(3)妊娠時
 妊娠中は体重の変化や体内の水分量の変化が大きい時期です。また、妊娠の進行と共に、鉄欠乏性貧血になることがあります。このような場合に赤血球寿命が延長して、実際の血糖コントロール状態よりヘモグロビンA1c値が高めになることがあります。

(4)変異ヘモグロビン
 まれに遺伝的な要因で、少し構造の変化したヘモグロビンを持っている方がいます。この構造変化の種類によっては、通常のヘモグロビンと比較してブドウ糖と結合しやすい性質や、逆に結合しにくい性質を持っていたりすることがあります。

 また、赤血球の寿命が変化してしまっていることもあります。そのため過去1~2カ月の血糖値を反映できない場合があります。これらの条件に当てはまる方は、主治医に相談し、ヘモグロビンA1c以外の検査項目を使用することも検討する必要があります。


■ ヘモグロビンA1cと血糖コントロール目標

 ヘモグロビンA1cは、日本において1986年に診療報酬が新設されてから、約30年もの長い間使われ続けている血糖コントロール指標です。さらに2013年にはヘモグロビンA1cの国際標準化に伴い、表記がNGSP値に完全に統一されました。これにより日本国内で測定しても海外で測定しても同じヘモグロビンA1c値が得られることとなりました。

 ヘモグロビンA1cは、DCCTをはじめとする過去からの多くの臨床研究によって、その測定値が高いと糖尿病網膜症や神経障害、糖尿病腎症に代表される合併症になるリスクが高いということが明らかになっています。そのため、糖尿病の診断および血糖コントロールの目標値としてヘモグロビンA1c値が使用されています。

 現在の血糖コントロール目標は2013年に「熊本宣言2013」として発表されたものです。最近の研究では一概に全ての方に対して厳格な血糖コントロールをすることが良いとはいえないという結果も得られています。そのため「熊本宣言2013」では、患者さんの状況によって血糖コントロール目標値を設定することができるようになりました。

 さらに2016年5月には高齢者糖尿病の治療向上を目的に設置された、日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会より「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」が新たに発表されました。これにより個別化医療に重点が置かれています。

 ヘモグロビンA1cという検査項目一つをとっても、一人ひとりの患者さんにあった目標値を設定できるようになるなど、より個人にあった治療の選択が可能になってきています。これからも受診されている医療機関の先生方とよく相談されて、積極的に治療に取り組んでいただきたいと思います。

アークレイマーケティング株式会社
営業渉外部
残松直樹(のこしまつ・なおき)

※「月刊糖尿病ライフさかえ 2016年7月号」より

最終更新:8/11(木) 11:00

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